ネオンが夜を飲み干す 苦いだけの空き缶に
吐き溜めた劣等 冷たく胸を焦がす
独り孤独を吐いた
出典: 夜のピエロ/作詞:biz 作曲:biz
人は誰でも自分の中に孤独を抱えている生き物です。
明るく見えるあの人も、主人公と同じように笑顔を取り繕って生きているのかもしれません。
しかし誰もが自分のことでいっぱいいっぱいで、他人まで思いやる余裕がないのも事実。
そんな人々の感情が集まってできたかのような深い夜の闇は、明るいネオンの光に打ち消されていくのです。
人はいつだって1人では生きていくことができません。
「自分は孤独ではない」と思い込みながら、無理矢理明かりを灯しながら生きていくのです。
自分に活を入れるかのように、美味しいと思えないお酒を飲み干す主人公。
酔っぱらっている最中だけは、少しだけ現実を忘れることができます。
色を変えた街の明かり
煌めく街の明かりは 色を変えて
蔑んでる 部屋にポツリ
虚ろな光は通り過ぎて 影となった
夜に沈む
出典: 夜のピエロ/作詞:biz 作曲:biz
どんなに自分自身を鼓舞しても、その効果はほんのわずかなものです。
闇を覆い隠すように光り輝いていたネオンも、次の瞬間には闇に飲み込まれそうになっていて……。
それを見るたびに、「やはり自分には希望がないのだ」と感じずにはいられません。
人々の輪に溶け込んだかのように錯覚していたけれど、目を開けるとそこはいつも過ごす自分の部屋でした。
いつも1人ぼっちで過ごしているこの部屋を、主人公は好きだと思ったことがありません。
いっそこの部屋に閉じこもったまま、夜の闇に溶け込んでしまえたなら……。
そう思ってしまうほどに、主人公の心は何年も沈んだままなのです。
光があるということは、必ずどこかに影が生まれているはず。
誰かの成功の裏には、自分のような人間がたくさん苦しんでいるはずなのです。
毎日繰り返し襲い掛かる苦しみは、主人公が希望を望んでいるからこそのもの。
心の奥底では、輝く未来を諦めきれることなどないのです。
自分を偽り続けて
朝が来るたびに感じる恐怖
夜明けは微かなメランコリー 朝が怖いんだ
蓋をする思考力 酔えず吐いたアルコール
出典: 夜のピエロ/作詞:biz 作曲:biz
まるで自分自身を投影したかのような夜が終われば、また輝く人たちのための朝が待っています。
日が昇れば、また気持ちを押し殺しながら笑顔を貼り付ける日々に戻らなくてはなりません。
自分を偽るためには、かなりの労力が必要です。
主人公がどれだけ大変な思いをして周りと関わってきたのかが伝わってくるようです。
お酒を飲めば苦しみを忘れられるかと思いきや、逆に苦しみが倍増しただけでした。
自分を偽ってその場を取り繕っても、さらに孤独が増すだけなのです。
考えに考え、悩み抜いた結果、考えることを止めてしまう主人公。
それは自分自身を守るためでもありました。
誰も手を差し伸べてくれない日々の中で
理由もない不安が胸に押し寄せるんだ
溺れそうだ 足掻くだけの日々
出典: 夜のピエロ/作詞:biz 作曲:biz
毎日繰り返し同じことで悩み、未来への絶望を口にしてきた主人公。
周りと比べて自分はとてもちっぽけな存在で、昨日と比べて少しも成長できていないように感じます。
どうしたらみんなと同じような毎日を送れるのか、その答えはまだ見つかっていません。
出口の見えない問いかけの中で、もはや主人公は諦める寸前のところまできていました。
誰かの手や救いの言葉さえあれば、主人公の毎日は変わったものになっていたでしょう。
しかし、取り繕うのが上手な主人公を心配する人は現れませんでした。
誰も知らない主人公の本心
誰かの人生を輝かせるための存在
使い捨てのような毎日に
ただ踊るだけのエキストラ
出典: 夜のピエロ/作詞:biz 作曲:biz
輝かしい毎日を送っている人は、きっとこの世界の中心人物に違いありません。
そしてその人の毎日を輝かせているのが、自分たちのような「影」の存在です。
大勢の中で個性を出す必要もなく、周りでダンスを続けるだけの存在……。
誰が欠けても、物語の進行に支障はないのです。
しかし、主人公の世界では、自分こそが中心になっているはず。
それに気がつけないままに、誰かのための毎日を送っている主人公……。
もはや主人公の目には、自分のことなどこれっぽっちも映ってはいません。