「六兆年と一夜物語」3つの謎

「もう子どもではない」の真意

君がもう子どもじゃないことも

出典: 六兆年と一夜物語/作詞:kemu 作曲:kemu

子どもではない、という主旨の歌詞の意味を考えてみましょう。

この真意は2つ考えられます。

まず1つ目が、「君」と少年の成長速度が違うことです。

暴力を生まれつき受けていた少年は、それでもずっと生きています。

この少年は、もしかすると永遠の命を持つのかもしれません。

そのため、「君」と出会った時は生まれてから何十年も経っていた可能性があります。

しかし見た目は幼いまま。

だからこそ鬼の子どもとして扱われたのかもしれません。

2つ目は、「君」が暗喩的な意味で「大人になった」ということ。

つまり、大人の経験をしている、ということです。

宗教的儀式においてそういう行為を行う文化は多くあります。

この「君」もそのような対象であったと考えられます。

そのため集落の人間と肉体関係を持たされていた可能性もあるのです。

夕焼けの正体

夕焼けの中に吸い込まれて消えてった

出典: 六兆年と一夜物語/作詞:kemu 作曲:kemu

この曲の歌詞には夕焼け、という言葉が多用されます。

夕焼けといえば童謡の「夕焼け小焼け」。

手を繋ぐ、という歌詞も入っている曲です。

もちろんこの童謡を下敷きにしているでしょう。

しかしそれだけでなく、「夕焼け」には「あの世」の意味もあります。

夕焼けは西の方角にあるものです。

様々な文化で西というのはあの世のある方角だと信じられていました。

また、夕暮れを「逢魔時」と呼ぶ風習もあります。

夕暮れ時はあの世とこの世の境界が曖昧になると考えられていたためです。

そのため、夕焼けという表現をすることで、あの世とこの世の境目を表現しているのです。

「6」に込められた意図

この曲の題名は「六兆年と一夜物語」です。

千と一夜物語をもじった題名なのは分かりますよね。

どうして六兆年なのでしょうか。

まず、「6」という数字には様々な意味があります。

そもそもこの動画に出てくる男の子の名前は「リク」といいます。

リクとは陸とも書けますし、漢字の「陸」は「六」を意味することもあります。

さらにこのリクくんは、指は6本ある少し変わった手です。

「6」は欧米圏であれば悪魔の数字ともいわれています。

これが「忌み子」として扱われていた理由でもあるでしょう。

さらに、六兆年は他の曲にも出てきます。

前述の「人生リセットボタン」にも次のような歌詞があります。

6兆5千3百12万 4千7百10年の
果て果てに飛び込んだんだ 午前5時始発の終着点

出典: 人生リセットボタン/作詞:kemu 作曲:kemu

このように、六兆年という長い時間がkemuのワールドなのです。

「6」という数字には不吉さと時空、二つの意味が込められているのでしょう。

最後に

「六兆年と一夜物語」はハッピーエンド?

六兆年と一夜物語を解説してきました。

「君」に連れられて初めて外の世界を見た少年。

その少年の願いで、世界は「君」と少年だけになります。

この願いの叶えられ方はkemuの曲に特徴的です。

願ったことが少しねじ曲げられて叶えられてしまうといえるでしょう。

「君」と少年は実際二人ぼっちになってしまったといえます。

一見ハッピーエンドでありながら、どこか不穏な空気が漂うのです。

同じ世界観の作品

kemuの世界観を共有する作品は多くあります。

まず一つ目が、「透明人間になりたい」と願った人の曲です。

GUMIと鏡音リンによるデュエットソング「インビジブル」は透明人間になってしまった主人公を描いた楽曲です。疾走感あふれる歌詞に込められた意味を紐解いていきましょう。