坂口有望による卒業ソング「青春」
唯一無二の歌声が沁みる
2019年1月25日発表のシングル「青春」は坂口有望による等身大の卒業ソングです。
彼女自身がこの年、高校を卒業します。
彼女の原点を想起させるスタイルで挑戦した直球勝負の歌がリスナーに感動を呼ぶのです。
これから卒業を迎えるひとも、卒業をいくつか重ねてきたひとも感動すること間違いない曲に仕上がりました。
過ぎ去りし日々の思い出に浸って切なくなったり、キラキラした青春の有り様に眩くなったりします。
この曲の歌詞を丁寧に紐解いて、すべての青春を祝福しましょう。
早熟の天才・坂口有望の歌声に惹かれる
主人公は「僕」
あの場所でうたった唄 君は覚えているかな
不安だった どうなるか分からない僕らの未来
出典: 青春/作詞:坂口有望 作曲:坂口有望
主人公は「僕」で、恋した女性が「君」という設定。
坂口有望は男性視点で物語を進めますが、女性が描く理想的で優しい男性像になっているのです。
坂口有望は中学2年生から曲作りを始めて、13歳で初ステージを踏んでいます。
早熟の天才です。
この曲「青春」はいま正に思春期の只中にある彼女だからこそ書けた歌詞に思えます。
思春期は将来のことなどを過剰に心配しすぎてしまう時期。
思春期固有の不安は、大人になればやがて小さなことに思えたりして忘れてゆくもの。
それでも思春期のど真ん中にいる少年少女にしてみたら、抱えきれない重圧に感じるはずです。
彼女自身の等身大の悩みや不安が投影されているのかもしれません。
小さなことでも笑えた日々
笑顔の仮面
君が被ってたマスク 笑顔という名のマスク
僕は外す事ができたのかな 君は笑えているかな
出典: 青春/作詞:坂口有望 作曲:坂口有望
2度目のAメロの歌詞です。
思春期はとにかく明るく笑顔で過ごさないと仲間外れにされかねない危険があります。
「君」はそんな不安を抱えているのか、「僕」の前で笑顔という仮面を身につけるのです。
でもそんな仮面のような笑顔からも卒業して、自然に笑顔になれる日がきっとくるはず。
「僕」は「君」の笑顔が、たとえ取り繕ったものであっても大好きだったようであります。
それでも「僕」は「君」が本当に屈託なく笑ってくれることを願っているのです。
「僕」の「君」を思う気持ちに聴く者は胸がきゅっと傷んで切なくなります。
幸せな日々を忘れたくない
幼くても貪欲な愛
なんでもかんでも失ってから分かるの
いつしか思い出が遠くなっても
僕は忘れないから だからさ 君も忘れないでね
出典: 青春/作詞:坂口有望 作曲:坂口有望
Bメロの歌詞です。
思春期に限らず人は失ったものこそキラキラと見えてしまう瞬間があります。
失ったものの大切さを知って愕然とするような瞬間です。
過ぎ去りし日々の思い出はいつしか胸の内であやふやな形に崩れてゆく。
それでも「僕」と「君」とが一緒にいた風景を忘れないでいたいし、「君」にも忘れないで欲しいと願う。
この願いはふたりが一緒にいたすべての日々、物事に及ぶのだと「僕」は歌います。
愛とは貪欲なもの。
たとえ幼い愛であろうとも相手の記憶にしがみつきたい必死さが窺えます。