驚いたけどさよならじゃない
望み叶うパラレルな世界へ
明日はちょこっと違う景色描き加えていこう
出典: 猫ちぐら/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
無邪気な笑顔を浮かべていた彼女が、突然切り出した別れの言葉。
自分にはできなかった「現状を変える」行動をとった彼女に、驚きの色を隠せません。
思わず「嫌だ」と引き止めてしまいそうになるけれど、1度言ったことを曲げない彼女。
もう同じ道を歩んでいない2人だからこそ、復縁することは難しいのです。
そのため、主人公がとった行動は「パラレルワールドを想像する」こと。
これまで辿ってきた道のどこがいけなかったのか……。
どうしてこんな結末になってしまったのか……。
今までの道の中で、どこか1つが変わるだけでも現状は変わっていたはずです。
しかし、どうあがいても過去は変えることができません。
それならば、これからやってくるであろう世界に向け、小さな1歩を踏み出そう。
いつか自分の足が同じ道を辿ったとき、同じ過ちを繰り返さないように。
確かにそこに「別れ」はあった
強い決別を感じさせない歌詞
弱いのか強いのかどうだろう?
寝る前にまとめて泣いてる
心弾ませる良いメロディー
追い続けるために
出典: 猫ちぐら/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
これまで人生を共にし、結婚まで想像した彼女との別れは、主人公にとって身を割くように辛いはず。
しかし、この部分の歌詞から感じられるのは、ゆったりとした安らぎのような感情です。
これこそ、スピッツの持ち味ともいえる「あたたかさ」なのです。
彼女の前で涙を見せずにいた自分は、果たして強いといえるのか……。
それでもこらえきれなくて、寝る前に泣いてしまう自分は弱いのか……。
自問自答しながらも、決して心はどん底にいるわけではありません。
彼女が見た主人公の最後の姿は、きっとこれまでの幸せに感謝するかのように輝いていたでしょう。
感情をコントロールすることで、最後に1番良い自分の姿を見せることができた主人公。
悲しみはあれど、その別れに悔いはありません。
スピッツにとっての「良いメロディー」とは
自問自答の中で生まれた1つのメロディーこそ、スピッツの楽曲を作り出す原点。
悲しみの中でも、テンションを上げてくれる心地いいメロディーを求めて、主人公は音を口ずさみ続けます。
楽しかったり、悲しかったり、心が弾むような体験をしてこそ「良いメロディー」が生まれてきます。
誰もが自分の胸に問いかけたくなるような歌詞も、スピッツのメンバーがさまざまな経験をしてきたから。
そして、その経験の1つ1つを大切にしているからなのです。
音楽で仕事をし、音楽に生きるスピッツだからこそ、どんな時もメロディーを追い続けるしかありません。
それはアーティストだけでなく、ファンにとっても同じこと。
新型コロナウイルスの影響で音楽から離れざるを得ず、「スピッツとの別れ」を感じたファンもいました。
そんな中でも、ファンは心に残る「良いメロディー」を思い出し続けてきたのです。
別れを経験した主人公の胸中は
雨が上がった空
続いた雨も小降りになってた
お日様の位置もなんとなくわかる
寂しいけれどさよならじゃない
望み叶うパラレルな世界へ
願わくば優しい景色描き加えていこう
出典: 猫ちぐら/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
まだ晴れ渡っているわけではないけれど、悲しみが次第に癒えてきたある日。
もうすぐ希望が見えそうな、どこかスッキリとした気持ちを抱えています。
今主人公が生きている世界線では、残念ながら彼女と別れてしまう未来が待っていました。
昨日まで隣にいた存在が、今日はいない……。
それは確かに寂しいことですが、決して悲観する必要はないと気付くのです。
別れの時、彼女は「さよなら」を言いませんでした。
もう2度と会えなくなるわけではない、知り合い以上友達未満の関係が今の2人です。
今はいつか来る再会の日まで、このメロディーをあたためていくしかありません。
どんな世界を思い描く?
最後に主人公が思い描く「パラレルな世界」では、今も彼女が笑顔でそこに立っています。
こうなれたらいいな……。
こうしてあげたかったな……。
そんな後悔と願いを込め、その優しい気持ちを全てもう1つの世界線へと飛ばします。
主人公が思い描くパラレルワールドは、あたたかさで溢れた素敵な未来でした。