順調なデビューと挫折
才能は情緒をかき乱す?
最初に聴いた安全地帯の曲は1983年に大ヒットした「ワインレッドの心」です。
井上陽水のバックバンドを務めるくらいですから確かな演奏技術をもったバンドでした。
ボーカルも上手い人でなんとなく井上陽水の曲だろうと思っていたら、作曲したのは玉置浩二だったのです。
ここから彼らの快進撃が始まるわけですが、フロントマンの玉置浩二のソロ活動も活発になっていきました。
才能溢れる人ですからそうなるのが自然なことなのでしょう。
ソロとしての活動も順調だったように記憶しています。
ところが2010年に安全地帯として行ったライブでは彼の体調がよくなかったらしく事件が起きてしまいました。
歌詞を忘れて演奏を中断したり観客と口論になったり、大荒れのライブは途中で中止になってしまったのです。
仕事やプライベートで色々なことがあって情緒不安定だったのでしょうが、プロとしては如何なものでしょうか。
それでもその後は何回目かの結婚をして精神的にも落ち着いてきたのか見事に復活。
周りも放っておかないでしょうし彼自身の才能も出口を探していたのでしょうね。
アルバムのリリースやライブ、テレビ出演など玉置浩二の名前がクローズアップされる機会が増えてきました。
ファンも安心して彼の歌声を聴くことができるようになったのです。
ミュージシャンに限ったことではありませんが、才能は情緒をかき乱すことがあるのかもしれません。
名曲「しあわせのランプ」
静かな曲で発揮される歌唱力
「しあわせのランプ」が最初に収録されたのは1997年に発売されたソロアルバム『JUNK LAND』でした。
その後シングルカットされ別のアルバムにも再度収録されたりしていますが、それだけ愛着があるのでしょう。
アコースティックギターの弾き語りがよく似合う静かで暖かい曲です。
こういうゆっくりとしたテンポの曲でこそ玉置浩二の歌の上手さは最大限発揮されるのではないでしょうか。
ギターも難しいことはやっていませんがひとつひとつの音を大事に弾いているのがよく分かります。
心を込めた弾き語りが胸に染みる「しあわせのランプ」とはどんな内容の曲なのでしょうか。
心を癒やす優しい歌声
そっと寄り添う優しいメロディー
しあわせになるために
生まれてきたんだから
好きな人と一緒にいなさい
大切なことなんか
わかってくるんだから
好きなことをやっていきなさい
出典: しあわせのランプ/作詞:玉置浩二/須藤晃 作曲:玉置浩二
彼の優しい歌声で始まるこの曲に一瞬で引き込まれてしまいそうです。
誰もが生きているだけで、楽しいことだけではなくて辛いことや悲しいことも経験するでしょう。
頑張っていても自然に生きようとしても、どんな場所で何をしていようとです。
どう生きるべきか悩んでいるときに掛けてもらいたい言葉が最初の歌詞に込められています。
好きな人や好きなこと、そして大切なこと。
どれも幸福になるために必要だと分かっていても現実は厳しく、自分の思い通りにならないことが多いものです。
恋や人生に悩んでいるときにそっと背中を押してもらえたらどんなに嬉しいでしょう。
我慢するべきか好きなことをやるべきか悩んでいるときも同じです。
苦しいときに誰かに助けてもらいたいのはみな同じだと思います。
普段元気な人も強気な人も、おとなしくて真面目な人もそうなのです。
肩をポンと叩いて「頑張れよ!」と元気づけるのではなくて優しくそっと寄り添ってくれる。
そんなイメージのメロディーに玉置浩二の優しい歌声が絶妙にマッチしています。
どんなときに空を見上げる?
包み込むような優しさ
それでもどうしても
やりきれなくなった時は
この空を見上げて
やさしかった頃のこと 思って
なつかしくなったら
しあわせだって言って笑いなさい
出典: しあわせのランプ/作詞:玉置浩二/須藤晃 作曲:玉置浩二
そっと寄り添い背中を押すだけではなくて、慰め勇気づけてくれるパートです。
この曲は出だしの部分からそうですが、母親が子供に接しているような感じがします。
もしかしたら彼自身の母親との体験からこういう詞を書いたのかもしれませんね。
傷ついた心を包み込むような優しさを感じます。
人間苦しいときはどうしても下を向いてしまうので、そんなことではダメですよと言われているみたいです。
そんなときこそ顔を上げなさいと励ましてくれるのは誰なのでしょうか。
両親や友人、そして恋人。
そういう人が身近にいればそれだけでもしあわせですが苦しいときは周りが見えないものです。
空の向こうには自分が小さかった頃のことが見えるかもしれません。
何の悩みもなく無邪気に笑っていたあの頃です。
思い出の中の自分がしあわせだったら、少しだけでも笑顔に戻れるでしょう。
悩み多いときこそちょっと立ち止まって周りを見たり昔を思い出してみたりするのも大切だと思います。
そんなきっかけを与えてくれる歌詞ではないでしょうか。
最後の行の”しあわせ”と歌うところには、玉置浩二の願いが込められているように感じます。