いよいよクライマックスの歌詞です。

リフレインになっていることに気付かされるでしょう。

大事な箇所ですし、まだまだ汲み尽くせない言葉たちです。

何よりも中島みゆきという人の観察眼の正しさというものに舌を巻きます。

泣いて取り乱しているあたしなのに運転手の気遣いというものに気付ける力が素晴らしい。

そこに苦労しながら生きている人生の先輩への敬意を表します。

近年では「鷹の目」という楽曲もこうした大先輩への尊敬の心をもとにしているのです。

長年に渡って苦労を積んでいる人というのは忘れがたい印象を与えるでしょう。

ただ、そこに凄みというものを見つけられるあたしの、もしくは中島みゆきの観察眼も尊敬に値します

この曲の運転手の気遣いというものが弱っている人にとってどれほどに稀少なものかと歌うのです。

運転手は直截に優しさを表現したりはしません。

むしろ遠回りとも思われるような周到な迂回をしながらあたしの心を癒やしました。

傷付いている人に接するときに優しい言葉をかけるのは大事なことです。

しかし「何あったの」などと訊くことでその気持ちを示すのは下手な人のすることかもしれません。

まず温かいスープを振る舞うような仕種で、泣いている人の関心を悲しみに埋没させないことが大事です。

他愛もない話しですが毒にはならない話題というものをチョイスする気遣いが嬉しいでしょう。

苦労したこの運転手というのは自分も泣いたことがあるからこそ、どんな話しをするべきか知っていました。

それが天気予報やプロ野球の話題です。

天気予報が当たらないという話題はあたしの傷口をガーゼでふさぎます

傷口にアルコール消毒液を吹きかけるほどの的確さはこの場合は逆効果です。

運転手は自分が泣いた経験からこの手当の仕方を導き出しました。

この底抜けの優しさというもの歌詞の中で触れただけでも震える心を持っていたいです。

傷付いている人が何を欲しているのかを知っている、古傷を持った人物の奥深さ。

中島みゆきはあたしの悲しみよりもこの人物の描写こそを歌詞の基軸にしたかったのです。

その結果、彼女はこの曲のためにシンプルな「タクシードライバー」というタイトルにしました。

時代を超えて愛されているのは、あたしの失恋への同情心ではありません。

このタクシー運転手の底知れない優しさというものが時代を超えて人びとの心を掴むのです。

いまの音楽界で神曲という呼び方は随分と気軽なものになりました。

それでもこの「タクシードライバー」にある高さというものに触れると神々しさを感じます。

中島みゆきというアーティスト自身の底が知れない才能というものの煌めきに触れた思いがするのです。

学べることがあまりにも多い楽曲と状況が目に浮かぶ描写力に目が啓かされます。

素晴らしい楽曲をご紹介できて幸せです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEと中島みゆきの軌跡

中島みゆき【タクシードライバー】歌詞の意味を解釈!タクシーに乗せた想いとは?車内での会話の真意に迫るの画像

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従来の解釈をブラッシュアップして中島みゆきの真意に迫りましょう

人間の歴史というものの必然までも語り尽くしました。

渾身の解説記事です。

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中島みゆきが1978年に発表した楽曲「世情」は彼女の活動履歴の中でも屈指の名曲とされます。一方でその意味を解釈することが難しい歌詞であることでも有名です。あまりにも深く難解な歌詞ですが中島みゆきがこの曲に込めた真意に迫りましょう。

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