耳をすませ遠くで今
響きだした音を逃すな
呼吸を整えて
いつかは出会えるはずの
黄金の色したアイオライトを
きっと掴んで離すな
出典: LOSER/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
アイオライトというパワーストーン、天然石が歌詞に出て、ここできらびやかさというか明るさを取り戻す印象になります。
このアイオライトというのはどういう石でしょうか?
歌詞との関連性は?
アイオライトは日光の当たりかげんで色が変わる天然石で、夢や目標を見失ったときに人生の羅針盤としての役目をはたしてくれるといわれているパワーストーンです。
何かを見失って戸惑っている歌詞の中、このアイオライトを
「いつか出会えるはずの」
という希望を持っている歌詞として表現しています。
どん詰まりでヤケのような歌詞の中、夢も目標も捨ててはいない。羅針盤を必死に求めている。
負け犬だけどまだまだ足掻き続けている。
そんな思いがこのあたりの歌詞にあふれているのではないでしょうか?
特に若い女性に人気のパワーストーンが、歌詞の中できらりと光る部分ですね。
彼の輝く感性がくっきりと浮き上がる作詞です。
自分は負け犬と繰り返し叫びながら歩き続ける「LOSER」
「LOSER」は、自分は負け犬、と何度も繰り返す歌詞です。
遠吠えという言葉も、実際「負け犬の遠吠え」という言葉があるように、それを使っているあたり、この歌は「自分は負け犬」と叫んでいるように感じます。
四半世紀生きてスターであっても今の自分はうまく前に進めない負け犬だと心の叫びを歌詞に込めているのではないでしょうか。
だけど、ポケットに隠した声が聴こえます。
これは「負け犬の遠吠え」なのか、「本心からの言葉」なのか、どちらととらえていいのか、ですね。後者のように感じられます。
負け犬負け犬と悲鳴を上げながら、自分はそのままではいたくないんだという希望の声が、あふれてくるような小さく強い部分に感じられるのです。
羅針盤のアイオライトはいつかきっと誰にでも見つかります。
それをもう一度掴んだら二度と手放してはいけない、夢も目標もあきらめず、挫折しようと壁にぶつかろうと、負け犬であり続けても前に進みたいという心の叫びが、この「LOSER」という名曲を生んだような気がします。
砂漠をイメージして作られた「ナンバーナイン」
「ナンバーナイン」は、ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」の公式テーマソングとして書き下ろされた曲です。
自虐的な歌詞ととらえられる「LOSER」と違い、「ナンバーナイン」は色艶と情緒にあふれる歌詞となっています。
不思議な感性に彩られた「ナンバーナイン」の歌詞は、どういう意味を持ち、何を表現しているのかを考察してみましょう。
砂漠が時間と空間を表す情緒的なイメージ
歩いていたのは 砂漠の中
遠くに見えた東京タワー
出典: ナンバーナイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
砂漠の中、という言葉が出てきますが、実際にはそこに東京タワーが遠くに見え、誰かを思い返す洗練された情緒ある歌詞となっています。
そして、かつて生きた人を思い、それを壊した現代の人々の上に成り立つ今、過去と現在が交差する不思議な時間と空間が浮かび上がります。
英智が先を急いだことで過去の繁栄を壊したこと、そこに自分たちが続いたこと、それは決して栄光とは呼べない繁栄といえるのではないでしょうか。
それが砂漠というイメージに凝縮されているのかもしれません。
誰もいない未来、というのは何を表すのか?
恥ずかしいくらい生きていた僕らの声が
遠く遠くまで届いたらいいな
誰もいない未来で起きた呼吸が
僕らを覚えていますように
出典: ナンバーナイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
これはどういう意味でしょうか?
未来に人はいないということでしょうか。
それとも自分自身の孤独を表しているのでしょうか。
砂漠はひとりぼっちの印象がありますね。
砂漠=誰もいない=孤独
過去を踏み壊した現代と誰もいない未来という歌詞は、寂しく感じられるような気がします。
何千と言葉選んだ末に
何万と立った墓標の上に
僕らは歩んでいくんだきっと
笑わないでね
出典: ナンバーナイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「LOSER」に込められた足掻くような希望とは違う、温かで壮大な希望を感じるのが、この「ナンバーナイン」の歌詞といえそうです。
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