ミセスの楽曲の中で一番壮大な「鯨の唄」
大森元貴の歌詞の到達点
2013年結成の若いバンドとして新時代の音楽シーンを担うバンドMrs. GREEN APPLE。
いまやテレビ、ラジオで聴かない日はないくらいの人気を誇ります。
そんな彼らが2017年に発表したセカンド・アルバム「Mrs. GREEN APPLE」の中の「鯨の唄」。
この曲は彼らの楽曲の中でも一番壮大な世界観を伴った作品になりました。
元々、作詞作曲を担う大森元貴による作詞はポップ・ロックにしてはどこか難解な面があります。
文学的、哲学的な表現などが多彩な展開をしているのです。
「鯨の唄」はそんな大森元貴による作詞のひとつの到達点ではないでしょうか。
鯨が仲間同士で会話をすることは有名です。
お互いの状況を唄うように会話して呼応し合うような様子。
大森元貴が描きたかったものも仲間同士の助け合いや、そのための呼応にあるようです。
聴く者を圧倒する壮大な世界観の謎をひとつひとつ丁寧に紐解いてみましょう。
アイデンティティーの再確立で景色が変わる
不調な状況を乗り越える
散らばっちまったアイデンティティーが
気づかぬうちに 形になった
光を纏った水しぶきが
時間をかけて落ちるのを見た
出典: 鯨の唄/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
歌い出しの歌詞です。
彼のアイデンティティーはどこか歪に崩壊していた時期があったよう。
自分自身に自信を失くし、自分の才能などに疑いが出てくるとアイデンティティーは脆く崩れ去ります。
そうしたある種の不調な状況が、いつの間にか改善されたのだと歌うのです。
アイデンティティーが再び確立されると、日々の見る景色まで生き返って見えます。
生命力の充満。
私たちは奇跡的に美しい世界に生きているのだと思い返されます。
「鯨の唄」と名付けられた理由
自分の居場所を伝えあうこと
何気ない日々の夜に
ひょんなことから迷いこんだ
見慣れたものは 何一つ無いな
「どうやって僕の居場所に気づかせよう」
出典: 鯨の唄/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
Bメロの歌詞です。
いつも意識して過ごしていた日々の状況とは少し違った風景が見えてきました。
大海原に飛び込んで景色の違いに畏れを抱くような感じ。
最後のラインはこの歌が「鯨の唄」と名付けられた理由を示すようです。
「どうやって僕の居場所に気づかせよう」
出典: 鯨の唄/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
鯨はそれぞれの個体が自分の居場所を鳴き声で仲間に知らせたりするのでしょう。
鯨の鳴き声はまるで海の中で唄っているように響きます。
自身の居場所を知らせて仲間に気づいてもらうことはとても積極的な習慣です。