We can't stop it

出典: We Can't Stop It/作詞:MIYAVI・Lenard Skolnik・Seann Bowe 作曲:MIYAVI・Lenard Skolnik・Seann Bowe

楽曲のサビにあたる、曲名にも用いられている最も印象的な言葉がこちら。

噛みしめるように、確かめるように、何度も重ねて歌われます。

旋律はシンプルなフレーズの繰り返しでありながら、コードの移り変わりによって楽曲に奥行きが。

メロディラインは終始、2小節単位の小さな周期の反復でできています。

対して和音進行は8小節単位と、より大きな周期の反復。

それらの要素が干渉し合い、音楽が波紋のように広がっていきます。

少しずつ重なられていく音響

ここから、DJのサウンドが加わっているのにもご注目。

サウンド・エフェクトや人の声を模したような音色…。

それらを組み合わせ、楽曲のビートに合わせて使用していることがわかります。

ここまではヴォーカル、ギタードラム、そしてDJが順に重なり、少しずつサウンドの層を厚くしているのですね。

バンドサウンドへ一気に染まる間奏部

リフレインがひとしきり終わったところで、バンドサウンドは突如色を変えます。

Acoustasonic Telecasterに搭載された、エレキギターとしての特徴。

シングルコイルの高らかなトーンが響き渡ります。

幅広い音作りを実現するこのギターのポテンシャルが、遺憾なく発揮されているといえるでしょう。

ここでシンセサイザーによる存在感をもった低音が加わり、サウンドがより重厚に。

MIYAVIの足下に配置された多数のエフェクターも真価を見せます。

テクノ然とした機械的な音色を混ぜながらのギター・ソロ。

そして、これまでじわじわと上がっていた楽曲のテンション。

ここにきてそれが一気に急加速し、炸裂したといったところでしょうか。

照明もネオンピンクの色味が強調され、視覚的なヴォルテージも最高潮に。

まさに静から動へ、ギターを振るいながらのパフォーマンスに痺れること請け合いです。

映像が途切れても、音楽は終わらない

再び静謐な音楽へ

烈火のような間奏部を抜けると、音楽は唐突にまた静謐さを取り戻します。

空白を挟み、歌い出しの旋律を今度はギターがなぞっていくのです。

アコースティックサウンドを、優しいシンセサイザーの和音が支え…。

そのままどこか寂しげに、名残惜しそうに幕を閉じます。

フレーズを弾き切った先、最後に奏される2音は主音に解決せず、残される余韻。

それは画面がブラックアウトしてなお、音楽だけが続いていくかのように。

最後まで歌うことはない

なぜ、最後は歌うのをやめてしまったのか。

言いたいことはそれだけだと、音楽で語りかけているのでしょうか。

あるいは、伝えることを諦めてしまったのでしょうか。

何かを訴えかけるような残滓に意味を求めてしまう、そんなラストです。

まとめ

MIYAVI【We Can't Stop It(Rewind)】スタジオセッション映像を徹底解説!の画像

今回は『We Can't Stop It(Rewind)』スタジオセッションの模様について、楽曲の内容にもふれながら解説してきました。

構造は全体を通して、非常にシンプルだと思います。

スタジオセッションということで、映像もまた然り。

ただし、そのシンプルさが一筋縄でいかないところが「サムライギタリスト」たる彼の大きな魅力です。

そういえば、全体像が見えてきたところで気づくのは、MIYAVIの大きな特徴のひとつである「スラップ奏法」のこと。

ピックを用いた一般的な奏法と異なり、爪ではじくように演奏することをいいます。

サウンドもさることながら映像からも、スラップ奏法がふんだんに使用されている…という印象はありません。

よく聴けば、聴かせどころのフレーズには、弦が指板に当たる独特の音が散見されるのですが…。

むしろ、スラップの音色に依拠しない彼の新たな側面が、そこにはあるように思えます。

あえて技巧的でなく、これほどまでに削ぎ落としたシンプルな楽曲に挑むこと。

そんな彼のアーティストとしての強い意志が、画面越しに伝わるような仕上がりです。

ぜひ、何度もループしてご覧いただきたいセッションになっていますよ!

ちなみに、彼の情報についてもっと知りたい方は、こちらを参考に。

「サムライギタリスト」として知られ、世界を股にかけて活躍するMIYAVI。そのデビューまでの意外な軌跡と唯一無二と称賛されるギター奏法、使用ギターなどについてまとめてご紹介します。