愛していたよ
出典: ギャンブル/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
恋心を隠し続ける勝負に昂じていた主人公にとっては痛恨のミス。
軽率な一言です。
愛は賭け事ではないのに
愛していたのは冒頭に登場した「あなた」でしょう。
愛することよりも愛されることばかりを望んで恋心をひた隠しにしてきたのです。
主人公が賭けていた愛はしかし実直な性格のものでもあった。
つい恋心の正体を表してしまう不覚。
「ギャンブル」での敗北。
しかし「ギャンブル」に負けたことでこの愛は昇華し成就されるかもしれません。
「ギャンブル」は人の身を持ち崩すことがあります。
「ギャンブル」依存症の症例は「賭博者 ドストエフスキー」などの古典文学にも現れる普遍的なもの。
「ギャンブル」ではなく素直な取引をしていれば破滅せずに済んだでしょうが賭博者は賭けずにはいられない。
賭けているものが愛であるならば尚更、最初から素直さが必要でした。
しかし金銭ではなく人生の何かしらを賭けてしまうタイプの賭博者は一定数いるものです。
生活のいろいろな物事を勝負事として捉えてしまう。
賭博者が金銭だけでやり取りしている場合は手元のお金がなくなればゲームは終わりです。
しかし人生を賭けてしまう勝負では負け際の終りが見えずに破滅してゆきます。
灰になることが喜ばれるような人間になってしまうでしょう。
愛は勝負事に見立てて賭けたりせずに、素直に取引・やり取りするのが一番です。
椎名林檎の「ギャンブル」は愛を賭けると破滅するよと教えてくれます。
一方で賭博者への微かなシンパシーも覗けていて両義的です。
「ギャンブル」を愛した椎名林檎
リメイクや映画への使用
椎名林檎は自身の作品「ギャンブル」を気に入っていたようです。
「絶頂集」ではライブ演奏のヴァージョンでしたが、2007年、斎藤ネコとのコラボでリメイクします。
アルバム「平成風俗」に収録されたナンバー「ギャンブル」は歌詞の世界観をより拡張するような音作り。
スタジオ録音で聴く「ギャンブル」もまた素晴らしいです。
椎名林檎はスタジオでも絶叫します。
主人公の身体が極まる窮状の描写などが絶妙です。
椎名林檎は音楽監督を務めた映画「さくらん」の挿入曲としても「ギャンブル」を使用します。
愛というものを賭けてしまうと破滅的な恋愛になるよというこの曲の主張に深い愛着があるのでしょう。
愛は決して勝ち負けで丁半決めるような物事ではないのです。
素直に愛していくことが幸せにつながるのではないでしょうか。
「賭博者」というものは表現者にとって魅惑的なモチーフですが身を持ち崩すのは避けたいものです。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
OTOKAKEで振り返る椎名林檎
お好み批判の「おこのみで」
OTOKAKEには椎名林檎の関連記事がたくさんあります。
中でも愛を賭けてしまうのではなく「あなた好み」に委ねてしまうことへの批判。
「おこのみで」の記事をぜひご覧ください。
椎名林檎【おこのみで】歌詞の意味を独自考察!あなた好みの女性を演じる私…そんな自分を嘲笑っている? - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
椎名林檎がその音楽性を爆発的に向上させた傑作アルバム「加爾基 精液 栗ノ花」収録の大作「おこのみで」。前衛音楽やJAZZのテイストを取り入れつつ独自な音楽を展開するこの作品ですが妖艶な歌詞も印象に残ります。歌詞を紐解いてこの歌の謎に迫ります。
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