NUMBER GIRL【鉄風 鋭くなって】歌詞の意味解釈！橋の上から何を見た？情景に投影した意識とは

ふとその屋形船に目が留まり、強風の吹く鉄橋から身を少し乗り出して川の様子を見降ろした彼。

真っ赤な夕日に照らされた屋形船から聴こえる賑やかな花遊びの音は、少しずつ遠ざかっていきました。

以前テレビか雑誌で、あの屋形船に乗る芸者の特集写真を見たことを思い出したのです。

その中に1人とても印象的だった少女がいたこともまた、ふと彼は思い出しました。

自分はまだまだ芸事の修業を積んでいる最中だ、と語っていた彼女。

漆のような真っ黒な髪に和細工を施した白い簪、白粉を纏った肌に真紅の口紅が鮮やかに咲いています。

10代の少女に似つかわしくない妖艶な雰囲気を纏った、1人の少女。

彼女はうっすらと品のある笑みを湛えて、静かにこちらを真っ直ぐ見つめていました。

きっと彼女も、あの船の中に乗っているのだろう。

自分の平凡な人生では、彼女との縁が交わることなどきっとない。

そうどこかで分かってはいるものの、彼女の静謐な笑みが彼の頭の隅から離れないのです。

隅田川の鉄橋を越え、1人黙々と帰路に着く少年。

目の前を横切る野良猫たちは、みな一様に鋭い目をしています。

この厳しい大都会の中で生き残るには、そうやって生きていくしかないのでしょう。

住宅街の中に佇む学校の校庭からは、元気な野球少年たちの声が響き渡ります。

そんな見慣れた光景の中で、目の前の校門から駆け出してきた少女。

笑顔ですれ違ったセーラー服の似合う彼女と、ほんの一瞬だけ目が合いました。

その少女は、記憶の隅にいたあの芸者と非常によく似た顔をしている、ような気がしました。

だからといって、その子に声を掛けるような無粋な真似はしません。

そんな気取った理由だけではなく、彼女に声をかける勇気も毛頭彼にはないのです。

いつも通りの帰り道、今日も彼の丸まった背中には都会の冷たい強風が吹きつけています。

最後に、楽曲の歌詞を見ながら実際の楽曲をお聴き下さい。

こちらは楽曲の公式PVで、当時まだ20代のメンバーの貴重な演奏シーンを写したものです。

楽曲のキーともなる「鉄」の一文字をバックに背負い、薄暗い空間で淡々と演奏し続けるメンバー達。

熱を帯びたギターロックサウンドと対比するかのような映像の温度差に、目が引きつけられますね。

1人1人の表情が辛うじてわかる程度に照らされた、彩度の低いごく僅かな照明。

これもまた、バンドの雰囲気と抜群にマッチした演出となっています。

そしてこの楽曲のPVには、幻のもう1つのバージョンが存在するといわれています。

ファンが「4分割バージョン」と称するそれは、公式PVの演奏シーンをメンバーそれぞれに撮影したもの。

その1人1人の映像を、画面を4分割して流しているものとなっています。

今現在はYouTubeでも見ることのできない、まさに幻のPVとなっているこちらのバージョン。

一部映像サービスやテレビの音楽チャンネルでは、非常に稀に見ることができるようですね。

NUMBER GIRLファンにとっては、一度は見ておきたい映像となっています。

いかがでしたか？

今回はNUMBER GIRL【鉄風 鋭くなって】の歌詞を解説致しました。

人間の無常観を大都会東京で歌う、向井秀徳。

もしかしたらこの歌は、そんな東京で生きる彼の日常の風景の1つだったのかもしれません。

本サイトOTOKAKEには、まだまだ皆さんに読んで頂きたい記事がたくさん。

その中から、本記事と併せて読んで頂きたいものをいくつか最後にピックアップさせて頂きます。

今回ご紹介するのは、NUMBER GIRLが活躍していた90年代の邦ロックシーンについて。

そこで彼らと共にしのぎを削っていた2バンドの楽曲をご紹介致します。