正体不明の焦燥感
辛いことなんてないけど
わけもわからずに 叫びたかった
待つのが嫌だった
電車 夜 校舎裏 夕日の匂い
明日に 期待は したいけど
明日の私には もう 期待しないで
出典: 青春なんていらないわ/作詞:n-buna 作曲:n-buna
具体的な悩みや辛いことがなくても、身を引き裂かれるような焦燥感に苛まれる。
今まさにそんな状況に身を置いている読者の方も少なくないと思います。
自らが動いて何かをするというより、環境に従って動かされているような感じ。
高校時代というのは特に、そういった気持ちになることが多いかもしれません。
小中学生よりは大人だけれど、大学生よりは幼く、自由もききません。
あの独特の閉塞感と焦燥感は、筆者にも覚えがあります。
気がつかなければそれなりに楽しく過ごせるけれど、一度気づいたらもうダメ。
何かを期待されても、そんなの応えられるわけがないじゃない!
最後の二行は「女の子独特の憂鬱」を見事に表現しています。
幼い自分は夏に置き去りに
ねぇ 青春なんていらないわ
このまま夏に 置き去りでいい
将来なんて知らないわ
花火で 聞こえない振りをして
もう 本当なんて言えないわ
ただ一つの言葉も出ないよ
ばいばいなんて言わないで
この夏も時期終わり お祭りももう終わり
出典: 青春なんていらないわ/作詞:n-buna 作曲:n-buna
学校という枠から離れることのできる夏休みは、ちょっぴり大人の振る舞いができる時間でもあります。
部活で学校に行くことがあっても、それは義務ではなく自分の選択と捉えられますしね。
浴衣で行く花火大会、そして「君」の横顔。大人の雰囲気満載です。
でもここで「好きです」と言えない自分は、やっぱりまだどこか幼い……。
青春という名前で呼ばれるこの時間は、自分を縛って解放してくれません。
毎日が特別だったこの夏も、お祭りも、終わりに近づいています。
そして「君」とのさよならの時間も近づいているのです。
今だけは大人でいさせて
もうちょっとだけ 大人でいたくて
指先体温に 少し掠るくらいに
伸ばしている
小さく 遠くで 花火が鳴った
一瞬、それで良いんだ
出典: 青春なんていらないわ/作詞:n-buna 作曲:n-buna
しっかり触れることはできないけれど、せめて掠めた指先で「君」の体温を感じていたい。
花火の儚さと同じように一瞬だけれど、それでもいい。
今この瞬間、確かに彼女は大人への道に一歩足を踏み出しているのです。
嬉しいことなんてないから
未来の話ばかり したかった
さよならの近付く
校舎 春 進路票 朝焼けの空
誰かがずっと叫んでる
耳元より近い 心の向こうで
出典: 青春なんていらないわ/作詞:n-buna 作曲:n-buna
今は大きな悩みや辛いことはないけれど、嬉しいことも特にはない。
だから未来に目を向け、現実からはなるべく目を背けたいのかもしれません。
先述の「明日に期待はしたいけど」と重なる部分です。
3~4行目は来年の話ですね。彼女は多分高校2年なのでしょう。
年を取ると1年などあっという間なのですが、この年代だと来年の話は遠い未来のことに思えるもの。
3年になればやっと「あ~もうすぐここからさよならだ」と思えると想像しているのでしょう。
心の向こうで叫んでいるのは誰? 一体何を叫んでいるの?
叫んでいるのはきっと自分自身ではないかと思います。
ですが、その内容は……?
繰り返される心の叫び
ねぇ 青春なんていらないわ
このまま 今に置き去りがいい
何千回も繰り返す この日を
忘れないままでいたい
もう 本当なんて言えないわ
ただ一つの勇気も出ないよ
ばいばいなんて言わないで
この夜ももう終わり お別れがもう近い
出典: 青春なんていらないわ/作詞:n-buna 作曲:n-buna
「君」の横顔、儚く咲いて散る花火、そして一歩大人に踏み出した自分。
この日のことはずっと忘れない、忘れたくないという祈りにも似た想いですね。
でもやはり、勇気を出して想いを告げられない切なさはつのります。
そしてもうすぐお祭りの夜は終わり、お別れの時間がやってくるのです。
ねぇ 青春なんていらないわ
このまま 夏に置き去りでいい
将来なんて知らないわ
花火で聞こえない 振りをして
もう 正解なんていらないわ
ただ一つの言葉が あればいい
ばいばいなんて言わないで
この歌ももう終わり この夏ももう終わり
出典: 青春なんていらないわ/作詞:n-buna 作曲:n-buna
何が正しくて、この先自分がどうするべきかなんて、どうでも良いのです。
今一番大事なのは、たったひとつの「好きです」という言葉。
3つ前の部分で「ずっと叫んでるその内容は?」という謎を残していましたよね。
それはこの「好きです」という言葉かもしれません。
学校生活もいつかは終わりを迎えます。
でもそれ以前に、この夏、そして今夜はもう終わってしまうのです。
今言わなければ、もう二度と言う機会はないかもしれないから。
でも、その言葉は花火の音で聞こえない振りをしてほしいかも……。
小説の設定でいくと、結局彼女は思いを伝えられませんでしたね。