真実は最初で最後なのです…さう口走つた君。
僕は思ひ出しつつ、聡明な生き方を鳥渡(ちょっと)真似たいと感じ颯爽と歩いては、
キツと厳しい表情(かほ)をしたのです。
出典: ポルターガイスト/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
聡明な処世術を身に着けた「君」に憧れる。
男女の恋愛で大切なのはお互いを尊敬し合えるかどうかです。
「僕」の心の内には「君」への尊敬の念がたくさんあります。
「君」の内面に対する尊敬の念で自分の表情を厳しくさせる。
何事もまずは形から真似てみる。
やがて真似事が自分の骨になり肉となり本物の習慣になります。
どんなときでも相手にいい影響を与えられる人は美しいです。
笑い合える恋愛は素晴らしい
愛する「君」の笑顔
君を笑はす為に、微笑むでゐやうと思ひ、鍛へました。
「扉(ドーア)の前にて!」若しも、此の部屋も無く、連なつてゐる輝きが
まやかしであらうとも僕に恐れなどはないです。
出典: ポルターガイスト/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
恋愛で大切なことは心から笑い合える関係が築けるかどうか。
恋する相手の笑顔を見ることは恋愛にとって至福のひとときです。
そのためには日頃から努力を惜しまない。
「僕」の気持ちはどこまでも一直線に「君」へと繋がれています。
恋愛と多幸感
充実した恋愛をしている人は多幸感の持ち主になれます。
普段の何気ない日常の物事が輝いて見える。
幸せを感じているとき、その人の瞳孔は大きく見開かれてたくさんの光を吸収します。
瞳孔に集められた光が乱反射して視界と周囲の世界を明るくさせるのです。
経験から生まれた言葉たち
連なつてゐる輝きが
まやかしであらうとも僕に恐れなどはないです。
出典: ポルターガイスト/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
この描写は充実した恋愛を経験してきた人にしか書けません。
椎名林檎はこの作品の制作の前に妊娠・出産を経験しています。
その前には燃えるような恋愛があったことでしょう。
「ポルターガイスト」の歌詞は彼女の想像力によるものですが、細部の描写は現実の体験の裏付けがあります。
解釈が一転する展開
予め決まっていたクライマックス
君はひと足先に微笑むで、幻視を與(あた)へました。
「こんな僕に!」徐(やを)ら、見境も無く慾しくなるまぼろしは孰(いづ)れ衰へても
僕には美しく見えます。君だけに是を唄ひます。
出典: ポルターガイスト/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
クライマックスの歌詞です。
椎名林檎は「ポルターガイスト」の歌詞を書くにあたって、最初と終わりだけが決まっていたそうです。
ここで使われるワード「幻視」こそが、この曲を「ポルターガイスト」と銘打った理由になります。
「幻視」という言葉があるからアルバム2曲目の「ドッペルゲンガー」と対をなすと考えたのです。
「ポルターガイスト」への固執
ポルターガイスト現象は名作映画「悪魔のいけにえ」の監督・トビー・フーパーによる傑作映画で有名。
映画「ポルターガイスト」はホラー映画でありながら美麗な映像を駆使して観客の支持を得ました。
「騒霊」という日本語が与えられるように、ポルターガイスト現象は様々な音がする怪異現象です。
椎名林檎の「ポルターガイスト」は美しいワルツ。
しかし小田急線の踏切の音をサンプリングするなど、様々な工夫を凝らして「騒霊」のイメージを煽ります。
一体何故、椎名林檎は「ポルターガイスト」というタイトルや雰囲気作りに固執したのでしょうか?