“僕”にとっての“君”

ここからは引用もしながら、歌詞の内容を解釈していきます。

失恋の痛みと自嘲

消えかけた傷を かきむしる
「愛」に形とか あるのかな
ハートの形 薔薇の匂い
下手すりゃ味とか するのかな

出典: 2人/130000000の奇跡/作詞:zopp 作曲:大智

冒頭の歌詞は、さわやかな曲調には似つかわしくない、とても痛々しい言葉から始まります。

ただしその後につづくのは、“ハート”、“薔薇”という言葉が並べられた、愛についての空想です。

2行目以降だけ見れば、今にも明るいラブソングが始まりそうに思えます。

しかしこの出だしのせいで、美しい空想がシニカルな自嘲に姿を変えてしまっています。

引きずる想いは 傷だらけ
消毒したけど 治らない
病院に行けば 治るのかな
下手すりゃ手術が 必要かな

出典: 2人/130000000の奇跡/作詞:zopp 作曲:大智

2番の冒頭部分は、1番よりももっと悲痛さを増しています。

言葉を語る調子はまったく同じです。

なのに並べられているのは、“消毒”、“病院”、“手術”という、まるで明るさを感じさせない言葉。

1番とは対照的です。

同じ空想でも、こちらには美しさなんて少しも残っていなくて、空想それ自体が自嘲的なものになっています。

語り手の傷の深さが伝わってくるようです。

一途な想い

では、“僕”にとって“君”は、どんな存在だったのでしょうか?

“僕”は“君”のことを、どのように想っていたのでしょうか?

君がいない世界は 無声映画みたいだ
空にかかる虹さえ モノクロに見えんだ

出典: 2人/130000000の奇跡/作詞:zopp 作曲:大智

この部分では、“虹”と“モノクロ”という強烈なコントラストが使われています。

虹は七色だからこそ美しいのに、その色を見ることができない…

つまり、ここで“僕”は、美しいものの美しさを否定しています。

“君”がいない世界では、どんな美しさもその価値を発揮できないということ。

その事実によって、“君”の存在がどれほど大きなものなのかが、鮮やかに伝わるようになっています。

君の嫌いな所 書き出してみたんだ
読んでいたら涙で 滲んで消えたんだ

出典: 2人/130000000の奇跡/作詞:zopp 作曲:大智

2番でも否定の効果がうまく使われています。

“君の嫌いな所”を書き出すのは、つまり、わざわざ書き出さなければ見つけられないということ。

それを読んで泣けてくる、ということは、嫌いな所を並べてさえ“君”のことを嫌いになれないということ。

女々しいと切り捨てることもできますが、それ以上に痛々しいほどまっすぐな想いがみえてきます。

“奇跡”が“悲劇”に変わる瞬間

出会うはずじゃなかった2人?

君が水で僕が油だったの
それとも神様の悪戯なの

出典: 2人/130000000の奇跡/作詞:zopp 作曲:大智

“水”と“油”。

混ざりあわない2つのものの喩えから、「出会うはずじゃなかった」という想いが透けて見えるようです。

この想いは、“神様の悪戯”という言葉によって更にくっきりと浮かび上がります。