生まれた時から音楽家
7歳で家族ユニット結成
敏腕プロデューサーを父に、一世を風靡した演歌(怨歌)歌手を母に持ちながら、今思うと順風満帆とは言い切れない公私生活を送っていたように思う宇多田ヒカル。
日本で「宇多田ヒカル」としてデビューしたのは、1998年12月。
出自や経歴などがマスメディアで大きく取り上げられたこともあり、社会現象にまでなりましたね。
当時はまだ15歳の彼女でしたが、その堂々たる振る舞いは周囲を驚かせたものです。
実は宇多田ヒカルは、7歳の時に父母と3人で「U3(3は上付き)」という家族ユニットを結成し、3年後に日本でデビューしていました。
1995年には、父親の代わりにボーカルとなり、「cubic U」名義でヨーロッパやアメリカで、インディーズのレーベルから楽曲を発売しています。
あまり知られていませんが、日本でもその翌年に、母親とのユニットでCDを発売しました。
「人間活動」を経て
宇多田ヒカルと言えば、2010年から「人間活動」と称して、事実上の活動休止を発表しました。
あの時は、文字通り日本中が息を呑んだのではないでしょうか。
それほどの逸材だった宇多田ヒカルが、これからどうなってしまうのかと、心配の声も多かったでしょう。
ツイッター上などで、本人の言葉でいろいろと語られていましたから、不安を煽るような根拠のない噂や、今で言うフェイクニュースのような類のものが出なかったことは幸いです。
1度は離婚も経験した彼女でしたが、今ではイタリア人男性と結婚し、男児の母として幸せなようですね。
ただ、その前に母親が亡くなり、その時にはより一層、さまざまなことを考えさせられたようでした。
また、「人間活動」中の2011年に日本で起こった、東日本大震災について心を痛めていて、義援金を送ったり、人生初となる献血も経験したとか。
音楽以外のさまざまなことに関わり、考え、行動したことが「人間活動」として実を結び、2016年にNHKの朝ドラの主題歌を担当することになって、4月4日からアーティスト活動を再開させました。
そして待ちに待った2016年9月に、宇多田ヒカルの6枚目に当たるアルバム「Fantôme(ファントーム)」がリリースされたのです。
最新のアルバムから
「Fantôme」はフランス語で「気配」
このアルバムは、亡くなった母親に捧げる作品として制作されたのだそうです。
母親から始まった自分の存在なのだから、その母親の存在を「気配」として感じられればいい、とのこと。
このアルバムは日本国内のチャートを総ナメにし、多くの音楽評論家からも高い評価を得ています。
作品全体には「生と死の匂い」がしていると言われ、特に「死」の方が濃密に扱われているのに、何故か「心地良く美しいポップス」になっているとか。
自身も結婚・出産をして母親となったせいか、亡くなった母親を思いながらも、自分も母親として穏やかに優しく歌い上げているところも重要です。
また、あくまで作品内で母の死に言及したことや、LGBTコミュニティへの支持を表明したという芸術的な手腕には、多くの専門家も敬意を表して賞賛したそうです。
「道」
最新アルバムを牽引する楽曲
宇多田ヒカル本人が、最新アルバム「Fantôme」の1曲目に収録した「道」という楽曲について、「アルバムのメインテーマを担う曲」と位置づけているといいます。
待ちに待った最新アルバムのタイトルを知ったファンが、「もしかして暗いアルバム?」と思ってしまわないように、明るく元気よく、「行きますよー!」という感じでスタートさせたかったのだとか。
歌詞では、「言いたかったことが言えてるスッキリできる曲」とのコメントも。
シングル曲ではないものの、アルバム発売前に先行配信され、サントリー天然水「水の山行ってきた南アルプス」篇のCFソングにもなりました。
このCMでは、約6年振りに宇多田ヒカル本人が出演して、さらに大きな話題になりましたね。
「見れなかった!」という方は、こちらの動画をご覧ください♪

サントリー天然水『水の山行ってきた 南アルプス』篇 60秒 サントリー CM
それでは、歌詞を見ていきましょう。
黒い波の向こうに朝の気配がする
消えない星が私の胸に輝き出す
悲しい歌もいつか懐かしい歌になる
見えない傷が私の魂彩る
出典: 道/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
冒頭から、「ああ、亡くなったお母さんのことだな」と感じさせられますね。
たとえ「見えない傷」であっても、「私の魂」を彩ってくれるほどの存在の大きさを思わせます。
転んでも起き上がる
迷ったら立ち止まる
そして問う あなたなら
こんな時どうする
出典: 道/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
もちろん、ここの「あなた」は「お母さん」でしょう。
迷ったら、ひとまず慌てず立ち止まる、という部分で考えさせられました。
無駄に慌てて歩き回らないのが、雪山での遭難でも肝心だと言いますから、まずは落ち着かなければいけませんね。
私の心の中にあなたがいる
いつ如何なる時も
一人で歩いたつもりの道でも
始まりはあなただった
It's a lonely road
But I'm not alone
そんな気分
出典: 道/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル