「ラブリー」は時代のアンセム

キラキラだった小沢健二

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1994年の音楽誌や経済誌のトレンド予想「今年ヒットするもの」の中に小沢健二の名前がありました

前年にファースト・アルバム「犬は吠えるがキャラバンは進む」を発表した小沢健二

フリッパーズ・ギター時代と較べてシリアスなトーンの内容でしたので賛否が分かれました。

しかし1994年にはきっと花開かせるだろうという期待感が様々なアンテナにキャッチされていたのです。

そしてスチャダラパーとの競演「今夜はブギー・バック」とソロ作「愛し愛されて生きるのさ」のヒット。

予告編となるシングルの大ヒットに続いてJ-POPシーンを塗り替える名盤、アルバム「LIFE」を発表します

このアルバムの決定力を考えるとオリコン・チャートで5位に留まったのは今では不思議すぎます。

それでも時代を画する「オザケン・ブーム」の幕開けがなされました。

1994年11月23日、小沢健二はアルバム「LIFE」から2曲目の「ラブリー」をリカットします。

「ラブリー」は歌詞に漲る生命力から時代のアンセムになるのです

小沢健二のチカラだけで華やかに湧いた時代を振り返りながら「ラブリー」の歌詞の魅力に迫ります。

ネオ・アコースティックと黒人音楽の相関

HIP HOPとの親和性

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フリッパーズ・ギターというネオ・アコースティック・ユニット出身の小沢健二。

当時からすべての曲の歌詞を書いてきました。

また大ヒットした「恋とマシンガン」はクレジットこそ小山田圭吾との共作ですが小沢健二ひとりで書いた曲

歌詞に関しては並々ならぬ自信があった模様。

雑誌などでよく「みんな、オレくらい歌詞をキチンと書かなくては駄目だ」と語っています。

そんな彼の才能が開花したのはむしろソロ時代です。

お洒落な風貌と明るく不遜な性格でタレントとしても華があり女性たちの心を鷲掴みにします。

特にアルバム「LIFE」はその後のJ-POPの行く末を今に至るまで決定づけた金字塔です。

フリッパーズ・ギター時代はオルタナティブ・ロックからの引用が多かった小沢健二。

ソロに転向してからはソウル・ミュージックからの引用が増えます

また自身の創作の技術におけるHIP HOPとの相関を認めるのです

元々、イギリスのORANGE JUICEなどのバンドが先行していました。

ネオ・アコースティックとソウル・ミュージックを違和感なく融合させていたのです。

小沢健二の創作にもこうした伝統が息づいているよう。

シングル「ラブリー」はそんな創作の在り方の総決算でした。

ソウル・ミュージック、黒人音楽のJ-POPでの復権の道筋は小沢健二に始まります

それでは「ラブリー」の歌詞を見ていきましょう。

歌謡曲を終わらせた軽さとご機嫌さ

愛し合うことを肯定する

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夢で見た彼女と会って FEEL ALRIGHT
誰かのちょっと待ってなんて知らない
LIFE IS A SHOWTIME すぐに分かるのさ
君と僕とは 恋におちなくちゃ
夜が深く長い時を越え
OH BABY LOVELY LOVELY WAY 息を切らす

出典: ラブリー/歌詞:小沢健二 作曲:小沢健二

とにかくご機嫌でお気軽な歌詞なのです。

理想の恋人と出会ってすぐに恋に落ちる。

他人が「待った!」と叫んで僕らの恋路を邪魔しようとも知ったことではない

人生はショーである。

息も絶え絶えに愛し合って夜を越えてゆこう。

明るさに満ちた歌詞が受けました。

日本の歌謡曲を終わらせるような根源的な光や輝きにあふれているのです

前作からの反動か?

前作「犬は吠えるがキャラバンは進む」は小山田圭吾に「尾崎豊かと思った」といわれるほどシリアス。

「天使たちのシーン」を巡っては「小沢健二が自己啓発セミナーに通っている」という噂が流れました

雑誌「噂の真相」に載った酷いデマでしてこれを受けて小沢健二は「オレが啓発してやる」と息巻きます

前作の評価への反発であったのかは定かではないのですがアルバム「LIFE」の曲は前向きかつ肉感的。

とくにこの曲「ラブリー」はその傾向が顕著です。

人気テレビ番組のパロディー

誰かのちょっと待ってなんて知らない

出典: ラブリー/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

このラインはとんねるずの人気番組「ねるとん紅鯨団」でのお決まりの一幕のパロディー。

お気に入りの女性に他の誰かが告白すると「ちょっと待ったー!」と叫んで告白を邪魔します。

こうしたパロディーにも満ちた歌詞が「ラブリー」の真骨頂です

人間にとっていちばん大事なもの

ソウル・ミュージックの魂(ソウル)の復権