ジョン・レノンのハーモニカを聴こう

ビートルズ【フロム・ミー・トゥ・ユー】歌詞を和訳して解説!献身的なアプローチ?君のためなら何だって…の画像

If there's anything that you want
If there's anything I can do
Just call on me and I'll send it along
With love from me to you
From me to you

出典: フロム・ミー・トゥ・ユー/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney

リフレインを含みます。

重複になりますが一応訳出しました。

「君が欲しいものがあって

僕にできることがあるならば

すぐに僕を呼んでね

僕は君が望むものを贈るよ

僕から君へ愛を込めてね

僕から君へ」

「僕」から「君」への直接的な交流を歌います。

直接に呼びかけることでバンドとファンとの距離を縮めたいという想いが隠れているのです。

すぐに駆けつけるというラインはまだ現役のライブバンドであった頃の誓い。

「君」、つまりファンが住む街へ駆けつけて演奏しにゆくよという想いを重ねています。

この「僕から君へ」という歌詞はイギリスの音楽雑誌「NME」の記事「From you to us」に倣ったそうです

実際にどんな記事だったかまでは歴史に埋もれてしまい調べようがありませんでした。

「NME」は今なおイギリスに限らず世界中で注目されている老舗の音楽雑誌です。

この辺りで聴けるジョン・レノンのハーモニカ演奏が印象的

レコーディングではハーモニカ演奏の箇所を丸々忘れたこともあったというジョン・レノン。

彼はライブ音源などを聴くとよく歌詞も間違って歌ったりします。

歌っているうちに様々なアイディアやイメージが湧いてきて思わず間違えてしまうのでしょう。

歌詞は音楽の添え物だった頃

とにかくファンへメッセージを届けたい

ビートルズ【フロム・ミー・トゥ・ユー】歌詞を和訳して解説!献身的なアプローチ?君のためなら何だって…の画像

Just call on me and I'll send it along
With love from me to you

I got arms that long to hold you and keep
You by my side
I got lips that long to kiss you and keep you
Satisfied

出典: フロム・ミー・トゥ・ユー/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney

間奏を挟んでまたリフレインになります。

「フロム・ミー・トゥ・ユー」はわずか1分56秒の曲です。

2分に満たない曲の中で何度も歌詞をリフレインさせます。

繰り返しにはなるのですが和訳を添えましょう。

「すぐに僕を呼んで

僕は君が望むものを贈るよ

僕から君へ愛を込めてね

僕には君を抱きしめるための

長い両腕がある

そして僕のそばに君を置くのさ

僕には君にキスするための大きな唇があるんだ

君を満足させ続けるよ」

まだまだビートルズ、特にジョン・レノンが歌詞を詩に昇華する前の曲です。

実はこの頃のジョンもポールも歌詞を音楽の添え物と捉えていました

初期のビートルズの歌詞はとにかく音の響きを第一に考えていたのです。

深い意味など考えずに気分のいい言葉を並べ立てます。

「フロム・ミー・トゥ・ユー」にもそうした傾向が現れているのが分かるでしょう。

しかし何もメッセージがない歌詞ではありません。

冒頭の方で触れたようにきちんとファンやリスナーへの熱いメッセージを込めているのです

パーティー・ソングや単純なラブソングが多かった黎明期のロックンロールの歌詞とは少し違います。

「愛を伝えること」の大切さをビートルズはデビュー直後から意識していたのです。

この辺りの高い意識が後の作品での深い内容を持った歌詞へと繋がります。

男女の愛よりももっと大きな愛をジョンもポールも考えていたのが歌詞から伝わるでしょう。

「君」への熱烈な愛の表現はファンやリスナーに届ける想いの熱さに比例します。

ファンへの献身的な愛をビートルズはデビューのときから持ち続けていたのです。

ベスト盤「オールディーズ」収録

中古市場で探してください

ビートルズ【フロム・ミー・トゥ・ユー】歌詞を和訳して解説!献身的なアプローチ?君のためなら何だって…の画像

If there's anything that you want
If there's anything I can do
Just call on me and I'll send it along
With love from me to you, to you, to you, to you

