愛のない毎日は 自由な毎日
誰も僕を責めたり できはしないさ
出典: 眠れぬ夜/作詞:小田和正 作曲:小田和正
この2行の歌詞でまず注目したいのは「自由」というワード。
楽しいことばかりがある訳ではなかった愛しあった日々。
好きだから恋する相手だから、言われたことに間違いは無いと思っていたあの日。
身体も心も君からの愛に束縛されていたのでしょうか。
がんじがらめになっていた心がほどけることで解き放たれたのです。
縛りつけるものが無くなって実感したのが「自由」に過ごす日々なのですね。
独りで思いのままに過ごすことを「責める」ことはできないと、自分を正当化しています。
独りでのんびり過ごしているから、僕のことは心配しないでいい。
慰めの言葉などは要らないという強がりも垣間見えますね。
この後僕は君に対して本当に別れを告げることができるのでしょうか。
本当は…
君に聞いてもらえたら
それでもいま君が あの扉を開けて
入って来たら 僕には分からない
出典: 眠れぬ夜/作詞:小田和正 作曲:小田和正
先程の歌詞では独りを満喫するような僕が綴られていましたね。
あわせて、どこか無理をしているような思いもうかがえました。
そしてここではこれまでの思いはともかく、歌詞にあるのは僕の本音です。
訴えるように泣きながら謝る君を認めないと決めていたはずでした。
でも僕は期待をしていたのでしょう。君が僕の元に戻ってくることを。
扉にカギはかけていないのでしょうか。それとも君が合いかぎをまだ持っている可能性もありますね。
扉に手をかけるのは僕ではありません。
君が「開ける」というところもこの歌詞のポイントですね。
戻りたいとひたすら願う君が僕の部屋の中に飛び込んでくる、こんなシーンを予想しているのでしょう。
僕が今心から思っていることが君に伝わるのなら、君に僕の本音を聞いてもらえるなら。
僕の心の中は再び君のことでいっぱいになっているようです。
その先が見えなくても
君のよこを通りぬけ 飛び出してゆけるか
暗い暗い暗い 闇の中へ
出典: 眠れぬ夜/作詞:小田和正 作曲:小田和正
僕を裏切ったはずの君がまた僕のところに戻ってきてくれる。
前触れもなく僕の部屋に飛び込んでくる君。もちろんその君を僕は抱きしめます。
このようなストーリーを僕は頭の中で思い描いているのでしょう。
でも歌詞には、部屋に入ってきた君をスルーして僕が部屋の外に出る様子が綴られていますね。
僕にだって、戻ってきた君を受け止めてしまうことへの葛藤があるはずです。
もう君と会わないと決めたとしても、それはそれで「暗い」世界に戻ることになるのでしょう。
君のことを見ないふりをして外に出たとしても、そこは「闇」でしかありません。
期待と想像で膨らんだ切ない思い。心に抱えているものを最後の歌詞で伝えます。
今夜もまた…
眠れない夜と 雨の日には
忘れかけてた 愛がよみがえる
眠れない夜と 雨の日には
忘れかけてた 愛がよみがえる
出典: 眠れぬ夜/作詞:小田和正 作曲:小田和正
僕が寝られない理由は君のことを思い出しているから。
そして外は「雨」が降っているのでしょうか。
別れの日にも降っていた雨は、僕の涙にもなるのでしょう。
本当は君が戻ってくることを願っていた僕。
その心の移り変わりを様々に描いて、落ち込んだ僕の現状を言葉にしています。
眠りを妨げる原因になっているのは君との楽しかった日々、おまけに耳障りな雨音も続いてる。
終わったことと言い聞かせていたのに、目を閉じると君との日々が映像と音でよみがえってきます。
「忘れたはず」という表現が切ないですね。
君の恋は終わっています。
僕だけがまだ上手く終わりにできないまま、今日も寝付けない夜を迎えるのでしょう。
最後に
「眠れぬ夜」の歌詞に出てくるのは僕と君です。
でも歌詞を追っていくと、歌の中で動いているのは僕独りでした。
君は僕の思い出の中にしか出てきません。
過去の君に懸命に願いを伝えていたけれど、もちろん届いていないのでしょう。
思い出は心の中に住み着いたように残っています。
君に会いたくなったら思い出の中に戻って行くしかないのです。
西城秀樹さんは終わった恋の悔しさと虚しさを抑えつつ、この歌の世界を作り上げました。
若さという特権を活かしながら挑んだロストラブソング。
「眠れぬ夜」はこの後もアーティストとして歌い続ける特別な1曲となりました。