遠くへ霞んでいく想いの粒を
探さぬように
出典: ウタカタ/作詞:天野月子 作曲:天野月子
泡沫が弾けた水の粒のように、遠くへ霞んでいく想い。
それが向かう先はあなたのいる場所なのでしょう。
わたしが向かうことのできないあなたの居場所。
わたし自身は、風に乗り霞んでいく小さな粒のようにあなたの元に向かうことができません。
あなたを想う、その想いを断ち切ろうとする意思が垣間見えます。
帰る場所のない理由と意味
光あふれる先に帰る場所はない
光溢れる 出口の先へ
舵手にした方舟は漕ぎ出す
封じ込めていく 落とし込んでく
帰る場所などここにはないから
出典: ウタカタ/作詞:天野月子 作曲:天野月子
畳み掛けるように歌う中盤。
光溢れる出口、という表現は本来ポジティブなイメージを感じさせるもののはずです。
けれど歌う声は切実で辛さを感じるほど。
わたしがあなたと離れて進む未来、それは客観的に見れば明るいものなのでしょう。
例えば社会的な成功など、そうした未来に向かっていくところなのかもしれません。
ですがそこにあなたがいない以上、それはわたしの帰る場所ではないのです。
今ひとりでいるここも同じ。
わたしはあなたの記憶を深く沈めながら、前へと進むほかありません。
帰る場所はどこにもないと知りながら
光溢れる 出口の向こう
舵手にした方舟は漕ぎ出す
封じ込めていく 落とし込んでく
帰る場所などありはしない
出典: ウタカタ/作詞:天野月子 作曲:天野月子
同じ歌詞を繰り返し、畳み掛ける一節。
「箱舟」ではあなたとわたしで共に作ったもの。
その方舟を、今のわたしはひとり舵を手に漕ぎ出します。
祈りを繰り返すようにあなたの記憶を深く沈めて。
けれどわたしは気づいているのでしょう。
わたしが帰る場所はあなたのいる場所。
そして、わたしはもうあなたと会うことはできない。
この先一見明るい未来へと漕ぎ出したとしても、そこにあなたはいません。
だからこそ、わたしはもうどこにも帰る場所はないのです。
選ばなかったあなたのそばへ
再び出会えるなら
一からわたしを見初めて欲しい
あなたを沈めていく虚の淵
ウタカタ揺れる
出典: ウタカタ/作詞:天野月子 作曲:天野月子
繰り返すサビの後、わたしが祈るのは再会のこと。
一から見初めるという表現は生まれ変わることを想起させます。
おそらく、この生命の続く間に再会することはできない。
だとすれば生まれ変わってあなたともう一度出会いたいと願うのです。
別の生命として生まれ変わり、今のわたしと別の存在になってあなたと出会った時。
そのときにはわたしを一から見つけ出し、愛してほしいと願う。
どんな姿になっていてもあなたに探し出してほしいという、切なる願いが伝わってきます。
愛する相手と永久に共にいることはとても難しいことです。
どちらかの死によって離れ離れになってしまうこと。
そして目標や夢が違うために、どうしても別れなくてはならないこともあるでしょう。
ウタカタで描かれているのはそうした別れのひとつです。
ひとつの目標を叶えるために、愛する大切な人と離れなくてはならない。
その道を選んだ先には明るい未来が待っていることもあるでしょう。
けれど常に、目標ではなく大切な人を選んでいたらという想いは消えない。
帰る場所を失い、大切な記憶を奥深くに沈めて。
それでも前に進まなくてはならないときは、この一曲を胸に灯してみてください。
後悔も苦しみも共に分け合うことができる、そんな一曲となるはずです。
天野月子の名曲をチェック!
美しい世界観と情感豊かな歌声で胸を震わせてくれる天野月子。
この「ウタカタ」につながる物語のひとつが「箱庭~ミニチュアガーデン~」です。
美しく激しい想いの伝わる名曲を徹底解説していますので、是非チェックしてみてください。
また、天野月子といえばホラーゲーム「零」シリーズとのタイアップも有名です。
その中でも「零~刺青の聲~」の主題歌「聲」。
そしてリメイクもされた「零~紅い蝶~」の主題歌「蝶」。
この二曲の歌詞も考察しています。
こちらもチェックして、天野月子の深く美しい世界に浸ってみてください。
天野月子【箱庭 ~ミニチュアガーデン~】歌詞の意味解釈!あなたへの想いとは?閉じた心が開く瞬間に迫る - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
神秘性を持つ女性アーティスト天野月子(現在は天野月)のデビューシングル『箱庭~ミニチュアガーデン~』の不可思議ともいえる歌詞を深掘りします。どうやら恋愛に対する女性の深層心理に関わることを歌っているのでは?と思えてくる歌詞です。