出典: フロム・ミー・トゥ・ユー/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney

あっという間にクライマックスです。

3分どころか2分にも満たないシングル曲が多かった時代ですから、この辺の事情は仕方がないもの。

ラジオでオンエアされることがヒットへの第一の道だった時代の産物です。

この箇所も基本はリフレイン。

大部分が重複いたしますがご了承ください。

和訳を添えます。

「君が欲しいものがあって

僕にできることがあるならば

すぐに僕を呼んでね

僕は君が望むものを贈るよ

僕から君へ愛を込めてね

君へ、君に向けて、君へ」

ご覧のように最後まで「僕」から「君」への愛にこだわり続けます。

気前よく「僕」のすべてを「君」に捧げると歌うのです。

ここでの「君」はファンへの呼びかけですから、ファンが望むものを贈り続けることになります。

ファンが望むものの中身は斬新なロック音楽のこと

ビートルズはその約束を果たし続けます。

自分たちの音楽はファンへの贈り物であるという気持ちが透けるのです。

この曲はイギリスでは大ヒットになりますが不思議なことにオリジナル・アルバムには収録されません。

その代わりにイギリス・オリジナルのベスト盤「オールディーズ」に収録されました

この「オールディーズ」は編集盤ということもありCD復刻やデジタル配信はされていません。

しかし後のポップ・グループ「XTC」がアルバム・ジャケットを真似るなど後世への影響は大きいです。

ビートルズの初期の名曲アルバム一枚でまとめて聴くことができるのでそのお得感は至高

ぜひともデジタル化して欲しいものです。

昨今はアナログ・レコードが再ブームですので中古市場で入手するのも悪くないはず

ただし、ビートルズの作品はアナログ、デジタル問わず中古価格が安くなることはないです。

この辺りがさすがにビートルズの風格なのだろうと思わされます。

「フロム・ミー・トゥ・ユー」は成功の前奏曲

ビートルズ革命後の世界を生きる

ビートルズ【フロム・ミー・トゥ・ユー】歌詞を和訳して解説!献身的なアプローチ?君のためなら何だって…の画像

駆け足で「フロム・ミー・トゥ・ユー」の歌詞やサウンドについて解説してきました。

この後のビートルズは「シー・ラヴズ・ユー」をシングル・カットします。

先にも触れましたが「シー・ラヴズ・ユー」でもコード・アレンジへのこだわりがありました。

曲のラストのコードが「G6」というギターではあまり用いられないコードなのです。

この頃のビートルズの意識の向かい方が斬新な曲構成やアレンジに注がれていたのがよく分かります

さらに1963年暮れには「抱きしめたい」で全米No.1を獲得し「ビートルズ旋風」が巻き起こるのです。

今回、ご紹介しました「フロム・ミー・トゥ・ユー」はビートルズのビッグ・サクセスの序章でした

世界中のポピュラー音楽シーンを激変させた革命的な音楽家集団ビートルズ。

彼らのサクセス・ストーリーのほんの始まりのところ。

とにかく爽やかなロックンロールがこの頃の彼らの持ち味です。

そしてシングルやアルバムのリリースを経る度に彼らの音楽が進化してゆきます。

ポピュラー音楽シーンのリスナーだけでなくアーティストたちへの影響力も凄まじいものです。

デビュー直後のビートルズのロックンロールが「騒音」呼ばわりされた時代があったなど信じられない。

私たちはビートルズとマージー・ビートの子どもたちが変えていった音楽世界の中で生きています

ときにはその音楽世界の原点を探ってみるのも楽しいものです。

フロム・ミー・トゥ・ユー

献身的な愛の表現はファンへの誓いと感謝の証でもあります。

ビートルズがファンやリスナーに届けた想いは永遠です。

その証拠にポール・マッカートニーは今でもライブでこの曲を演奏することがあります。

半世紀以上の時代を超えて感動を遺すということは中々できないものです

そのわずかで少ない例外がビートルズのサウンドなのでしょう。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEで振り返るビートルズの軌跡

ジョンのアイディア満載の楽曲