お前がどっかに消えた朝より
こんな夜の方が まだましさ
出典: 感電/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
探し物もうまくいかず、「お試しで」洒落にならない喧嘩をし合う夜。
うまくいかないことばかりの夜でも、お前が消えるよりはまし…。
そんな言葉からは、相棒を失った経歴、離れ離れになる姿が透けて見えます。
かつて相棒を失ったことのある志摩。
そして物語終盤では、伊吹と志摩が別々に行動することになる展開が描かれます。
どんなにうまくいかない夜でも、心許せる相棒がいれば悪くない。
強い絆が感じ取れる一節です。
メロウな結末に待つものとは?
愛するようにぶつかり合うのは
肺に睡蓮 遠くのサイレン
響き合う境界線
愛し合う様に 喧嘩しようぜ
遺る瀬無さ引っさげて
出典: 感電/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「肺に睡蓮」「遠くのサイレン」は、主演二人の作品に由来しています。
しかし数多くの作品の中からなぜこの2作を引用したのか、考察してみましょう。
「肺に睡蓮」は綾野剛主演の映画「シャニダールの花」に由来します。
女性の肺に睡蓮の花が咲く、という奇妙な現象を巡る物語。
この映画はさらに「うたかたの日々」というフランスの小説を元にしています。
肺に睡蓮が咲き、いずれは死んでしまう病。
ここから感じられる美しさと危うさは、純粋でまっすぐだからこそ危うく感じさせる伊吹の姿と重なります。
その睡蓮と韻を踏む「遠くのサイレン」は、星野源の楽曲「family song」から。
サイレンという言葉自体は警察官である志摩のイメージと重なりますが、さらに歌の内容を見てみます。
「family song」は、ただ穏やかな幸せが大切な人と共にあることを願う歌。
この引用は、冷静にふるまいながらも関わった人の幸せを願わずにいられない志摩の内心が反映されています。
そうしたふたりが「響き合う」ことで生まれる物語。
続いて、「喧嘩」についても考えてみます。
「愛し合う」と「喧嘩」は一見正反対のように見える行動。
ですがお互いに理解し合おうとするとき、意見をぶつけ合うことは必要不可欠。
劇中でもたびたび伊吹と志摩は喧嘩や言い争いをしますが、それはお互いを理解する助けになっていきます。
互いを理解するために喧嘩することは、愛し合うことと同じコミュニケーションの手段。
本当に理解を望まない者は、正面から喧嘩しようともしないのです。
ドラマ終盤の展開からは「別の個人を理解しようとする」ということが色濃く描かれていました。
それはぶつかり合うことが少なくなった昨今こそ、心惹かれる人と人との関係の在り方なのかもしれません。
不条理とやるせなさの先にある結末へ
「MIU404」は、どこかやるせなさを抱えた物語です。
犯人も被害者も、刑事たちもどこかにどうにもできない痛みとやるせなさを抱えています。
それは、言ってみれば2020年の気分そのものだったのかもしれません。
SNSでつながり合う時代。
今まで以上に関係を切ることが容易な中で喧嘩してまで相手と分かり合うことは少なくなりました。
そして誰もが簡単に加害者になることも、被害者になることもある時代。
そこには明確な善と悪の区別はなく、ふんわりとしたやるせなさばかりが残ります。
そんな中でも稲妻のように前に進むことを諦めない。
その先にメロウな、円熟して誰もが幸せになれる世界が待っている。
そう信じて前へと進む伊吹と志摩に「感電」したのは、視聴者である我々なのかもしれません。
お前はどうしたい? 返事はいらない
出典: 感電/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
この一節はまさに伊吹と志摩から、そして「MIU404」から視聴者へのメッセージなのです。
MV&人気曲もチェック!
としまえんで撮影されたMVも必見
MVは奥山由之監督による作品。
コミカルでファンクな、夢や悪夢の中のようにも思える映像が印象的です。
撮影は2020年に閉園された遊園地「としまえん」で行われ、レトロな印象も華を加えています。
YouTubeでの公開直前には「404 NOT FOUND」と書かれた画面に差し替えられたことも話題を呼びました。
様々な表情を見せる米津も今までと一風違う雰囲気を持ち、必見です。
STRAY SHEEP収録曲をチェック!
「感電」も収録されたアルバム「STRAY SHEEP」。
大ヒットとなった「Lemon」を含む一作は、米津にとっての2020年段階でのマスターピースとなりました。
その中からおすすめ記事を紹介します。
独特の和のテイストを持ちながら揺れる「Flamingo」。
同じくTBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」主題歌として日本中を感動させた「馬と鹿」。
そして劇場版アニメ主題歌として書き下ろされた壮大なバラード「海の幽霊」。
是非、アルバムと共にチェックしてみてください!