二人の家の 白壁が
ならんで浮かぶ 堀の水
出典: 夕焼け雲/作詞:横井弘 作曲:一代のぼる
2番では、ついに恋人が登場します。
きっと幼馴染みなのでしょう。
漆喰でできた白壁、石で縁取られたお堀が周りを囲んでいる。
いかにも日本的ないいお家ですね。
当時は普通だったのかもしれませんが。
千昌夫の実家が農家であり、幼い頃に父親を亡くしていることを考えるとゴージャスな日本邸宅ではなさそうです。
そしてそのような事情であれば、お隣さんとの付き合いも深かったのではないかと思います。
忘れない
どこへ行っても忘れない忘れない
出典: 夕焼け雲/作詞:横井弘 作曲:一代のぼる
その幼馴染みとの思い出は強く、決して忘れることがありません。
むしろ、忘れられないのかもしれませんね。
都会へ出てくればたくさんの出会いがあります。
恋の一つもするでしょう。
でも、(おそらく)初恋のあの人のことは決して忘れない。
一途で、一本気な男心を感じさせます。
小指でとかす 黒髪の
かおりに甘く 揺れた町
出典: 夕焼け雲/作詞:横井弘 作曲:一代のぼる
髪をとかす時に小指を使うでしょうか?
と真面目に考えてしまいましたが、仕草としては可愛らしいですね。
細かい仕草や、髪の香りなども鮮明に思い出せるほど印象的だったに違いありません。
東京へ出て、成功して落ち着いたら迎えに行くつもりだったのでしょうか。
それが叶わなかったことは明白ですが、町を出た時点の気持ちとして気になりますね。
3番の歌詞
あれから春が また秋が
流れていまは 遠い町
出典: 夕焼け雲/作詞:横井弘 作曲:一代のぼる
千昌夫にはデビュー直後の「星影ワルツ」や「君がすべてさ」などのヒット曲以降、振るわない時代がありました。
本人としては、まだ花を咲かせたという満足感はなかったのかもしれないですね。
つまり、故郷を離れてから時間だけはどんどん過ぎていくのに成果が出ていない。
時間が経つほど故郷が遠い町に思えてしまう。
寂しい心情ですね。
帰れない
帰りたいけど帰れない帰れない
出典: 夕焼け雲/作詞:横井弘 作曲:一代のぼる
男が帰らないと言った以上、何があっても成功するまで帰らない決意なのです。
でも、本当は帰りたい。
本心では、帰りたい。
しかし、まだ帰れない。
この歌詞で唯一の本音を告白した部分ではないでしょうか。
そして、人間の弱さを感じさせます。
夕焼け雲の その下で
ひとりの酒に 偲ぶ町
出典: 夕焼け雲/作詞:横井弘 作曲:一代のぼる
故郷を離れたその日に見ていた夕焼け雲。
それとよく似た夕焼け雲を見ながら、ひとり酒を飲む。
場所が変わっても、夕焼け雲の美しさ、寂しさ、儚さは変わりません。
遠くなってしまった故郷を思い出しながらお酒飲んでたら、きっといろいろなことを思い出すでしょうね。
赤提灯の店先か、屋台で、寂しい背中が思い浮かびます。
下町の屋上か、ベランダでも雰囲気出ますね。
ひとしきり思い出して、なんだったら泣きたいだけ泣いたら前を向けるのでしょうか。
帰りたいけど帰れない
歌詞に迫る!
まとめると、この歌詞は3番の「帰りたいけど〜」の部分に集約されていると思います。
血気盛んな若い時代に、夢とロマンを求めて都会へ出てきます。
しかし、現実はそう甘くなく簡単には成功できないのです。
もちろん本人は全力で突っ走ってきたでしょうし、簡単に上手くいくなんて思っていないでしょう。
決して負けて帰るわけにはいかない。
きっと中途半端で帰ってしまったとします。
懐かしさや人の暖かさに触れてしまうと故郷を出られなくなってしまうかもしれない。
辛くともまだ戦いたい。
夢を諦められない、でも本当は帰りたい。
そんな切ない心情が歌われているのです。