思い出は「キミ」と過ごした日々の記憶だけではありません。
今こうしてつないでいる手の温もりだって、今後は思い出になっていくでしょう。
しかし主人公は今、「キミ」といる時間を精一杯過ごそうとしています。
刻一刻と近づいていくお別れに、「キミ」は悲しみや寂しさを感じているのかもしれません。
主人公はその気持ちを察していますし、同じ気持ちでもあるでしょう。
そんな「キミ」を泣かせないため、1秒でも長く笑っていてほしいために手をつなぐ。
「今は一緒だよ」と安心させるために。
だから「キミ」の体温も、今後思い出になることはすっかり頭から抜けているのではないでしょうか。
これからという未来ではなく、今を全力で見つめています。
小さな夏の思い出
引き続き「キミ」との思い出を振り返ります。
一緒に過ごした日々は、どれをとっても楽しいことばかりだったのでしょう。
これからやってくるお別れを心のどこかで感じながら、今隣にいる「キミ」との時間を過ごすのです。
キミとの思い出
おひさまみたいな
女の子に出逢ったんだ
うれしいことが これから
始まりそうでわくわくしたよ
おそろいで浴衣着て
見上げた花火も
探してくれたボクの夢も
ずっと忘れないよ
出典: キミを忘れないよ/作詞:さくらももこ 作曲:亀田誠治
太陽と呼ぶと眩しくて暑い感じがしますが、「おひさま」なら温かくて優しい感じがしますね。
「キミ」はまさしく「おひさま」という言葉がぴったりなのでしょう。
最初に出てきた「ひまわり」と通じるものがあります。
彼女となら、良いことも起こりそうな予感がしたようです。
一緒に浴衣を着て花火を眺めたことや、夢を叶えるために街を走ってくれたこと。
やっとここで、「ボク」というこの歌詞の主人公が登場しました。
しかし、本当に夢を探し当てることが「うれしいこと」ではありません。
自分の小さな願いのために、親切に協力してくれたことがうれしいのでしょう。
こんなに素敵なことがあったなら、きっと忘れることはないでしょうね。
キミが離れないように手をつなごう
つないだ手のやさしさが
なつかしい記憶になると
まだ気づかない
夏の始まり
もっと手をつなごう
キミがさよなら
なんて言わないように
出典: キミを忘れないよ/作詞:さくらももこ 作曲:亀田誠治
「ボク」は今、「キミ」といるこの時間をとても大切に過ごしています。
ですからこれから大人になった時、手をつないだ感覚を懐かしいと思う日が来ることも分かっていません。
それよりも今、「キミ」がいなくなってしまわないように手をつなぐ方が大事なのです。
本当のお別れの時まで、一分でも一秒でも長く一緒にいたいと思っているのでしょう。
そして手をつなぐことで、一緒にいることを実感できる。
そうやって、思い出というものはできていくのでしょう。
ボクの宝物
もっと
手をつなごう
ボクの涙が
キミに見えないように
さあ
手をつなごう
キミの笑顔が
ボクの宝物だから
出典: キミを忘れないよ/作詞:さくらももこ 作曲:亀田誠治
お別れの時が近くなって、「ボク」もまた辛い思いを抱えています。
しかしそれで涙を流してしまっては、カッコ悪いと思ったのかもしれません。
涙を見せたら、「キミ」が心配する可能性だってあります。
手をつなぐのは涙を隠すため、辛い気持ちを紛らわすためというのもあるのでしょう。
「ボク」はなにより、「キミ」に笑っていてほしいのですから。
「キミの笑顔」が二人で一緒に過ごした中で得られた、一番大切な宝物なのですね。
「キミ」の笑顔を守ろうとする「ボク」の想い
「ボク」はアンドレアで「キミ」はまる子?
言葉を見る限り、この歌詞はアンドレア目線で歌われているようです。
一人称は「ボク」なのですから、間違いないでしょう。
であれば「キミ」とは当然、まる子です。
「涙を隠すために手をつなぐ」というのも、なんだか男らしさを感じます。
「キミ」という大切な人の笑顔を守りたいと思っている「ボク」。
アンドレアはお別れの時に、まる子に「笑ってください」と最後のお願いをします。
彼にとって、彼女の笑っている顔が一番好きだったのでしょう。
歌詞中にまる子を、「ひまわり」や「おひさま」とたとえていることからも伝わってきますね。
ひまわりもおひさまも、「明るい」というイメージがあります。
そこから転じて「素敵な笑顔」に結び付けられることも多いのです。
アンドレアから見たまる子は、ひまわりやおひさまのような女の子だったのでしょう。