知らないことを素直に知らないと言えなくなる。
これもまた、大人に近づいた証拠といえるのでしょう。
子供を大人に変えるのは、それぞれが抱える葛藤なのかもしれません。
当たり前のことさえ分からないまま
「あれはどうなってるの?」
「これは何でこうなの?」
普通のことも知らないまんまでいる僕は
出典: 波のある生活/作詞:不明 作曲:不明
ここの歌詞は『徒然草』の第243段の内容をより強く感じられる部分です。
父親に仏とは何か尋ねた幼い息子のように、主人公も本当は知りたいことや聞きたいことがたくさんあるのでしょう。
しかし、主人公はもう幼いとは呼べない年齢。
子供のようにすぐ「どうして?」と質問するのは、少しばかり恥ずかしいようです。
そうして皆が知っている当たり前のことさえ知らないまま大人に近づいている。
主人公の世界は、子供の時よりも複雑なものに変わってしまったようですね。
無邪気なままではいられない
うるさい、うるさい
誰かの声がする
ななめ、後ろ
どこからか声がする
それを気にしたり、
気にしなかったりしたなら
大人が困るようなこと
今日は言わないでおこう
出典: 波のある生活/作詞:不明 作曲:不明
主人公が「うるさい」と感じているのは、きっと自分の心の声なのでしょう。
まだ子供でいたい。早く大人になりたい。
聞きたいことがある。こんなことを今更聞いたら恥ずかしい。
そんな相反する気持ちや、芽生えては消える欲求と葛藤。
そういったものが声となって届き、主人公を思い悩ませています。
『徒然草』の第243段の中で、幼い息子は質問を繰り返して父親を困らせていました。
大人の1歩手前にいる主人公はもう、そんな風に無邪気に質問を重ねることはしません。
子供の頃にあった純粋さや無邪気さを、羞恥や理性が追い越していく。
これが大人になるということなのかもしれませんね。
自分らしさとは?
子供の疑問にきちんと向き合える大人になるためには、まず自分が抱える悩みと向き合わなければなりません。
そしてそれはきっと、ありのままの自分を探すということに繋がるのでしょう。
『徒然草』のテーマともいえる「自分らしさ」。
それは自分との対話の中で生まれるのだということを、この曲は伝えているのでしょうね。
避けては通れない苦悩
「君はどうなってるの?」
「僕は何でこうなの?」
普通のこともできないまんまでいる僕が言いたいのは
出典: 波のある生活/作詞:不明 作曲:不明
主人公が知りたいのは、自分のこと。そして、自分以外のこと。
自分の無知さを知って打ちひしがれたり、誰かと比べて自分は何もできない人間だと思い込んだり...。
そんな風に「世の中と自分」「誰かと自分」といった考え方は、時に胸を苦しくさせます。
しかしそれは、大人になるために避けては通れない苦悩なのでしょうね。
大人になるということ
消えない、消えない
誰かの声がする
ななめ、後ろ
どこからか声がする
それをわかったふり、
わからないふりしたなら
どうでもよくなってみよう、いまさら
出典: 波のある生活/作詞:不明 作曲:不明
知ったかぶりをしたり、本当は知っているのにあえて知らない振りをしたり。
大人は時と場合に合わせて本音を隠すものです。
それでいいじゃないか。
主人公はようやく少しだけ、大人になるための準備が整ってきたのでしょう。
子供の純粋さや無邪気さだけが美徳ではない。
そんな風に考えられるようになったのかもしれませんね。
心の声との向き合い方
うるさい、うるさい!
自分の声がする
背骨の中
なぜだか笑えてくる
それが聞こえたふり、聞こえないふりして
嘘にならないようなこと
ちょっと言ってみたいんだよ
出典: 波のある生活/作詞:不明 作曲:不明