椎名林檎【ギャンブル】歌詞解説!最後に“軽率”の一言で大どんでん返し!そうやって歩いて行きましょう!の画像

帰る場所など何処に在りましょう
動じ過ぎた
もう疲れた
愛すべき人は何処に居ましょう
都合の良い答えは知っているけど

出典: ギャンブル/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

社会の中で根無し草の主人公の心境から発せられる言葉です。

帰属する場所はどこに、愛する人は誰?

彼女は自身の本心を知りつつもそのことをひた隠します。

「負けたくない」

「悟られたくない」

そんな気持ちが滲むのです。

この箇所は曲の最後にも繰り返し歌われるサビの部分になります

手の内は不利

「ギャンブル」において動転した様子を悟られることは負けを意味すます。

勝負を降りたくなる疲れも致命的です。

「ポーカー・フェイス」という「ギャンブル」が発祥の言葉があります

自分の手の内が不利でも勝負相手に悟られまいと表情をなくす行為。

主人公はこの「ポーカー・フェイス」ができなくなったのです

勝負は決してしまったのでしょうか?

見知らぬ人の悪意に襲われる社会

現代社会の恐怖の構造

椎名林檎【ギャンブル】歌詞解説!最後に“軽率”の一言で大どんでん返し!そうやって歩いて行きましょう!の画像

中目黒駅のホームに立って居たら
誰かが急に背を押したんだ 本当さ
此の勝負に負けたら「生(イ)キテユク資格(シカク)モ無(ナ)イ」

出典: ギャンブル/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

中々、おそろしい箇所です。

実際に行われていたら犯罪ですから。

プラットフォームで背中を押される描写は中島みゆきの「ファイト!」などでも見られます

誰かの恨みを買ったのか通り魔的な人によって行われたものなのかで解釈が変わるところ。

おそらく見知らぬ人による犯行でしょう。

見知らぬ誰かからの悪意や殺意が突然襲いかかってくる

これこそ現代の恐怖の正体です

比較的に治安が良い国ではありますがニュースでは惨劇が絶えません。

主人公はこの悪意や殺意との闘いを勝負と捉えます

実際にこうした悪意に見舞われて運悪く命を落とす人が多くいるのです。

生死を賭けた勝負事を「ギャンブル」と呼んでいるのかもしれません。

環境に順応したいけれど

どうしてか抗ってしまう日々

椎名林檎【ギャンブル】歌詞解説!最後に“軽率”の一言で大どんでん返し!そうやって歩いて行きましょう!の画像

飼い馴らされた猫の眼(まなこ)で
鳴いてみようか
やってみようか
愛すべき人は何処に居ましょう
予定の調和なんて容易だけど

出典: ギャンブル/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

猫が険しく目を光らせているのは野良生活の大変さ故です。

家で飼われている幸福な猫は概ねおっとりとした目で主人を見ます。

環境こそが如何に人や動物を変えかるというよい例でしょう。  

愛する人に「猫なで声」で応えてみせようかと主人公は誘惑されます。

誰かに愛されたいという受動的な気持ちが大きい人の心の有り様です

人を愛したいという能動的な気持ちが強く出ていれば生まれなかった心の有り様。

愛する人が分からない状況は中々な不幸です

主人公がここで賭けているものの正体がそろそろ分かってきます。

おそらくそれは「愛」です

愛を賭けてしまった

「賭博者」の破滅

椎名林檎【ギャンブル】歌詞解説!最後に“軽率”の一言で大どんでん返し!そうやって歩いて行きましょう!の画像

声を出せばどなたかみえましょう
真実がない
もう歩けない
灰になれば皆喜びましょう
愛していたよ
軽率だね

出典: ギャンブル/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

愛されている自覚がない人の不幸。

おそろしい運命まで考えてしまう主人公。

愛を賭けたりせずに素直に表現できていれば避けられたはずの道。

しかし主人公は「ギャンブル」に身を投じて滅んでゆきます

ポーカー・フェイスはもう限界になりました。

装っていた冷静さが保てなくなるくらいに追い込まれる。

自分の身が焼かれて灰になれば喜ぶ人もいそうだなんて自虐で自分を苦しめます。

主人公は窮状に見舞われて最後に勝負にあってはならない一言をつい口にするのです