「渋谷系」とは何だったのか?
小沢健二は90年代を語る上で欠かせないキーマン
小沢健二 is Comin' Back!
2017年のシングル「流動体について」発売の一報を聴いて飛び起きた世代がいます。
90年代に多感な時期を過ごした40代、50代の音楽好きにとっての小沢健二とは何だったのでしょう?
ファッションも音楽も全て最先端をゆくポップスター?
何だか知らないけどいけ好かない男?
好き嫌いは分かれたとしても誰もが小沢健二の一挙手一投足を気にしていたのが90年代です。
その背景には「渋谷系」という得体のしれぬ謎の文化圏が存在していました。
カウンターカルチャーとしての渋谷系
フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイブ、ラヴ・タンバリンズ。
いわゆる「渋谷系」と呼ばれるミュージシャンです。
彼らはカウンターカルチャーとして既存のJ-POPと一線を画すクリエイティビティを志向します。
フレンチ・ポップ、UKインディー・ロック、映画音楽等へのオマージュ。
60年代のフランス映画から抜け出してきたようなファッションなど全てが新鮮に感じられました。
ボーダーのカットソー、ベレー帽、アニエスベー、クレプスキュール、ヌーヴェル・ヴァーグ...。
ファンが彼らに近づきたくて口にしたキーワードです。
一方で当時者たる小沢健二らは「渋谷系」とカテゴライズされることに抵抗を示しました。
90年代、「渋谷系」の聖地と呼ばれた宇田川町。
HMV渋谷店を筆頭に様々なレコードショップが軒を連ねた場所です。
「渋谷系」という言葉はHMV渋谷店の「SHIBUYA’S RECOMMEND」コーナーから派生したとされています。
そこで買い物をする人々のカルチャーが総じて「渋谷系」という概念として形成されたのです。
小沢健二と「愛し愛されて生きるのさ」について考えてみる
「愛し愛されて生きるのさ」がリリースされたのは1994年。
オリコンチャートをTKプロデュース曲やZARD等のビーイング系アーティストが賑していた時代です。
まだ音楽業界がバブルの余韻の享楽に浸る中、小沢健二は不思議な存在感を持って頭角を現しました。
スタイリッシュなMV
ヌーヴェル・ヴァーグを思わせるモノクロームな映像。
アズテック・カメラのような洗練されたサウンド・メイキングと良質なメロディー。
小沢健二の紡ぐスタイリッシュな世界観は多くの同年代の若者の心を捉えてしまいました。
2ndアルバム「LIFE」収録
「愛し愛されて生きるのさ」は同年発表された2ndアルバム「LIFE」に収録されています。
「ラブリー」、「今夜はブギー・バック」を収録した大ヒットアルバムです。
生々しいバンドサウンドと華やかなオーケストレーションに彩られた普遍的なサウンド。
後に多くのフォロワーを生み出すことになる90年代の象徴的作品です。
一見すると爽やかな恋愛を描いた作品、実は...
とおり雨から始まる恋愛描写
とおり雨がコンクリートを染めてゆくのさ
僕らの心の中へも侵みこむようさ
この通りの向こう側 水をはねて誰か走る
夕方に簡単に雨が上がったその後で
お茶でも飲みに行こうなんて電話をかけて
駅からの道を行く 君の住む部屋へと急ぐ
出典: 愛し愛されて生きるのさ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二