自己犠牲で守れるものとは
破壊を続けてきた過去と破壊を続ける現実は変わりません。
変えたければ、破壊の原因を取り去るしかないのでしょうか。
何も守れなかった後悔
いつか君と見ていたこの景色は
誰にも渡さないと誓ったのに
壊し続けた僕は何かを救えた?
変わり果てた今に革命のナイフ
出典: katharsis/作詞:TK 作曲:TK
大切な誰かと平和な日々を送っていた過去があるようです。
何も起こらない穏やかな世界を「誰にも渡さない」、つまりは世界を守ると決意していました。
それは大げさな意味ではなく、子どもが母を慕うような小さな規模だったかもしれません。
「大好きなお母さんが幸せでいられるように、お母さんを守るんだ」という小さな誓い。
しかし彼には、守るどころか壊す道しかありませんでした。
喰種となり、世の中を混乱に陥れる一人となった金木研の姿を想像してしまいますね。
彼は破壊の限りを尽くしたわけではないのでしょう。自分自身の破壊衝動を抑える努力もしたはずです。
ですが、長い目で見た世界の移り変わりの中で、彼がしたことは破壊だけ。
結局誰一人守ることも救うこともできなかったのです。
いつか目の前に広がっていた穏やかで明るい世界は、今や暗闇のようなもの。
そこに彼はナイフを突き立てました。
暗闇の世界を自分の意志で変えてみせると決意をしたのでしょう。
罪を消すための決意
囁くように刺して光に満ちたさよならを
出典: katharsis/作詞:TK 作曲:TK
罪に満ちた現実に刃を突き立てます。
賛同者は必要なく、誰かに認めてもらう必要も褒めてもらう必要もない。
だから静かに音を立てずに、ナイフを刺しました。
その裂け目からは、暗闇を照らす光が差し込んできたのでしょう。
光に照らされた彼は「さよなら」を告げます。
この光景から想像するのは、自分を犠牲にして平和な世界を取り戻すこと。
つまり彼は、命を捨てる决意をしたのではないでしょうか。
I will miss you 罪はいつか滅びる?
僕のせいで壊れたものだけが映る溢れる叶わない妄想
出典: katharsis/作詞:TK 作曲:TK
英詞部分を訳すと「寂しくなるよ」となります。別れ際によく使われる英文です。
自分が死ねば=滅びれば、自分の罪も消えていくのだろうかと「君」に問いかけます。
君と別れるのは寂しいけれど、これで過ちが消えるのであれば仕方がないと思っているのでしょう。
しかし、本当に消えるかどうかは分からないのです。
今もなお、待ち望んでいる奇跡は起きていません。
奇跡は起きないのだと知らしめるように、彼が犯した罪や傷つけた人たちが脳裏に浮かびます。
未来は今を「修復」できる
これから先も、彼が破壊を続けると決まっているわけではありません。
それでも彼は、自分を未来から遠ざけようとします。
希望を捨てないで……
例えば目が覚めて「すべては真実だ」って
悲劇的なサイレンを鳴らさないで
世界の傷跡に未来を降らして欲しいんだ
出典: katharsis/作詞:TK 作曲:TK
現実世界が罪にまみれたものであることは、変えられない真実として受け入れています。
だからといって、世界の全ての人にそれを伝える必要はないのです。
もうどこにも希望がないなんて思わせてはならないのです。
変えられない現実を声高に叫ぶよりも、未来を降らせて欲しいと願っている彼。
これはどういう意味なのでしょうか。
彼が破壊してきた世界には、今もまだ沢山の傷跡が残っています。
その傷を「現実」で穴埋めしたところで、何も変わりません。現実は変えられません。また壊れるかもしれません。
だったらその傷を「未来」で修復してみたらどうでしょうか。
未来はまだ不確定で、これからいくらでも変えていけるものです。
現実世界を少しずつ「未来」へと塗り替えて欲しいと願っているのです。
罪人は生きていてはならないのか
ほどけるように刺して光に満ちたさよならを
I will miss you 罰を僕に与えよ
出典: katharsis/作詞:TK 作曲:TK
世界を光に満ちたものに変えるため、自分を犠牲にした彼。
光りに包まれながら別れを告げ、大切な人に「寂しくなるよ」と言い残します。
別れなければならないことも、寂しくなることも、本当は辛いのでしょう。
できることなら、これからも「君」とともに生きていたいのです。
しかし罪を犯した彼は罰を受けなければなりません。
罪まみれの現実においても多くの人々を愛していた彼にとって、別れこそが最大の罰だと言えます。