一方で「逆輸入」ではやはりアレンジを大幅に修正。
原曲の持つ軽快さは名越由貴夫さんのファンキーなギターサウンドに引き継がれるのみ。
ガレージロック風のアレンジは椎名林檎の敬愛するBlankey Jet Cityを彷彿とさせます。
『最果てが見たい』
石川・椎名がタッグを組んだ3曲の中でもっとも魔法のような化学反応を起こした曲。
それが「最果てが見たい」です。
宮崎アニメやヱヴァンゲリヲンのラストに流しても全く違和感のない瑞々しさ。
ピアノ・アコーディオン・ケーナ(ペルーの縦笛)のみの牧歌的な伴奏。
その童謡のようなファンタジックな世界観は二人にとっても新境地となったことでしょう。
吉高由里子さん出演のスナック菓子のCMソングとしてお茶の間にも流れていましたね。
I will cross over this life
(生命を越えて)
and reach the side that no one knows here
(本当の未踏の地へ)
Oh, a heart with no more tears is like an end, an end without an end
(涙涸らした心が映す果てを)
I must find it there
(確かめたい)
出典: 最果てが見たい/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
「最果てが見たい」は本作ではやはり大きくアレンジを変更。
一番大きいのは英語詩への変更でしょう。
伴奏は美しいハープの音色と対照的なギターノイズのみ。
「本家」を柔らかな草原の風に例えるなら「亜流」の本作は荒野に吹きすさぶ風。
ミステリアスに進化した「最果てが見たい」はアルバムのラストを飾ります。
残念ながら音源は動画公開されておりません。
実際に作品でお確かめください。
映画「百日紅」用に再アレンジされた「最果てが見たい」
実は「最果てが見たい」にはもう1つのバージョンが存在します。
杉浦日向子原作の「百日紅(さるすべり)」のアニメ映画の主題歌として起用されているのです。
映画用にリ・アレンジされたのは石川さんとのコラボの翌2015年。
「逆輸入」の2年前のことです。
監督は「劇場版クレヨンしんちゃん」をオトナ向けの名作に引き上げた原恵一さん。
杉浦さんが生前椎名林檎のファンだったことから原監督の熱烈アピールの末実現したそうです。
「百日紅」とは葛飾北斎の娘のお栄の自由に芸術を追い求める姿を描いた作品。
映画用にお栄の凛とした姿に重ねるようにアレンジを重厚なギターロックに変更。
欧州を中心に上映された映画に合わせ世界同時配信で2015年にリリースされています。
『薄ら氷心中』
提供先は声優 林原めぐみ
「逆輸入」の5曲目に収録されたのは「薄ら氷心中」。
アニソン・声優界のプリンセス林原めぐみさんに提供された楽曲です。
「薄ら氷心中」は林原さんが声優を務めるアニメ「昭和元禄落語心中」のオープニング曲でした。
林原さんが演じるみよ吉というキャラのセリフから原曲のキーを決めたという「薄ら氷心中」。
「そのお芝居が余りに真に迫るものだったから」と彼女の自然な発声を活かすよう編曲されました。
アレンジは「逆輸入」で何曲も編曲を依頼している村田陽一さん。