3rdアルバム『『2012』』
シングル曲を7曲も収録
「指輪物語」が収録されている『『2012』』は、タイトルがそのまま指しているように2012年にリリースされた3rdアルバムです。
この作品には7曲ものシングル曲が収録されています。全16曲ですから、半分近くをシングル曲が占めるということになりますね。
これは、2011年の9月から5か月連続シングルリリースという怒涛のリリースラッシュがあったから。
その5作品すべてがオリコン週間シングルチャート5位以上を獲得していますから、安定した人気を改めて実感させられますね。
この時リリースしたシングル表題曲5曲と、yasuが声帯のう胞を患って一時活動休止した時の気持ちを描いた9thシングル「Re:birth」と東日本大震災の影響でリリースが遅れた10thシングル「少女の祈りIII」。
これらのシングル曲を収録した豪華な内容のこのアルバムは、オリコン週間アルバムチャート1位を獲得という結果に。
これはAcid Black Cherryとして初なだけではなく、yasuの所属するバンド(現在は活動休止中)Janne Da Arcでの活動と合わせても初となる快挙を成し遂げました。
yasuのCDへの想い
時代とともに変化する音楽のあり方
yasuは”CD”という形態にとてもこだわり、思い入れがあるようです。
今となっては音楽はデジタルが主体になりました。
かつてのレコードやCDのようにジャケットのアートワークを眺めたり、ライナーノーツを読んだり、クレジットを見てどんな人たちがこの音を作ったのか想像することはなくなったといってもいいでしょう。
アルバム単位で音楽を聴くこと、購入することも少なくなり、気に入ったものを曲単位で購入するパターンがほとんどだといいます。
そういう最近の音楽の視聴スタイルを嘆くアーティストの声もよく聞かれますね。
なぜなら、アーティストはアルバムの構成も練りに練って、曲の流れや全体を通して聴いたときの完成度までを考慮しているからです。
そしてその世界観に合ったジャケットのアートワークを決めていたりと、それら全体を見て感じて欲しいものがある、ということ。
そうした要素が全てが揃って初めて、完成した作品になるのです。
現在の音楽の置かれている状況から考えると時代に逆行するかのようですが、アーティストの想いは切実なものでしょう。
そこでyasuはそういった状況を嘆くだけではなく、どうしたらCDを手に取ってもらえるか、アルバムとして通して聴いてもらえるか。
それを考えて行きついた形が、Acid Black Cherryでは定番となったコンセプト・アルバムというスタイルでした。
2012世界終末説、そして世界終末時計から着想を得たコンセプト・アルバム
マヤ歴が2012年の12月22日で途切れていることから生まれた”2012年世界終末説”をご存じでしょうか。
マヤ歴由来のその終末説と、2012年に世界終末時計があと5分になった、というところから着想を得て制作されたのが、今回ご紹介する「指輪物語」が収録されたコンセプト・アルバム『『2012』』です。
CDにはストーリーブックが付属し、そのストーリーの世界観とCDがリンクするようになっています。
終わりゆく世界とその住民達の物語として描かれる『『2012』』。
このアルバムの中には、近づいた終末を希望に変えるべく、祈りが込められているそうです。
「指輪物語」
歌詞を解釈!
では、この『『2012』』の7曲目に収録された「指輪物語」の歌詞をご紹介します。
この曲はメロディを前面に押し出した、激しさは少し抑え気味の曲です。
歌詞のイメージとよく合った音作りはさすがyasu、独特の雰囲気のある曲となっています。
今夜も一人遊び… 濡らした指輪 瞳は紅
おかえりなさい貴方 いつも通りのキス
いつもより渇いたクチビル
無防備な薬指‥‥隠れて愛を飼うなら ちゃんとして
つけ忘れた指輪が ポケットで泣いてるわ
『ねぇ早く気がついて 私はここ』って…
抱き締めてよもっと ねぇいつもみたいに
眠れないと決まって 私を求めたじゃない
世界に一つだけ 私は貴方だけの眠り薬
今日も夢 魅せてあげる
切ない指輪物語を…
出典: 指輪物語/作詞:林保徳 作曲:林保徳
yasuが得意とする、女性目線の歌詞のようです。
返ってきた彼を迎えた彼女が目にしたものは、結婚指輪の外された薬指。
何とも詰めが甘いと思いますが、男性というのはそういうものなのでしょうか。
結婚指輪を外してすることといったら、答えはたった一つ。
それに気付かないふりをする彼女をいいことに、バレてはいないと安心しきっているのでしょう。
浮気をするのならば、最低限、気付かれないようにうまくすること。
それがいいというわけではありませんが、せめてもの彼女を傷つけないための気遣いというものではないでしょうか。
そういう気遣いもなしに、何を根拠にか気付いていないと思い込んでいる彼。
もはや彼女のことなど、目に入っていないのかもしれません。
毎日当たり前のようにいてくれるから、それが当然のようになって。
彼女は必死で声を上げます。ここにいる、気付いてほしいと。
彼女の心の中だけで。
騙されてあげる
キライな嘘一つ…だけどキレイに騙されてあげるわ
背中をなぞる指 微かに震えて
急に涙と共に溢れ出した
抱き締めてよもっと あの娘にしたみたいに
ねぇもっと奥まで 私を見つけるまで
忘れられたあの指輪みたいに
“…私 泣きたかったんだ…”
涙止まらないよ
早く本当の愛に気づいてよ
出典: 指輪物語/作詞:林保徳 作曲:林保徳
彼が嘘をついていることは明白です。しかも全く隠しきれていない嘘を。
彼女は全てお見通しの上で、何も知らないかのように騙されたふりをしてあげます。
それでも、傷ついた気持ちまでなかったことにすることはできません。
彼の前では泣くこともできずに。
彼のポケットに入れられて忘れられたままの結婚指輪に、自分を重ねて。
今日も一人きりで、涙を流します。