これまで「君」との距離を縮めることに必死だった主人公に心境の変化が訪れます。
いつの日か、二人の間の距離ごと抱きしめられる時が来る。
だから、無理をして距離を縮めようとしなくてもいい。
この距離も含めて私たちの恋愛なのだから、この距離ごと愛そうと自分に言い聞かせています。
もうすぐ、本当にもうすぐ、私たちの本当の恋愛が始まる。
距離ごと愛すと決めたけれど、本当はすぐ側にいたい。
好きな人とはできるだけ側にいたい。
少し無理をする覚悟して落ちた恋とは言えど、それが素直で等身大の気持ちなのでしょう。
繊細で脆い愛すべき「君」
儚げな「君」にさらに惹かれてゆく心
ひとことでこんなにも傷つく君は
孤独を教えてくれる
出典: FINAL DISTANCE/作詞:Utada Hikaru 作曲:Utada Hikaru
日常の何気ないひとこと、さりげないひとこと。
そのひとことで「こんなにも傷つく君」。
好きな人が傷つく姿は自分の事のようにつらく切ないものです。
きっと自分のいない場所でも、同じように様々な言葉によって傷を負っている繊細な「君」。
そんな君の姿は孤独とは何か、ということを言葉にせずとも教えてくれています。
孤独を背負いながら生きる「君」の姿は勇気になると共に、一層恋心を加速させます。
「君」と踏み出す未知の自分
無理をしてでも「君」を守りたい
守れない時 keep on trying baby
約束通りじゃないけどtrust me
無理はしない主義でも
君とならしてみてもいいよ
出典: FINAL DISTANCE/作詞:Utada Hikaru 作曲:Utada Hikaru
他の人にはなんということのない事で傷ついてしまう感受性の強い「君」。
いつも一緒にいられるわけではないから、いつも守ってはあげられないもどかしさを感じます。
距離は縮められる、ずっと一緒にいられるという約束とは少し違ってしまうけど、私の気持ちは信じていてほしい。
君を守るためにできることは何でもしてあげたい。
できるだけ傷つきやすい君の側にいて、その傷を癒したい。
無理はしない主義だけれど、君のためならしてみてもいい。
これまでの自分ではできなかったことも、君の為なら頑張ってみたい。
「君」への献身的とも言うべき愛情が溢れています。
お互いを見つめ合う時
I wanna be with you now
二人でdistance見つめて
今なら間に合うから
We can start over
言葉で伝えたい
出典: FINAL DISTANCE/作詞:Utada Hikaru 作曲:Utada Hikaru
二人の間に横たわる距離。
その距離を縮めようともがいて、受け入れようともがいて、二人なりにその距離と向かい合ってきました。
あらためて今、二人の”distance”、距離を二人で見つめ直します。
繰り返される「今なら間に合う」というフレーズ。
言葉とは裏腹に今からでも間に合うのだろうか、もう間に合わないのではないか、という不安を感じています。
それでも、今からでも遅くはない。ここから始めよう。
少しの言葉で傷ついてしまう「君」だけれど、勇気を出して言葉で伝えたい。
これからの二人のこと、二人の距離のこと、そしてやはり「君」を愛しているという事を。
二人は真摯にお互いを見つめ、お互いと向き合います。
二人が出した"distance"に対する答えは
”distance”を抱きしめて君と生きる
I wanna be with you now
そのうちにdistanceも抱きしめられるようになれるよ
We should stay together
やっぱりI need to be with you
出典: FINAL DISTANCE/作詞:Utada Hikaru 作曲:Utada Hikaru
二人の間の距離と向きあい続けてきた二人。
二人の距離と向き合うことは、お互いの関係性と向き合う事そのものであったのでしょう。
近付きすぎたり、離れすぎたり、恋愛における相手との距離の取り方は誰にとってもデリケートな問題です。
感受性が強く繊細な「君」に近付きたいけれど、傷つけるのがこわい。
それでも君の側で君を守ることができるなら、少しくらい無理をしたっていい。
そんな葛藤と覚悟のなかで揺れ動いてきた恋心。
最終的に、「君」との距離を「抱きしめられるようになれる」と考えるようになりました。
近付けるのでも、遠ざけるのでもない。受け入れるのでも拒否するのでもない。
「抱きしめる」というのはありのままを愛するということなのではないでしょうか?
それは「君」との距離の問題だけではなく、二人の関係性全般に対する答えです。
うまくいかないときも、すれ違うときも、お互いを責めたり無理に何かを変えるのではなくその状況ごと抱きしめる。
それが二人の愛、”distance”の在り方なのでしょう。