見えてしまつたよ 慾を掌つた過去形
まう罷めるよ ほらすぐ此処に示して
楽にしてあげる
出典: ドッペルゲンガー/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
ドッペルゲンガーという怪異現象の一端が見え隠れするラインです。
そもそもこの怪異現象は自分の姿を自分自身が目撃するというもの。
またこの怪異現象に出会う人は間もなくして死に向かうといわれています。
見えたのは欲望を司る過去の自分。
そんな自分に嫌気が差したのか欲を追うのはもう辞めるといいます。
その証拠をこの場に指し示します。
そうすればこの世の呪縛から解放してあげる。
中々、恐ろしい歌詞です。
呼応し合う歌詞
美しいコントラスト
今日は 御休み
前のめり 淑(しとやか)
夕暮 波久礼雲
苗床 赤の他人
出典: ドッペルゲンガー/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
椎名林檎の歌詞は視覚に訴える要素が豊富です。
イメージする傍から様々なワードを駆使してリスナーを煙に巻きます。
この2番の歌詞は1番の歌詞と連動している様子。
相反するワードを置いてコントラストを美しく映えさせます。
自由連想法で書いた詩のような趣でもあり、練りに練って書いた詩のようでもある。
非常に不思議な印象を抱かせます。
そして「ドッペルゲンガー」の本旨は次の歌詞に鮮明に現れるのです。
見ていきましょう。
「ドッペルゲンガー」は禍事(まがごと)の予兆
自分の姿を見つける
消えてしまつたよ 己を能(よ)く模した騒霊
まう決めたよ ほら災ひを起こして
取り憑いてあげる
出典: ドッペルゲンガー/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
椎名林檎は悪戯のように歌詞を書き綴ります。
ドッペルゲンガーという自分の姿との邂逅を示す怪異現象。
この怪異現象に見舞われると禍事が生じるといいます。
椎名林檎はこの怪異現象に纏わる伝承を念頭に置いて、この歌詞を綴ったはずです。
ドッペルゲンガー現象とは?
歴史に残るドッペルゲンガー現象
歴史上の人物もドッペルゲンガーに出会ったという記録が数々残されているのです。
死を間近にしたリンカーン大統領がドッペルゲンガーに出会ったといいます。
鏡に写ったのは死んだリンカーン大統領の姿であった。
また、暗殺される日に「私の暗殺について何か知らないか?」と側近に尋ねたといいます。
ゲーテも何度かドッペルゲンガー現象を体験していたそうです。
ゲーテ自身のドッペルゲンガーに加えて、そこにはいないはずの友人のドッペルゲンガーと出会った。
事例は海外だけではなく、文豪・芥川龍之介も体験した形跡があります。
芥川龍之介の未完の小説「人を殺したかしら」は、彼のドッペルゲンガー現象が下敷きになっています。
科学では解明できない
ドッペルゲンガーについて科学からアプローチする学者も多くいました。
脳の器質的な障害がもたらすのではないかと考えた人もいます。
しかしこれらの研究でもドッペルゲンガーについてすべて説明し切ることはできませんでした。