子供の好奇心は宝物
随所『徒然草』を再解釈して書かれた、ネクライトーキーの『波のある生活』。
これは「サントリー天然水 GREEN TEA」の「徒然なるトリビュート」という企画の参加楽曲になっています。
総勢5組のアーティストが参加したこの企画で、ネクライトーキーが再解釈したのは『徒然草』の中の第243段です。
こちらは幼い息子が父親に「仏とはどういうものか?」という答えのない質問を重ねて父親を困らせるという内容。
それをネクライトーキーは以下のように再解釈しました。
子供の頃に、素直な疑問を持つことは素晴らしいことだし、大人になっても、それに対して適当にあしらっていてもあまり良くないよ
出典: https://www.suntory.co.jp/water/tennensui/greentea/tsuredure/index.html
子供の頃の純粋さを大人になった今でも変わらずに持ち続けている彼らだからこそ、できた解釈といえるでしょう。
大人が当たり前のこととして受け入れているものに、子供は度々疑問を抱いたり好奇心を刺激されたりするものです。
それは子供だけが持てる財産と呼べるのかもしれません。
大人は子供が抱く様々な疑問に、きちんと正面から向き合ってあげる必要があるでしょう。
まだまっさらで何色にも染まっていない子供時代にしか感じられない気持ち。
大人からすると、そういった感情は眩しいほどに輝いて見えるはずです。
同じようにこの『波のある生活』も、子供の無邪気さに触れた時のような温もりを持っています。
世界が不思議で満ちていたあの頃。
その時に見えていた景色がきっと蘇ることでしょう。
ありのままいこう
MVではネクライトーキーのメンバーと、ボーカルのもっさによく似た女の子が登場します。
女の子は住んでいた家から引っ越さなければならないようで、その表情は寂しげです。
そんな女の子を元気づけるように、穏やかでどこか懐かしいメロディーが奏でられます。
メンバーと女の子の触れ合いが見ていて微笑ましいですね。
曲が奏でられる中で女の子の心境に変化があったのでしょう。
散らかしたままだった荷物をまとめ、笑顔で引っ越し業者の人たちを見送ります。
女の子が笑顔になれたのは、引っ越し業者の人たちがとても見覚えのある人たちだったからというのもあるはず。
そうして表示される「ありのままいこう」というメッセージ。
この一言が、曲中で最も伝えたかったことなのかもしれません。
ラストは引っ越し業者に扮したメンバーが「サントリー天然水 GREEN TEA」を飲んで談笑しているシーンで終了。
微笑ましい光景に最後まで頬が緩みっぱなしになってしまうMVでしたね。
子供時代よりも繊細な心
子供はどんな風に大人に変わっていくのか。
心と体の成長が噛み合わない不安定な時期は、きっと大人であれば誰もが経験してきたはずの道です。
理由もなく寂しくなったり、どうしようもなく切なくなったり...。
大人になる前の心というのは、子供の頃よりも繊細なものなのかもしれません。
曖昧な季節
気づけばもう四月
暖房は消せないでいる
部屋の静寂はいつも僕の味方だった
夕暮れ時になる
風はヒョーヒョーと吹く
帰る少年の足と晩ごはんのこと
出典: 波のある生活/作詞:不明 作曲:不明
この曲の主人公は、きっと大人と子供のちょうど中間くらいの時期にいるのでしょう。
少年の頃の気持ちを忘れてしまったわけではないけれど、今はもう思い出に変わっている。
少し前までは心地よかった静寂が、今の主人公には少しだけ切ないものになっているのかもしれません。
静かな部屋で1人きり。気づけば日が落ちる時間になっていました。
学校帰りに今日の夕飯について思いを馳せていたあの頃が懐かしい。
誰もいない部屋で夕日に照らされ、主人公はノスタルジックな気持ちになっているのでしょう。
少年時代にはもう戻れず、かといってまだ大人にもなりきれない。
そんな曖昧な時期を、春の訪れと冬の肌寒さが混在する4月と重ねているのだと思われます。
大人になれない
明星から見てる
街灯はもうじき灯る
今はなんにもできない大人になりそうだ
気づけない生活
表情は消せないでいる
君が好きだったものは嫌いになるよ
出典: 波のある生活/作詞:不明 作曲:不明
ここの歌詞で一番気になるのは、最後の「君が~」の部分。
これは恐らく、子供の頃に好きだったものは大人になると興味がなくなってしまうという意味なのでしょう。
逆に大人になれば、子供の頃に理解できなかったものの良さを感じられるようになるのかもしれません。
しかしそれでも、今好きでいるものに対する興味が薄れていってしまうのはやはり寂しい...。
大人の1歩手前にいる主人公は、自分の中で起こっている変化に上手く対応できずにいるのでしょう。
不安と焦燥が渦を巻いて、胸を苦しくさせる。
このままじゃ、自分は駄目な大人になってしまうんじゃないか?
そんな風に考えては、またどうしようもない気持ちになっているのかもしれません。
少年時代を引きずりながら、必死で大人の階段を上ろうとしている主人公の姿を、星が優しく照らしています。