スネアドラムを聴けばわかるように、この曲は行進曲のリズムになっています。
行進曲のリズムとは、大勢が揃って行進するために規律あるリズムになっています。
また、若干前のめりのテンポが特徴的です。
エルガーの『威風堂々』、メンデルスゾーンの『結婚行進曲』。
クラシックには行進曲(マーチ)の傑作が数多くあります。
上に挙げた深作欣二監督の名画『蒲田行進曲』のテーマ曲も行進曲です。
この曲は、行進曲をベースに現代のダンスミュージックを取り入れたような、独特なリズムですね。
曲調も明るく、歌詞を知らなければ浮かれた気持ちになってしまいそうです。
陽気なリズムに乗る歌詞はテンポが速く、まるで呪文でも聴いているかのような錯覚に陥りそうです。
『首なし閑古鳥』歌詞紹介&解説
Aメロ
さあさあさあ 踊りましょうか
とり急いでは 脚が絡んだ
騒々しい音を晒して
赤い瑪瑙と積み木の家
出典: 首なし閑古鳥/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「とり急いでは」という表現は、日常的にあまり使われません。
「取り急ぎ連絡します」などという、メール文によく使われる程度でしょうか?
「急ぎ過ぎて」と表現するより奥ゆかしさが出ているような気がします。
瑪瑙(めのう)とはさまざまな種類の石からなる混合物です。
ネックレスやブレスレッドによく使われる石の仲間ですね。
ここでは「人」の足が絡んださまを「鳥」のそれになぞらえて表現されています。
最後の「積み木の家」というのも、、おそらく主人公が住んでいる「家」のこと。
歌詞中ではいわば「鳥かご」です。
Aメロ(2回目)
欄干の傍に立つ虚
青い光が抜けていくようだ
誰だって心が重い
忘れられないことばかり
出典: 首なし閑古鳥/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
2回目のAメロです。
ここでは普段見慣れない言葉が多数使われていますね。
欄干(らんかん)とは、階段、橋、縁側などの縁(ふち)に木を渡し、人が落ちるのを防ぐものです。
虚(こ・きょ)とは、何もないこと、あるいは油断すること。人の弱点につけこむことです。
ここでは最初の意味で使われていると思います。
太陽の光が欄干に傍らに立ち現われ、瞬間に過ぎ去っていく。
かなり幻想的な光景です。
白昼夢を見ているかのようですね。
曲調とは裏腹に「心が重い」とぼやく主人公。
人知れず大きな葛藤を抱えているのでしょうか?
Bメロ
やい、やい、お前の頭はどこだい?
頭はどこだい?目玉とくちばしは?
やい、やい、お前の感情はどこだい
泣いて見せてみろ 笑ってみせてみろよ
出典: 首なし閑古鳥/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
ここでいう「お前」とは、いうまでもなく主人公自身のこと。
主人公は自問自答を繰り返しているんですね。
まるで自分が「首なし鳥」になったように、表情もなく、言葉もない状態。
「鳥は鳥でも、これじゃ閑古鳥が鳴いているような状態だな...」と感慨深げにこうべを垂れます。
主人公がなぜ落ち込んでいるのかは明らかになっていません。
失恋?
別離?
将来への不安?
どれもありそうなことです...。
サビ
愛されたいのは 悲しくなるから
見つめていたくはないけれど
あなたによく似た 言葉探しては
灯りを焚いて話がしたい
出典: 首なし閑古鳥/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
ここではじめて「あなた」が登場します。
その前に「愛されたい」とありますから、きっと「あなた」は主人公の大事な人なんでしょう。
恋人なのかな?と思いましたが、文脈を考えるとそうも言いきれないところです。
主人公は「愛」が欲しい。
でも「悲しくなる」。
矛盾しています。
主人公と「あなた」との距離感は分かりません。
まだ知り合ったばかりでお互い手探りの状態なのかもしれませんね。
手探りの状態でも「あなた」を形容する言葉を集めて、「あなた」に近づきたい主人公。
これからどうなっていくんでしょうか?