【スピッツ/Y】
Yの概要
「Y」はスピッツの6作目のオリジナルアルバム「ハチミツ」に収録されています。
リリースされたのは1995年9月なので、バンドブーム全盛期の年代です。
「少し古い曲なので今の時代には合わないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし本曲は全くそんなこともなく、いまなお多くの人から支持されています。
本曲は主人公の「僕」がもう会えない「君」のことを想う切ない曲です。
それはタイトルの「Y」の文字にも表されています。
Y字路のように途中で別れることになった君と僕。
彼らに何が起こったのか、君が鳥になるとはどういう意味なのか、解説していきます。
草野さんの歌声が存分に堪能できる
スピッツといえば、草野さんのハイトーンな歌声ですね。
高音でありながら、耳触りが優しくいつまでも聴いていられます。
バラード調である「Y」は、そんな草野さんの歌声が絶妙にマッチしています。
悲しげな歌詞なのに、草野さんが歌うと優しさに包まれる気がしてくるので不思議です。
アニメ「ハチミツとクローバー」の挿入歌に抜擢
恋愛に不器用な大学生達の報われない恋模様や、自分の才能や生き方について迷う若者達の姿を描いている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ハチミツとクローバー
歌詞解説スタート
僕は夢の中
小さな声で僕を呼ぶ闇へと手を伸ばす
静かで 長い夜
慣らされていた置き去りの時から
這い上がり 無邪気に微笑んだ君に会うもう一度
出典: Y/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
最初に申し上げますと、これは夢の中の歌だと筆者は考えています。
そのため歌詞解釈も、僕が夢を見ていることを前提に進めていきます。
「僕」は真っ暗なところに1人です。
ベッドに横たわりながら、夢をみている状態なのでしょう。
歌詞の「闇へと手を伸ばす」は2つの意味を表現しています。
1つは真っ暗な部屋の中で寝ぼけながら、空(くう)に向かって手を伸ばす現実世界の僕。
もう1つは自分を呼ぶ声を探してさまよう、夢の中の僕。
様子から察するに、僕は不安な夜を過ごしているようです。
歌詞2段目は君と過ごした楽しい夜の対比として、僕が1人であることが強調されています。
しかし僕が寂しい夜を望んだ訳ではありません。
歌詞からも読み取れるとおり、僕はその状況に「慣らされて」いました。
静かな夜をもたらしたのは君の意図だったのか、それとも偶発的だったのかは分かりません。
僕は君に会うために這い上がろうとしますが、ここで気になるワードが出てきます。
君は「微笑む」ではなく、「微笑んだ」と過去形になっていることです。
過去の君に会う方法はただ一つ。
現実で君と会うのではなく、夢の中で思い出の君と会うしかありません。
消え入りそうな君
強がるポーズがよく似てた二人は
弾き合い その後引き合った
生まれた頃と変わらない心で
触ったら すべてが消えそうな君を見つめていた
出典: Y/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
ここからは君との思い出を、夢の中で振り返るシーンになります。
過去を振り返ったときに、最初に思い出されたのが「強がるポーズ」です。
お互いに人に弱みを見せないタイプで、プライドが高かったのでしょう。
似たもの同士で惹かれ合う反面、意思がぶつかることも多かったようです。
「生まれた頃~」は僕の純粋な心を表しています。
そのころから僕は、君がいなくなるのではないかと心配していました。
「消えそうな」からは、君が弱っている様子がありありと読み取れます。
そして夢の中だからこそ、もう触れることのできない悲しさを表しています。