歌の誕生
ムードのある曲に、しっとりとした歌詞がのり、さらに石原裕次郎の歌が光る「赤いハンカチ」。
意味深なタイトルに、想像がかきたてられます。
今回は、そんな「赤いハンカチ」について歌詞の内容を深読みしていきましょう。
歌から映画へ
曲「赤いハンカチ」は1962年に発表されています。
そしてその二年後、1964年にこの曲をテーマにした映画が作られました。
映画は、曲と同じタイトルがつけられ、「赤いハンカチ」を歌った石原裕次郎が主演しています。
日活ムードアクションと呼ばれたジャンルのこの映画。
出演者には、浅丘ルリ子、二谷英明といった当時の売れっ子が名を連ねています。
映画俳優として、歌手として2つのスターの顔を併せ持った石原裕次郎。
「赤いハンカチ」は曲、映画とも大ヒットをしています。
悲しみを拭って
アカシヤの 花の下で
あの娘が窃っと 瞼を拭いた
赤いハンカチよ
怨みに濡れた 目がしらに
それでも泪は こぼれて落ちた
出典: 赤いハンカチ/作詞:萩原四朗 作曲:上原賢六
この歌のタイトルである「赤いハンカチ」。
ここで描かれる人物は、そのハンカチで何を拭き取ろうとしているのでしょうか。
目がしらを押さえて
「泣く」「涙を流す」という行為には色んなタイプのものがあります。
子どものように声を上げて泣く。
ぼろぼろと玉のような涙で頬を濡らす。
また、一筋の水滴のように細くこぼれるような涙もあるでしょう。
この歌で歌われる人物は、今まさに流れ出そうとしている涙を押しとどめるようにハンカチで拭いています。
こらえきれずに、湧き出るように体から噴出される涙。
そして、それを制するようにハンカチで抑えるのです。
悲しさと悔しさ、そして辛さが入り混じって涙が自然と出てきてしまいます。
でも、その涙を目の前の人に見られたくない。
そんな人物の思いが見えるようです。
二人のいる場所は
この歌に描かれる二人は恋人同士のようです。
それも今から別れようとしている恋人同士。
アカシヤの花が咲いている場所ですからきっと屋外のどこかでしょう。
公園又は、学校や何かの施設の庭かもしれません。
人が集うにぎやかな場所のすぐ近くで、二人きりになれるエアポケットのような場所。
そんなところで二人は話し合いをしているのでしょうか。
赤いハンカチで目元を押さえる彼女が泣いている理由、それは、何かへの「怨み」。
怨みとは穏やかではありません。
彼女は相手から苦しい思いを強いられたと思い、そしてそれが怨みとなっています。
言葉の意味
怨むということ
幽霊が出現するときの決まり文句と言えば「怨めしや~」。
そこからもわかるように、怨むというのは非常に強い相手への憎しみの感情です。
相手から受けた行為をひどい仕打ちだと認識した場合などに生まれる感情でしょう。
この曲の彼女は、主人公の男性からひどいことをされたと強く思っています。
そして、その想いから涙が溢れそれを止めようとハンカチで抑えている。
二人の別れが、単に、すれ違いから発生するそれではないことを表しているようです。
怨みとまでいう別れの原因は何なのでしょうか。
将来に関する約束を破られた。
不貞行為があった。
何かしら大切なことを秘密にされていた。
そんなところでしょうか。
彼女にとっては重大な何かが主人公の男性によって裏切られたのかもしれません。
それが怨みとなって、止めようのない涙を生んでいるようです。