まるで恋する女心のように矛盾を抱えた作品

寂しい恋心をアップテンポのリズムに乗せて歌う「ポツリと」。
ありったけの切なさを表現するのであれば、バラードのようなスローテンポの方が適しているはずです。
しかしこの曲はアップテンポであると同時に躍動感さえ感じます。
一見矛盾するこの2つの要素がなぜ無理なく両立できるのか。
聴けば聴くほど実はいろいろな要素が絶妙なバランスで混ざり、成り立っていることが解りました。
この記事ではその詳細を解説します。
アイドルらしからぬ衣装の意味
まずは衣装に注目してみましょう。
メンバー全員がモノトーンで揃えています。
大人数のダンスユニットの場合、全員が同じデザインの衣装を着ることが多いかもしれません。
同じ衣装で同じ動きをとることで、スキのない統一感が生まれるからです。
特にアイドルの場合、手の動きに付随して揺れるスカートの裾の動きまで統一されていることも。
今回のMVはどうでしょうか。
衣装らしさがない衣装
モノトーンという共通点はありますが、それぞれ少しずつ異なるデザインの衣装を着ています。
メンバーが最も美しく見えるラインで、各々の個性が見えるデザインが考えられているようです。
豪華な装飾や際どいカットもなく、ともすれば「普段着」のようにも見える今回の衣装。
これにはどういった意図があるのでしょうか。
寄り添いやすくなる親近感
この想いに気づいてほしい
手を握ったって構わないのに
だけどやっぱり自分からは
言い出せないの
出典: ポツリと/作詞:中島卓偉 作曲:中島卓偉
恋愛を経験すれば多くの人が味わうもどかしさ。
「好き」というたった2文字は言えないのに、「寒いね」は言えたりするのです。
恋をしている人なら日常の何気ない光景でしょう。
これを綺羅びやかな衣装を身にまとったアイドルが歌ったとして、説得力があるでしょうか。
リスナーの心に強く響かせたい。共感して欲しい。
そんな願いが、今回の衣装に込められているのだと推測できます。
アイドルソングではなく、身近な女性がリスナーの気持ちを代弁する曲にしたかったのです。
アクセサリーにも個性が
衣装のデザインが全員異なり、アクセサリーにも違いがあります。
これもまた、彼女たちを身近な存在として感じられるポイントです。
人は皆個性があり、それぞれ見た目が違いますし考え方も違います。
そんな中でも「伝えたいことが伝えられないもどかしさ」は共通している、ということではないでしょうか。