『少女ロボット』
ともさかりえへの提供曲
2000年にリリースされたともさかりえさんの「少女ロボット」も椎名林檎の提供曲でした。
椎名林檎はデビュー2年目にしてともさかさんに5曲も提供していたのですね。
原曲は当時20歳のともさかさんの繊細さを引き立てることを前提に編曲されています。
意図的に荒々しいバックトラックを採用し繊細な少女の輪郭を浮き彫りにするのが狙いです。
歪んだオルガンとシーケンスを多用した演奏は後の東京事変を連想させます。
実際に2016年には解散したはずの東京事変が突如原曲に忠実なセルフカバーを発表しました。
かなりロックな仕上がりです。
2016年といえば紅白歌合戦の椎名林檎のバックも東京事変でしたね。
「逆輸入」では村田陽一さん編曲によるストリングスアレンジを中心に構成。
歌唱法もアレンジに合わせ抑制された美を追求されたようです。
どのようなアレンジを施しても昭和の情念を感じさせるのが椎名林檎の由縁でしょう。
石川さゆり大先生へ提供した3曲
「逆輸入~航空局~」には石川さゆりさんに提供した楽曲が3曲収録されています。
「津軽海峡冬景色」のイメージが強い石川さん。
実はとてもクリエイティビティに溢れた方なんです。
初めて二人が邂逅したのは2012年の紅白歌合戦。
椎名林檎は元々昭和歌謡・クラシック・ジャズをルーツに持ちます。
2人が意気投合するのに時間はかかりませんでした。
石川さんが様々な音楽家とコラボした2014年の「X-CrossⅡ」。
そこでようやく2人は共演を実現させます。
『暗夜の心中立て』
「暗夜の心中立て」は「X-CrossⅡ-」からの先行シングル。
テーマは「不条理な世の中で強く生きる女性の切なさ」。
原曲では石川さんの世界観を最大限に生かしたドラマチックなアレンジがなされています。
「逆輸入」では原曲の輪郭は残しつつもアレンジは大幅に変更。
あくまで「亜流」として「本家・石川さゆり」の操を立てています。
そこに残ったのはビッグバンドジャズ・昭和歌謡・サイケデリックロックが混然一体となった林檎節。
渋さ知らズというサイケ・ジャズバンドのような驚くべき「暗夜の心中立て」が完成しました。
『名うての泥棒猫』
もう1曲の「名うての泥棒猫」は「暗夜の~」のカップリング曲。
原曲はザ・ピーナッツを意識したという軽快なリズムの昭和歌謡風のアレンジ。
石川さんの希望でコーラスには椎名林檎も参加しています。