石原裕次郎【赤いハンカチ】歌詞解説！「赤いハンカチ」が表現しているものは？切ない恋物語を読み解こう

変わりゆく季節。

並んでぼんやりと空を眺める二人。

一緒にいても、見ている景色は違うものなのかもしれません。

北国の春。

それは雪解けの季節で、辛くて暗い冬からの解放の時期です。

恋人同士である二人は、いろんな季節を二人で乗り切ってきたことでしょう。

そうしてようやく巡って来た束の間の春。

春はやがて終わりを告げ次の季節に移行します。

二人の春も、その幸せを持続することなく、次のシーズンに向かうようです。

終わりゆく季節と、二人の幸せを遠くに流れる雲に重ねる恋人たち。

風の流れに身を任せる雲の姿、それはまるで運命に翻弄される自分たちの姿のように見えたのかもしれません。

人生の中には、どうあがいてもどうにもならないことがあります。

その一方で、なんとか出来たかもしれないけれど、あえてしなかったということも。

この歌の主人公たちの関係は、後者であったようです。

順調に、現在の状態を維持したままで関係を続けることはできなかった。

しかし、もし様々なことを諦め、捨て去りこの恋に掛けたなら、今すぐにこの恋を手離す必要はなかったかもしれない。

そんな恋であるようです。

全てをかなぐり捨てて恋に向かう、というのは場合によっては不幸の始まりです。

ときに、全てを捨てて手に入れた恋があっという間に消えてしまうことだってあります。

それ故に、相手を愛しているから、そんな修羅場に引きずりこまない。

そういう愛もあります。

全てを捨ててでも恋に掛けたい女性。

全てを捨てさせたくない男性。

その想いの深さはどちらも同じなのかもしれません。

何度か季節が廻り、また今年もアカシアの花が散ります。

大人になった主人公は、彼女の残した影を胸にどんなことを思うのでしょうか。

アカシヤの花はいくつかの花言葉があります。

「秘密の恋」「優雅」など。

アカシヤの花が散ってしまった、ということは秘密の恋が消えてしまったと読むことができます。

また、優雅で美しかった恋人を失ってしまったという風にもとらえられるでしょう。

主人公にとって、赤いハンカチやアカシヤは彼女を思い出させるアイテム。

それらをふと目にするたびに彼女のことをふと思いだします。

アカシヤの花は、華やかで鮮やかな花。

そこにあるだけで人目を惹きつけ場が明るくなるような花です。

主人公にとって、彼女の存在そしてあのときの恋はまさにアカシヤの花。

人生の一部分でまぶしく咲き誇っている思い出なのではないでしょうか。

タイトル、そして歌詞の中にも登場する「赤いハンカチ」。

それは何を意味しているのでしょうか。

「赤」という色は情熱や、暖かさ、愛などを表すのに使われることがあります。

主人公とその恋人の女性との間にあった、温かな思いや愛。

その一方で危険であることを表すのにも使用されるのが「赤」という色です。

二人の間で燃え上がった赤い炎は、このまま燃え続けると危険なものに変化する可能性もあった。

そんな風にも読み取れます。

男と女が結び付くということは「好き」という気持ちだけでは越えられないこともあります。

バックボーンの違いや、生きる世界の違いがやがては別離の原因となることもあるのです。

燃え上がる恋の赤い炎が、やがては二人の人生までを焼き尽くしてしまう。

そうなる前に消火し、思い出に変えよう。

そんな青春の切ない象徴が「赤い」色に表れているのかもしれません。

誰かのことを思い出すとき、ある場面や物とセットで思い出されることがあります。

海岸の景色を目にするとふとあの人のことを思い出す。

グレーのジャケットを見ると振り返ってしまう、など。

この歌の主人公にとって、赤いハンカチは彼女の思い出そのものでしょう。

別れのあの日に、彼女の目元を行き来していた赤い影。

それは、季節を繰り返した今も切ない思い出として胸に蘇ります。

別れたことは後悔していなくても、別れの場面が忘れらない。

人間は深く心が動いた出来事をいつまでも忘れることができないようです。