主人公に対する世間と周囲からの視線が描かれています。
そんな視線を向けられている自分に落ち込むどころか、お似合いだと感じてしまっている。
辻褄が合わない物事で自分を作り上げ、誰しもが見れば嫌な気分になるような人間へと成り下がります。
それは人々にとって考えられないことかもしれません。
しかしながら、主人公にとってはそうすることが自分の使命のように感じています。
そうしないと他に何も無いのです。
自分より人の幸せを
或いはいつか 誰かのためになり どんな仕事も熟せたらいいなって
身を焦がした 切ない思い出に 繋がれて不自由なのに あの子は笑っていた
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)
一見は誰かに尽くして周囲から好かれるような事をしたいと思っているように感じます。
しかし、これまでの主人公の心情から察するに、ここで述べられていることはそうではありません。
歌詞の一行目で描かれていることはまさに「イエスマン」とも比喩できるのです。
自分の体裁がどうなろうとも、何を被ろうとも、誰かがそれで生きられるならそれで良いといっています。
そんな主人公は過去の出来事が重い鎖のように心に錆びついています。
それでも笑っているのは、僅か星屑のような希望だとしても心に残っているから。
絶望的な状況でも、こうして生きているのはまだ無意識にでもどこかに期待を抱いているからなのです。
願ったのは笑い合える日々だけ
誰にも汚されていない 真実の愛を 求めて生き抜く心が
歩けば 水をかけられるような 枯れた世界だろう
つらいのはもう 慣れっこだって 変えられないことを知ってる
無力なままで 笑いあえる日々 それだけがあなたへ許すなら 耐え抜いてみせて
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)
この世界を水一つないような荒れ果てた土地へと比喩しています。
仮にただ一つ真っ当な愛を求めて生を全うしたとする。
そうしても、決して潤うことは無いと掲げるほどに荒んだ世の中だといっています。
そんな中で主人公が描いたのはただ自然と笑って生きている自分の姿なのです。
何度も世界への苦言を呈して変化を望んできました。
しかしながらもう気づいているようにそう簡単には変わることの無いこの日々。
あの絶望の渦の最中にいた主人公がただ笑える毎日を思い描いているのです。
それは決してポジティブに変化したわけではなく、沈み切った故の最終的な結論。
人間の5大感情の一つである「笑い」がどれほど人間に必要なのかが痛いほどに伝わります。
死と隣り合わせの日々からの脱却
生きるか死ぬかの瀬戸際
常世と現世の境目に落ちて 天と地の狭間で宙ぶらりだろう
お願い あなたは 暗闇に挑む人 眼差しを向ける先に 光を探せる人
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)
歌詞の一行目で謳われているのは、死と生の間で葛藤し続けている主人公の姿。
まさにサーカスの綱渡りのようにどっちに転ぶも自分次第の状況なのです。
そんな中で決して戻ってこれない方へは行かないでと手を取るようなメッセージ。
これは私たちに諭すようにも感じられますが、主人公の心の言葉とも解釈出来ます。
少しずつ光が差し始める
いつか あなたの 近くで 泣いている 誰かがいるとしたら
きっと 僕たちの 涙も その海に流れつく
濡れた頬に 温もりの傘をさして 雨を凌ごうよ
決して迷わない 朝が来る 苦しみの向こう側に
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)
きっとこの惨状にあるのは自分だけではないといっています。
海が出来るほどに数多の涙が流れているのです。
人と人との繋がりで毎日降りしきる感情の雨から身を守る。
止まない雨は無いという言葉があるように、いつか待ちわびた晴天がやってきます。
その日に向かってただひたすらに進み続ける。
前半の歌詞と比較すると徐々に心に光が差し始めた主人公の心情が魅力的です。