高橋優の最新シングル「ロードムービー」の歌詞を紐解く

終着点にたどり着くことよりも価値のある出会いや別れ。惜しむ別れがあっても、きっとまた出会えます。

それはもしかしたら別れたその人ではないかもしれません。けれど、きっとかけがえのない出会いがまた待っています。

涙するほど悲しいことが起きても、悲しい別れがあっても、未来に向かって生きていくだけです。けれどそれを経験したあとは、経験する前よりもほんの少し、成長した自分がいるかもしれません。

たとえ『君』と『僕』との距離がどんなに離れていようと、どんなことが起きようと、繋がっています。

心が、いま歩いているこの道が、きっと繋がっています。

つらいときには、いつか『君』と笑い合えるときを楽しみに、一人じゃないと実感できる瞬間を夢見て歩いていきます。

この先に何が待ち受けているのかなんてわかりません。

けれど、悲しいことやつらいこと以外にも、楽しいことや嬉しいことも待っています。

そんな未来に期待しながら、旅とも言えるこの人生を楽しみながら生きていくのです。

『もう一人きりじゃない』と言い切れるくらいには、いつか出会えるはずの『君』以外にも、きっとたくさんの素敵な出会いを繰り返したのではないでしょうか。

それこそ別れるときには泣いてしまうような関係性だったはずです。

歌詞の序盤の『僕』は、つらいことも楽しいこともいつか出会える『君』と共有することばかり願っていたような印象でしたが、

色んな経験をする内に、色んな出会いと別れを繰り返す内に、今は今できちんと生きて『君』と出会ったときにまた別の楽しみ方をしようという考え方に変化したように見受けられました。

いつか出会う「自分をわかってくれる誰か」ありきで生きていたのに、それはそれとして自分自身の今と近い未来を受け止められるようになった、そんな風に思えます。

来るかどうかわからない「未来」にすがることは、別段わるいことでもないでしょう。

打ちのめされているときには色んなことがつらいはずです。

でもそんな中でも、いつかこんな未来が来てくれるはずと少しでも未来に夢見ることができるなら。

それを気持ちの支えに生きて、少しずつ気持ちが前向きに変化して、「未来」とそして「現在」を見据えることができるようになるのであれば、否定しようもありません。

自分自身のことをわかって、受け止めて、そして作用し合える人が現れる、なんていうのは、都合の良い妄想なのかもしれません。

けれどきっと、そうして夢を見ることも、特に疲弊してしまっている人にとっては大切なことなのではないでしょうか。

そういう人は視野が狭くなりがちで、自分は孤独だと思い込んでしまうことだってあるかもしれません。

そんなときに、一人じゃないんだと信じられるのだとしたら、それほど心強いこともないでしょう。

いま近くにそんな人が見当たらなくても、まだ出会っていないだけで同じ空の下に同じように生きている。

そう信じて、この歌のようにいま一歩、踏み出してみるのもいいのではないでしょうか。

上にも書きましたが、ロードムービーとは、旅の途中で起こる様々な出来事を描いた映画のことです。

目的地にたどり着かないままストーリーが終幕していることが多いのですが、この歌も、歌詞の中で目的地には到達していません。

まだまだ道はこれからも続いていくという表現で終えられています。

これまで沢山の苦難や、出会いと別れを繰り返してきた『僕』の歩く道は、まだ終わりにはほど遠いのです。その道は『君』と出会うまで、そして更にその先、人生に幕を閉じるまで続いていくはずです。