TVアニメ「pet」とは
「蝶の飛ぶ水槽」はTVアニメ「pet」のために書き下ろされた楽曲です。
三宅乱丈原作の「ペット リマスター・エディション」を原作として2020年1月から3月まで放送されました。
この物語は記憶がキーワードとなっています。
他人の脳内に入り込み、記憶を書き換えられる特殊能力を持った青年たちの物語。
書き換えるだけでなく、相手の重要な記憶を壊すことで人格を崩壊させ廃人にすることも可能です。
本楽曲は原作を読んでから作られたため、物語の世界観を構成する単語が随所に散りばめられていました。
では、原作の意味も含めて歌詞を見ていきましょう。
肉体よりも大切なもの
大切なものを奪われる不安
曲の冒頭はコポコポというサウンドで始まりました。
これは水の中に沈んでいくさまを表しています。
ゆっくりと深く、水中に落ちていく様子が目に浮かぶようですね。
それと同時に、少しくぐもったような音質で歌い出しました。
これも水の中で歌っているかのような演出となっています。
奪わないで僕のイメージを
声も身体もくれてやるから くれてやるさ
出典: 蝶の飛ぶ水槽/作詞:TK 作曲:TK
イメージとはTVアニメ「pet」の中でも登場した単語です。
作中では下記のような意味を持っていました。
記憶操作能力者がその能力を使用する際に用いる疑似記憶。個人によって疑似記憶の形は異なる。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ペット_(漫画)
このように、他人の記憶を操作する際に用いるものを意味しています。
これを失ってしまっては記憶を操作することができません。
他人の記憶を操作する能力の根源といえます。
同時に、記憶を操作できる能力者同士のみが持っている力なので、能力者同士の繋がりともいえるでしょう。
つまり「僕」は肉体がどうなっても構わないが、能力者同士の繋がりは失いたくないと思っているのです。
抱き締めても この記憶を顔のない誰かが奪いにくる
出典: 蝶の飛ぶ水槽/作詞:TK 作曲:TK
この歌詞は大切な記憶を奪取されることを、何よりも恐れている様子を表しています。
大切に抱え込んでいたとしても、能力者の前では無意味だとわかっているのでしょう。
能力者同士の繋がりや記憶が「僕」にとっては肉体よりよほど大切であることが見て取れます。
偽の記憶に溺れているのは誰?
夢の中で見た夢を覚えてる
どれが真実? 息ができないの 偽憶で
出典: 蝶の飛ぶ水槽/作詞:TK 作曲:TK
ここから急に音質がクリアになりました。
また、先ほどまでのような記憶を奪われてしまうという焦燥感は感じられません。
むしろ、「偽憶」のせいで何が本当なのかわからなくなって困惑している様子が見て取れます。
ここでいう「偽憶」とは造語ですが、字面からわかる通り偽の記憶を意味しているのでしょう。
つまり改ざんされた記憶に溺れて、真実を見失っているのです。
先ほどまで記憶を奪われると警戒していた人とは、人物像が少し離れていると思いませんか。
では、一体誰の記憶が書き換えられてしまったのでしょうか。
「僕」もしくはそれ以外の誰なのか、その答えは後ほど判明します。
「僕」を構成するもの
「あなた」との思い出
意識が溢れ出して あなたの笑顔も溶け出した
嫌だ 光と影の軌跡も血だらけの傷も僕なんだ
出典: 蝶の飛ぶ水槽/作詞:TK 作曲:TK