ドラマ「MIU404」とタッグを組んだ話題曲
ドラマの世界観を詰め込んだ一曲
米津玄師「感電」は、2020年にリリースされ大きな反響を呼んだ一作。
アルバム「STRAY SHEEP」に収録され、不思議な印象のMVも印象的です。
ドラマ「MIU404」の主題歌として制作され、ドラマの世界観とのリンクも話題を集めました。
綾野剛演じる明るく直情的な「伊吹藍」と、星野源演じる理性的で過去を背負う「志摩一未」。
対照的な二人の刑事が相棒として絆を深め、複雑でどこかやるせない事件に必死で立ち向かっていく。
そんな物語の世界を主題歌という形で表現し、興奮や感動を盛り上げる「感電」。
ファンクで遊び心に溢れながらどこか切なさを抱えたようなサウンドも印象的です。
「アンナチュラル」に続く制作陣とのタッグ
同じく米津の大ヒット曲「Lemon」を主題歌に据えた「アンナチュラル」。
「MIU404」は「アンナチュラル」の制作陣を引き継いで制作された一作でした。
脚本は「アンナチュラル」でも多くのエモーショナルなドラマを描いた野木亜紀子。
放送日も同じくTBS金曜ドラマとして放送され、当初から多くの話題を集めました。
SNSでの注目度やドラマファンからの評価も軒並み好評。
コミカルさや軽妙な掛け合いの面白さと登場する人物達の魅力、緻密なストーリー構成。
そして時事や社会の問題にも目を向け、やるせなさと暖かさの残る物語。
物語の中で主題歌の「感電」が印象的に流れ、夢中になった人も多かったのではないでしょうか。
この作品は2020年、第105回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では「最優秀作品賞」に輝いています。
そして主題歌「感電」もドラマソング賞を受賞しました。
米津玄師本人もドラマの物語を意識して制作したというこの一作。
ここからは随時「MIU404」の内容にも触れつつ、「感電」の歌詞を解釈していきます。
夜の中をお前と走る
犬のおまわりさんは夜を行く
逃げ出したい夜の往来 行方は未だ不明
回り回って虚しくって 困っちゃったワンワンワン
失ったつもりもないが 何か足りない気分
ちょっと変にハイになって 吹かし込んだ四輪車
出典: 感電/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
夜の街を歩き回るところから物語は始まります。
「行方不明」という言葉は事件の捜査をしている印象。
「ワンワンワン」の部分では犬の鳴き声がサンプリングで使われるなど、遊び心がお洒落です。
「行方不明」「困る」「犬」というフレーズからは、童謡「犬のおまわりさん」が思い起こされます。
実はこれは「MIU404」からイメージされたものだと米津は語っています。
MIU404の登場人物はそれぞれ資料にイメージとして「犬種」が書かれていたとのこと。
それにヒントを得た米津は、仮タイトルを「犬のおまわりさん」として制作を進めていたそうです。
そんな「犬のおまわりさん」達は、足りない何かを求めるように四輪車=車へ。
自動車の登場も「まるごとメロンパン号」などの車を飛ばして機動捜査に当たる二人を思わせます。
イカれた夜もお前と共に
兄弟よ如何かしよう もう何も考えない様
銀河系の外れへと さようなら
真実も 道徳も 動作しないイカれた夜でも
僕ら手を叩いて笑い合う
誰にも知られないまま
出典: 感電/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
ここからどこか離れた場所にいなくなってしまいたい。
そんな刹那的な衝動が感じられる一節です。
真実も道徳も役に立たないと思わせる表現は、こちらもドラマの内容を思わせるもの。
単純な真実では救われないものがあり、単純な道徳では防げない事件がある。
そんな複雑な人間の心が起こす事件に、伊吹と志摩はぶつかり立ち向かうことになります。
それでも、二人で手を叩いて笑い合う。
手を叩いて笑うほど大笑いするとも、事件の解決にハイタッチして笑うとも取れそうな一説です。
それは二人きりの出来事、誰にも知られる必要はないのです。
この一説は伊吹と志摩の物語に寄り添っているのはもちろん、今という時代を生きる人々にも当てはまる歌詞。
「MIU404」が映し出したように、現代は真実も道徳も混沌とした時代です。
そんな中でも信じる相棒がいて笑い合えれば悪くない。
ドラマに寄り添って書かれている歌詞だからこそ今を生きる我々の心にも響くのです。
返事を求めない理由とは
混沌の夜を二人で走り抜ける
たった一瞬の このきらめきを
食べ尽くそう二人で くたばるまで
そして幸運を 僕らに祈りを
まだ行こう 誰も追いつけない くらいのスピードで
出典: 感電/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師