幸せになるにはきっと
何か払わなきゃいけないの、と
泣いているような空を見る
君の強さを知っているよ
出典: イルミネーション/作詞:Saori,Fukase 作曲:Saori,Nakajin
幸せになるために「払う」ものとは、何を指すのでしょうか。
それはおそらく「犠牲」です。
もちろん、彼女は誰かを生贄として差し出すわけではなく、自らが犠牲となって自らの幸せを追い求めています。
犠牲となって炎に焼かれて灰になっても、その先に幸せが待っているのなら耐えられるのです。
そんな彼女が見上げた空は、少し触れたら雨粒が落ちてきそうな、涙をたっぷり溜め込んだ空。
今は雨空でも、じっと耐え抜けば幸せな晴れ空が必ず訪れます。
彼女は辛い時間を耐える意味を知っていますし、彼は今まで何度も彼女が耐える姿を見てきたのでしょう。
汚れたような色だねって
そんなに拗ねるなよ
人知れずシャツの袖で
涙を拭った君に
出典: イルミネーション/作詞:Saori,Fukase 作曲:Saori,Nakajin
真意を知らされないまま「灰色が似合う」と言われて喜ぶ女性は、きっといません。
彼女も例外ではなく、似合うのがまるで汚れのような色だと言われたことに不満げな様子。
彼女が拗ねているということは、彼が「灰色」を選んだ真意をまだ知らないということですね。
苦しいことがあって泣きたくなっても、彼女は声を張り上げません。
じっと耐えて、どうしても涙がこぼれてしまうときは誰にも見えない場所に行き、シャツの袖口で拭うだけ。
彼はそれを知っています。
彩りを与える「灰色」
純白の街へ連れてくよ
緑や赤の綺麗な光
濡れた袖が暖まるまで
雪道を彩る
二人だけの足跡
出典: イルミネーション/作詞:Saori,Fukase 作曲:Saori,Nakajin
彼が純白の街を選んだ理由は、灰色の彼女が最も映える色だからだと考えられます。
緑や赤の光が彩っているのであれば、クリスマスの時期ですね。雪が積もるホワイトクリスマスなのでしょう。
雨がいつか上がるのと同様に、涙もいつか乾きます。彼女が涙を拭った袖口だって、いつか乾きます。
乾いた袖口は、彼女の体温のせいで暖かくなることでしょう。彼女は暖かな心を持っている、という意味を感じます。
しかし、クリスマスまでの間にもまた涙を拭うことがあるかもしれません。
乾き始めた袖口はまた濡れてしまいます。
それでも彼は、袖口が暖かくなるまで彼女と歩いていくはずです。
二人が踏んだ雪に残る足跡は灰色。
雪道を「彩る」という表現には不似合いな色ですが、彼にとって灰色は何よりも美しい色なのでしょう。
必ず残る色がある
手当たり次第に絵の具を混ぜ合わせると何色になるか、知っていますか?
その色こそが、彼女の色なのです。
君の不安も知っている
優しさに色があるなら
赤でも青でも黄色でもない
全部を混ぜあわせて
ただ一つ出来る色だ
出典: イルミネーション/作詞:Saori,Fukase 作曲:Saori,Nakajin
優しさを色で表現するなら、何色をつけますか?
柔らかくて暖かみのある色を想像しますが、「本当の優しさを持つ人」を目の当たりにしている彼は、優しさの色を知っています。
色という色を混ぜた結果、できる色だと言います。
全ての色を混ぜ合わせていくと最後は黒になる、と誤解している方が多いかもしれません。
実はどんなに多くの色を混ぜても、白と黒だけは作り出せないのです。
明るい色を混ぜ合わせれば明るい灰色、暗い色を混ぜ合わせれば暗い灰色。
つまり、彼が「優しさの色」として提示したのは灰色、ということです。
それ、鼠色だよねって
顔をしかめるなよ
人知れず眠れない
夜を過ごした君に
出典: イルミネーション/作詞:Saori,Fukase 作曲:Saori,Nakajin
彼女は「灰色」「グレー」ではなく「鼠色」と表現しました。
燃えカスのような、煤けた汚れのような「灰色」という表現は気に入らないのかもしれません。
鼠色と言い換えたところで、その色自体がパッとしない色ですし鼠は害獣のイメージです。
そのため、また彼女は不満げな顔を見せました。
でも、鼠色を指定したことに深い意味があり、顔をしかめる必要はないのだと彼は思っています。
実は、人前では大丈夫なふりをして強がっている彼女にも、不安で眠れない夜がありました。
それは幸せを求めて犠牲を払ったがために生まれた不安なのでしょう。
彼は全て知っています。
僕らの帰る場所
僕らの家へ帰ろうか
影絵のような帰り道
夕食の匂いのする方へ
二人手を繋いで
向かい合った足跡
出典: イルミネーション/作詞:Saori,Fukase 作曲:Saori,Nakajin