闇の中を照らす一筋の光
上白石萌音の5thシングル
女優としても大活躍している上白石萌音さんの5thシングル「一縷(いちる)」。
穏やかで優しげなメロディに、上白石さんの透明な歌声が重なった美しい曲に仕上がっています。
MVに登場する上白石さんの姿もどこか儚げで、のどかな風景が曲の雰囲気とぴったり。
映像を観ているだけでも、どこか切なくなってきますね。
タイトルは難しい言葉ですが、「一縷の望み」などで使われる言葉です。
「一筋の」「わずかな」という意味の言葉ですが、これは何を表しているのでしょうか。
応援するのではなく、そっと寄り添うようなこの曲の歌詞を解説します。
映画『楽園』主題歌
ベストセラー作家・吉田修一さんの最高傑作『犯罪小説集』を原作としたサスペンスドラマ。
タイトルこそ「楽園」ですが、限界集落で起こる2つの事件を軸にした物語となっています。
その物語と「一縷」がどう関わっていくのか。
曲と映画の関わり方も必見ですね。
暗闇の中でもがく人々
「一縷」は暗闇の世界でもがきながら生きる人々を描いています。
暗闇の世界といっても、太陽が昇ってこない世界ではありません。
何かに苦しみ、絶望のどん底にいる人の世界です。
そのような人の目に映る世界は希望の光も見いだせず、暗闇にいるかのような気分になるでしょう。
彼らを救うのは、一体何なのでしょうか。
逃れられない運命
運命はどこからともなく やってきてこの頬かすめる
触れられたら最後 抗うことさえできないと知りながら
出典: 一縷/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
一度でもそこに足を踏み入れたら最後、一生付きまとって巻き込まれていくもの。
それが「運命」です。
厄介なことに、それはいきなりやってきては多くの人々を苦しみに突き落としていきます。
まるでどこからか吹いてくる風のようですね。
しかし違うのは、巻き込まれた人は抗うことすらできなくなるという点です。
運命はそれを分かっていながら、多くの人々を渦に引き入れます。
それが絶望の始まりであったとしても。
この歌詞の人々は、こうやって運命に巻き込まれたのかもしれません。
果てには苦しみ、悲しんでいるのでしょう。
自分たちはいつも傷だらけ
傷だらけで川を上ってく あの魚たちのように
私たちに残されたもがき方など いくつもなくて
出典: 一縷/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
1行目の「傷だらけで~」という魚の描写が、とてもリアルですね。
鮭のように流れに逆らって川を遡上する魚は、満身創痍ではないでしょうか。
回り道も戻る道もなく、ただただ一生懸命前に進むしか方法はありません。
今暗闇でもがいている人々もそうなのです。
これ以外どうしようもなくて、今目の前にある運命に一進一退の攻防を繰り返しているのでしょう。
もちろん、全身は傷だらけになっていると思われます。
だとしても、残された手段はこれしかないのです。