あなたと逢った その日から
恋の奴隷に なりました
あなたの膝に からみつく
小犬のように
だからいつも そばにおいてね
邪魔しないから
悪い時は どうぞぶってね
あなた好みの あなた好みの
女になりたい
出典: 恋の奴隷/作詞:なかにし礼 作曲:鈴木邦彦
最初の歌詞からもう完全に一目惚れの状態です。
彼と出逢ってしまった彼女の身も心も捧げたいという焦がれるような気持ちを”奴隷”と表現しているのですね。
もちろん小犬になりたいわけではありませんが、ペットのようにいつも彼のそばにいたいのです。
邪魔にならないようにしたいのは、彼がつれない態度を取っているからでしょうか。
逢ったばかりで今のところ片想いなのかもしれません。
続く歌詞はさらに強烈で、ぶたれてもかまわないとまで彼女は考えています。
何をされても何があってもいいのでとにかく彼に愛されたい。
もう可愛らしいを通り越しているような感じですが、なかにし礼も思い切った歌詞を書いたなと思います。
こんな彼女に愛された彼はどんな人なのでしょう。
この子はどうも俺のことが好きみたいだからちょっと意地悪してやろう、くらいの気持ちなのでしょうか。
俺様体質の男を好きになる女性がとんでもなく可愛らしい人だったら、もてない男性はため息をつくだけです。
一途な愛は相手任せ
恋をしている自分が好き?
あなたを知った その日から
恋の奴隷に なりました
右と言われりゃ 右むいて
とても幸せ
影のように ついてゆくわ
気にしないでね
好きな時に 思い出してね
あなた好みの あなた好みの
女になりたい
出典: 恋の奴隷/作詞:なかにし礼 作曲:鈴木邦彦
右と言われたら右、左と言われたらもちろん左で3歩下がって彼のあとを歩く女性。
なかなか見かけなくなったというよりは、絶滅危惧種なのかもしれません。
それでも幸せな彼女は彼がどんな態度を取ろうが何と言おうが気にしないのです。
本当は気にしないわけがないと思うのですが、あくまで彼女は謙虚で控えめです。
むしろ恋をしている自分が幸せで、愛してもらうことは二の次なのでしょうか。
こんな愛の形もあるとすれば、彼の立場もちょっと変わってきます。
自分のことを好きだと思っていたあの子が恋をしている自分自身が好きなだけだったら…。
だけどこの歌ではそうではないようです。
あくまで彼女は大好きな彼が望むとおりの女性になりたいみたいですね。
そんな彼女に愛される彼はやはり幸せです。
あるときから一気に惜しみない愛情を注ぐようになるのかもしれません。
何もかも自分に委ねようとする彼女にベタ惚れしてしまうのではないでしょうか。
そうなれば一方的で今のところは報われない愛もお釣りがついて彼女にかえってくるでしょう。
すべてを説明しない なかにし礼
想像する余地がある歌詞
あなただけに 言われたいの
可愛い奴と
好きなように 私をかえて
あなた好みの あなた好みの
女になりたい
出典: 恋の奴隷/作詞:なかにし礼 作曲:鈴木邦彦
最後のサビの部分でも彼女はひたすら彼が望む女性になろうとしています。
なんでも思い通りになる女性が俺のことを好きみたいだ…。
こうなったらもうあれこれ注文を付けて自分好みの女性になってもらうべきなのでしょうか。
電話をしたらすぐに出てほしい。
こういう服を着てデートに来てほしい。
食事は自分の好物を美味しく作ってほしい…。
注文をつけだしたらきりがありません。
昭和の頑固親父みたいに結婚したら「メシ」「風呂」「寝る」だけではあまりに可哀想です。
それでもこれは昭和歌謡の世界。
切ないくらいに好きになってもらいたいという可愛くいじらしい想いを奥村チヨがあの声で歌うのです。
歌詞の中に男性のことは一切描かれていません。
あなたならどうしたいのか、自分で想像してくださいとなかにし礼は言いたかったのかもしれませんね。
すべてを説明せずに考える余地を持たせるのも作詞家の腕だと思います。
芸能界引退を宣言した奥村チヨ
奥村チヨは2018年に芸能界からの引退を宣言しました。
50年以上に渡る歌手としての活動に終止符を打つことを決心したのです。
デビューから10年ほど毎日の睡眠時間が2時間くらいだったそうで、売れっ子ならではの忙しさだったのですね。
「恋の奴隷」のあとにも従来のイメージを覆す「終着駅」をヒットさせました。
作曲したのはその後彼女のご主人となる浜圭介で、八代亜紀の「舟歌」など多くのヒット曲を書いた人です。
高校生だった彼女を見出したのは東芝のディレクターで「上を向いて歩こう」の坂本九らを担当した人でした。
たくさんの才能ある人達との出逢いがあって彼女はデビューして数々のヒット曲を歌うことができたのです。
昭和と平成を歌手として長い時間を過ごしてきた「チヨちゃん」は、幸せだったのではないでしょうか。
なかにし礼作詞のヒット曲
ザ・ピーナッツ「恋のフーガ」
なかにし礼が作詞したヒット曲の記事をOTOKAKEからご紹介しておきます。
ザ・ピーナッツは双子の女性デュオで、東宝の映画『モスラ対ゴジラ』にも出演していました。
歌唱力のある双子がハモる姿は素敵でしたが、「恋のフーガ」などのヒット曲が有名です。
この曲の歌詞について「フーガ」の意味とともに解説されていますので、是非読んでみてくださいね。
ザ・ピーナッツ【恋のフーガ】歌詞と曲名に込められた意味を紐解く…曲とギャップがある別れの景色が切ない - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
双子で一卵性双生児のザ・ピーナッツが歌う『恋のフーガ』。曲とギャップがある別れの景色とは?タイトルにある「フーガ」って何?今回はこの曲のタイトルと歌詞を徹底解説します。