平井大が手掛ける前向きな別れの歌
南国気質を思わせる平井大の生き様には共感を覚え、羨ましさを感じる人もいるでしょう。
ウクレレ奏者でもあり、彼の奏でるその音色からは、何物にも縛られない自由な雰囲気も感じられます。
そんな彼らしい「失恋ソング」ともいえるのが、今回の【A Song for You】ではないでしょうか。
彼の3thアルバムである「Slow&Easy」に収録されている1曲です。
1組の男女が別れを迎える時は、心を引き裂くような悲しみが待っています。
しかし、いつもがいつも、そうだとも限りませんね。
平井大の手掛けるこの【A Song for You】はまさに、「そうだと限らない」別れの歌だといえます。
本来は悲しいはずの別れになぜ、前向きさを見出せるのでしょう。
夏や海が似合う明るい平井らしいこの1曲の、歌詞の意味に迫っていきたいと思います。
ポジティブなフレーズから始まる「キミへの歌」
流れる涙は悲しみじゃなくて ありがとうがこぼれるから
キミに出会えて幸せでした そうココロから言えるから
出典: A Song for You/作詞:平井大・EIGO 作曲:平井大・EIGO
失恋ソングといえば、相手への恨みや未練についても歌われることが多いと思います。
しかしこの【A Song for You】には、そんな暗いフレーズは皆無です。
冒頭の歌詞から、涙を流していることは分かります。
ただしそれは悲しいから流れるものではなく、「ありがとう」という感謝の気持ちが涙となったものです。
悲しみではなく感謝を含んだ涙が流れるのは、「キミ」との出会いが素晴らしかったからに他なりません。
心の底からそう思えるほど、この曲の主人公は相手のことを愛していたのでしょう。
互いを嫌って別れるとは限らない
冒頭から、明るい前向きな歌詞でこの曲はスタートしました。
好きな人との別れであっても、この曲では決して暗い影を落とすものではありません。
失恋は間違いなく悲しいけれど、こういう終わり方ができるのなら受け入れられるかも…。
そんな風に思わせてくれる歌詞が、次々に現れます。
離れる時にこそ想いは募る
少し背負い過ぎてしまったのかもね
今更伝えたい言葉が溢れて
通り雨が去った後の車道はやけにキレイで
キラキラと 輝いてた
出典: A Song for You/作詞:平井大・EIGO 作曲:平井大・EIGO
本格的な曲の始まりでは、まずは別れのシーンが具体的に描かれています。
関係を解消しようとしている2人は、どこかのカフェにでも席を取っているのでしょうか。
別れるその時になって相手に言いたいことがあり過ぎて、そのせいで言葉に詰まる様子が窺えます。
それはもちろん恨み言なんかじゃなく、感謝を示す言葉だと思います。
言いたいことを半分も言えそうにないまま、ふと、雨が上がったばかりの道を見ているのでしょう。
降ったばかりの雨はまだ乾かずにそこにあって、再び顔を出した太陽に照らされて輝きます。
それをふと、キレイだなと見つめてしまうのです。
そんな様子に、妙にリアリティを感じませんか。
別れのことで頭はいっぱいになっているのでしょうが、逆に麻痺してしまっている部分もあるんだと思います。
だからこそ、ふと見た些細な光景に心動かされてしまったりもするのです。
最後だからこそ精一杯の笑顔
別れ際に一番の笑顔で泣いて
不器用な僕らなりの愛のカタチで
小さく降ってくれたその手がやけに愛おしくて
「サヨナラ」を言えないまま
出典: A Song for You/作詞:平井大・EIGO 作曲:平井大・EIGO
不器用さが原因で、恋愛が終わってしまうこともあるでしょう。
そこに必ずしも悪意があるとは限らないので、別れはなおさら切ないものになります。
この楽曲の中の「僕ら」もまた、そんなカップルだったようです。
いざ別れる時になって一番の笑顔だなんて、それこそ不器用さが際立つ気がします。
別れ際に「サヨナラ」を言えないのは、その言葉が別れを決定づけてしまうからではないでしょうか。
終わるんだと分かってはいても、心の深い部分ではそれを認めたくないのだと思います。
今後また恋することはあっても、心に残しておきたい関係だったのかもしれません。
悲しいからって泣くわけじゃない
流れる涙は悲しみじゃなくて ありがとうがこぼれるから
キミに出会えて幸せでした そうココロから言えるから
誰より近くでキミを 感じれた日々が僕の
消える事のないプライドだって思える今なら
出典: A Song for You/作詞:平井大・EIGO 作曲:平井大・EIGO
涙は悲しい時にだけでなく、嬉しい時にも流れます。
ただしそれともまた違うのが、【A Song for You】の中で流される涙だと思います。