「ひとつ屋根の下」の脚本家はヒットメーカー・野島伸司。「101回目のプロポーズ」の脚本も彼です。
売れるまでの彼はたいそう貧乏で、電車賃にすら事欠く有様。エリートとはほど遠い雑草でした。
そんな野島の脚本を、ドラマのプロデューサー大多亮は、ノベライズ版「101回目のプロポーズ」の巻末で、以下のように評しています。
彼の生活信条であり、作品を貫いているテーマは「清貧」という言葉だ。 今どき、清く貧しく美しく・・・・・ということ自体、成立しにくい世の中だからこそ、彼のこのテーマは鮮烈だった。
出典: 101回目のプロポーズ(角川文庫)/野島伸司
そうでした。「101回目のプロポーズ」も雑草ドラマでした。
ドラマの主役は武田鉄矢。愛を告げる肝心の場面で「ぼくは死にましぇん!」と言い放ちます。イケメンどころかダッサいオッサン。
その武田鉄矢が工事現場で、ヒロイン浅野温子の薬指にはめた指輪は、現場で使うボルトでしたよ。
- 恋愛も清貧ならば、兄弟愛だって清貧。
恋愛ドラマ「101回目のプロポーズ」とホームドラマ「ひとつ屋根の下」を橋渡しするキーワードが見えてきました。
切ない歌詞にこめられた清貧の思想
逢えないからこそあなたを想う(ドラマのネタバレ注意)
「ひとつ屋根の下2」では最後、福山雅治のチイ兄ちゃんが、血のつながらない妹・小雪(酒井法子)にプロポーズします。
しかしドラマの途中まで、チイ兄ちゃんは海外赴任で兄弟とは離れ離れ。一方の小雪は小雪で白血病に侵されます。難病や不治の病は野島伸司がしばしば好む展開です。
もうあの人とは逢えないかもしれない。ジリジリと焼けつくようなもどかしさが、切なさいっぱいの「ひだまりの詩」をなおいっそう切なくさせます。
恋愛であり腹違いの兄妹愛。共通するキーワードは「清貧」。ドラマと歌の相乗効果、ここにあり。
なるほど歌詞を見てみれば
ここまで読めばおわかりでしょう、歌詞の意味。
コードも一緒に見ていきましょう。
G B7 Em Bm C D G
逢えなくなって どれくらい たつのでしょう
G B7 Em Bm C D G
出した手紙 も 今朝ポストに 舞い戻った
G B7 Em Bm C D G
窓 辺に揺れる 目を覚ました 若葉のよに
G B7 Em G A7 D
長い冬を越え 今ごろ気づくなんて
G Am Bm B7 Em D C Cm
どんなに 言葉にしても 足りないくらい
G Em Am D Bm Em Am D
あなた 愛してくれた すべて 包んでくれた
Bm Em Am D G / D /
まるで ひだまりでした
出典: ひだまりの詩/作詞:水野幸代 作曲:日向敏文
まだメールは一般的でなく、SNSなどなかった1990年代。
届かない手紙という表現がますます切なくさせますねぇ。
愛された私は冬眠していた若葉の芽だった。
愛したあなたは寒さの時もひだまりみたいな人だった。
今ごろ気づいてごめんなさい、と。
菜の花燃える 二人最後のフォトグラフ
「送るからね」と約束はたせないけれど
もしも今なら 優しさもひたむきさも
両手にたばねて 届けられたのに
G Am Bm B7 Em G7 C Cm
それぞれ 別々 の 人 好きになっても
あなた残してくれた すべて忘れないで
誰かを愛せるよに
出典: ひだまりの詩/作詞:水野幸代 作曲:日向敏文
菜の花の写真は春を象徴しています。
写真の二人は春真っ盛りだというのに、それが最後の写真だなんて。心は別の人のほうを向いているだなんて。
2コーラス目は1コーラス目とコードもメロディーも同じですが、「それぞれ別々の人好きになっても」のパートだけ、コードとメロディーが少し異なります。
ずーっと聴きこんでいると、ここでハッとさせられるんですよね。「お二人さん大丈夫?」「でも兄妹だから大丈夫かな?」って。
チイ兄ちゃんと小雪の行く末を案じる視聴者にとって、気が気ではない歌詞とメロディーです。
Em B7 Em B7 C Cm
広い空の下 二度と逢えなくても 生きてゆくの
G Em Am B7 Em Bm Cm
こんな 私 のこと 心から
G Em Am D Bm Em Am D
あなた 愛してくれた すべて 包んでくれた
Bm Em Am D G D / Em / C D/
まるで ひだまりでした
Bm Em Am D Bm Em Am D
あなた 愛してくれた すべて 包んでくれた
Bm Em Am D G D
それは ひだまりでした
出典: ひだまりの詩/作詞:水野幸代 作曲:日向敏文
そしてここ!最後の最後で聴いたこともないメロディライン!
そこにはめ込まれた歌詞が「二度と逢えなくても生きてゆくの」ですからね……。
とはいえ曲全体の印象がやわらかいのは、穏やかで優しげなメロディとボーカルのおかげでしょう。
よくよく聴くと切ないけれども悲しくはない。だから何度も聴きたくなる。
極めて中毒性が高い、罪作りな一曲という見方もできます。
Le Coupleこぼれ話
ところで、「ひだまりの詩」を歌ったLe Coupleは夫婦二人のユニットです。
Le Couple(ル・クプル)はフランス語で、英語に直すと「カップル」ですから、文字通り夫婦のペアなのです。
藤田恵美(ふじた えみ、 1963年5月15日(54歳) - )東京都清瀬市出身、ボーカルと作詞担当
藤田隆二(ふじた りゅうじ、1963年11月7日(54歳) - )東京都板橋区出身、ギターほかと作曲担当
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Le_Couple