内面の海へ潜る

気が付けば朝日が世界を照らしている

苦しまないならば 伝わらないからさ
夜明けまで潜る 無様でいたいの

出典: のめりこめ、震えろ。/作詞:小原綾斗 作曲:小原綾斗

静寂の中、うねるようなベースラインを縫うように奏でられるAAAMYYYの音響が耽美なAメロ。

そこで表現されるのは彼らが日々のめりこむ音楽制作の情景です。

世界に広がる「異物」を丁寧に拾い集め自らの血肉にしていくこと。

そこに見えた世界を音で表現するという作業は困難を極めます。

夜毎作業に没頭した末、眼前には眩い朝日が広がっている...。

真の芸術家にとってこのような自身の精神世界の内側の探求は必須なのでしょう

産みの苦しみといえば分かりやすいかもしれません。

しかしそんな困難も作品が完成した瞬間の打ち震えるような快感の前では些細なことなのです。

モハメド・アリのように華麗に泳ぎましょう

Tempalay【のめりこめ、震えろ。】歌詞解説!「のめりこむ」のは一体何?独特の世界観を感じようの画像

蝶のように舞い蜂のように刺す
身体が一辺倒に砕け落ちる
泳ぎましょう 鮮やかにゆれて

出典: のめりこめ、震えろ。/作詞:小原綾斗 作曲:小原綾斗

こちらは1分55秒頃から展開される2度目のAメロの歌詞です。

人生の大半の時間を音楽制作に捧げるTempalayのストイックな姿勢。

その姿は一流のアスリートを彷彿とさせます。

ここで引用されるのは伝説のボクサーといわれたモハメド・アリを例えた有名な一節です。

アリの華麗な足さばきは水の中を流麗に泳ぎ回る魚のようでした。

Tempalayも彼の姿に習い自身の内面世界へ深く潜り込んでいきます。

小原氏とAAAMYYYの奏でる美しくも儚い繊細なメロディ。

体内に溜め込まれた「毒」は音の粒子に乗り世界の景色を塗り替えていきます

まるで彼らの生命の輝きが世界に溶け込んでしまったかのように...。

千年紀最大の表現とは?

Tempalayのバンドとしての強み

Tempalay【のめりこめ、震えろ。】歌詞解説!「のめりこむ」のは一体何?独特の世界観を感じようの画像

わたしたちの中の色 燃やしては消えてく
話したい言葉の意図 探して忘れてゆく

出典: のめりこめ、震えろ。/作詞:小原綾斗 作曲:小原綾斗

静寂に包まれたAメロから一気に旋律が加速してゆくBメロ。

より直情的な歌詞が目立ち始める瞬間です。

1970年代に隆盛を極めた極彩色なサイケデリック・ムーブメント

方法論は違えど、Tempalayの奏でる世界観はネオ・サイケと評されます

世界の異物を脳内に集め込み、音の粒子に乗せたものが『のめりこめ、震えろ。』なのです。

バンドの強みとはメンバーが集うことによる作曲者の意図した方向性からの逸脱だといえるでしょう。

岡本太郎へ捧げる愛の言葉

Tempalay【のめりこめ、震えろ。】歌詞解説!「のめりこむ」のは一体何?独特の世界観を感じようの画像

つまりこう 神髄くらっちゃってどうしようもないよ
その目を一心不乱かっ開いた訴えも
教えてよ 千年紀最大くらいの表現を
許せよ もう戻れないから見失うなんてこともないよ

出典: のめりこめ、震えろ。/作詞:小原綾斗 作曲:小原綾斗

個性あふれる3人が集うことで芸術表現を極めようとするTempalay。

だからこそ岡本太郎のような孤独な芸術家の凄みが分かるのかもしれません。

最後のサビは明らかに岡本太郎への愛の言葉が綴られています

千年紀とは1000年、10世紀を指す言葉です。

言葉や人種の壁どころか、文明の変化にも負けることなく残り続けるもの

それこそが真の芸術だとTempalayは考えています。

短くも儚い生涯だろうと残された作品は何世紀の時を経ても多くの人々の心を震わし続けるのです。

誰も聴いたことのない音を求めて

Tempalay【のめりこめ、震えろ。】歌詞解説!「のめりこむ」のは一体何?独特の世界観を感じようの画像