「愛はおしゃれじゃない」はタイトルから想像できるように、ラブソングです。
しかも、とても一途でまっすぐな想いを描いた曲になっています。
冒頭のフレーズから、キラーワードが出てきますからね。つかみが大事です。
主人公の年齢はいくつくらいでしょうか。
中学生、高校生だとちょっと下すぎる気がします。
20歳前後、せいぜい20代前半くらいではないでしょうか。
もちろん、聞いた人が自由に想像してくれればいいと思います。
恋愛がしたい、恋人がほしいと思う人は今の若い人には減ってきているという話も聞きますが。
この主人公は、モテたいのです。
しかし、誰でもいいわけではありません。
興味があるのはただ一人、「君」なのです。
「君」にさえモテれば僕はそれだけでいいんだ!という一途な気持ち。
「モテたいぜ君にだけに」という1フレーズだけでそれを理解させてしまう完璧な歌詞だと思います。
主人公の妄想は止まりません。
「君」のくちびるに僕のくちびるをつけてみたい。
なんて甘酸っぱい妄想でしょうか。
こんな気持ちで盛り上がっている主人公は、おそらくですがまだキスをしたことがないのだと思います。
いやいや、今の時代キスくらいとっくに済ませてるでしょ?って?
そんなことは無いのです。
少なくとも岡村ちゃんの曲の中においては。
岡村ちゃんの曲はどぎついくらいにセクシーでエッチな歌詞の曲もあります。
その反面、非常に純粋でストレートな、女の子の手に触れたこともない奥手な男の子が主人公の曲もあるのです。
「愛はおしゃれじゃない」は確実に後者だと思います。
続きを見ていきましょう。
想いを伝えられない
カーテン開くようにスカートを脱がしたい
好きな食べ物と特技は「君」と書きたい
見たことない絵を描いてもらいたい
季節とは君のために用意された絵の具なのさ
春色 夏色 秋冬 君色々
でも本当は電話も出来ない 一人による夜、夜
出典: 愛はおしゃれじゃない/作詞:小出祐介 作曲:岡村靖幸
これも、童貞くさい主人公の妄想が爆発している箇所だと思います。
主人公のエッチな妄想がどんどん暴走していくのです。
まともに話したこともない女の子に対して「スカートを脱がしたい」ってこれ、相当ヤバいでしょう。
頭の中で考えているだけならまだしも、一歩間違えると犯罪です。
好きな食べ物が「君」っていうのもちょっとイッてますね。
食べ物じゃないですからね、女の子は。
そして君がいかにカラフルなのか、ということが歌われます。
この曲をコラボして制作するときにイメージしたのは架空の化粧品のCMソングだそうです。
この部分の歌詞にはその名残があるような気がします。
でもこの主人公ヤバいなと思いながらも、どこかかわいいと思えてしまうところもありませんか?
頭の中では君のことをメチャクチャにしたい、と思っていても実際は何も行動に起こせないチキンハートなのです。
電話もできない、話しかけることもできない。
結局は夜一人で妄想を爆発させることしかできないのです。
そのくせ、常に君のことを考えていて君のことは何でも知っている。
僕の特技は君なんだ!と言うのです。
ヤバいけども放っておけない、何とかしてやりたいと思わせる童貞君です、こいつは。
岡村ちゃんの曲に出てくる主人公はこういう童貞君が多いです。
そしてそれは岡村ちゃんを聞いている男性ファンにとっては、かつての自分なのです。
鬱屈した思いを抱えて「自分はおかしいんじゃないか?」と思っていたあの頃。
岡村ちゃんはそんな思いを全て「みんな同じだ!大丈夫!」と救ってくれた救世主なのです。
しかし繰り返すように、この曲の作詞は岡村ちゃん本人ではなく小出祐介です。
1984年生まれの彼は80年代後半の岡村ちゃんをリアルタイムで聞いていた世代ではないでしょう。
にもかかわらず、ここまで岡村ちゃんの世界を表現しているのはすごいとしか言いようがありません。
本当の愛とは何か?
格好つけても意味がない!
モテたいぜ君にだけに いつもそればかり考えて
モテたいぜ君にだけに
正直に告げてみたい 僕のこのふるえる想い
正直に告げてみたい
愛はおしゃれじゃない
出典: 愛はおしゃれじゃない/作詞:小出祐介 作曲:岡村靖幸
主人公は相変わらず妄想を抱えながら、君だけにモテたいとそればかり考えています。
電話もできない、話しかけられない。
でもこの想いを正直に打ち明けたい。
その気持ちは常に切実なのです。
スマートに格好良くなんて考えていません。
不格好でも、ダサくてもいいのです。
なぜなら、「愛はおしゃれじゃない」からです!!
愛はコレクションやファッションじゃない!
マスカラつけたなら僕も 君のように泣けるのだろうか
君と同じ口紅つけたなら そのくちびるが何味かわかるのかな
そんな風にさ 愛ってやつは コレクションじゃない
ましてや ファッションじゃないでしょ?
愛ってやつは 切実でさ 伝えたいのは
「あのさ・・・あのそのつまり・・・」
出典: 愛はおしゃれじゃない/作詞:小出祐介 作曲:岡村靖幸
主人公の想いはさらに暴走します。
君と同じマスカラをつけたら、口紅をつけたら…。
僕も君のようになれるのかな?と妄想は膨らんでいきます。
恋愛の対象と自分を同一化しようとする思考は古今東西いろいろな作品でも描かれています。
愛する人を自分の中に取り込んでしまいたい。
一体化してしまえば常に一緒にいられる、という考えです。
常軌を逸してはいますが、ある意味混じり気のない純粋な愛情ともいえるでしょう。
そう、それが本当の愛なのです。
ファッションではないのです。
ファッションというのはつまり、流行りすたりで移り変わるもの。
自分をよく見せるために着飾るもの。
愛ってやつは、愛する人というのはそんなことのためにあるのではない!
自分のとって切実な存在なんだ!と訴えかけています。
でもその想いを口にしようとすると「あのそのつまり…」と口ごもってしまう。
ああもどかしい!でも、このもどかしさこそが岡村ちゃんの世界。青春なのです。
愛はおしゃれじゃない
純粋な想い、それが岡村ちゃん
モテたいぜ君にだけに いつもそればかり考えて
モテたいぜ君にだけに
どしゃ降りの雨の日も 飛ばされちゃいそうな風の日も
髪型どころじゃない 君に会いに行きたい
愛はおしゃれじゃない
出典: 愛はおしゃれじゃない/作詞:小出祐介 作曲:岡村靖幸
印象的な冒頭のフレーズとサビがリピートされます。
どしゃ降りの雨や強い風の時でも、髪形を気にしているヒマはないのです。
なぜなら、「愛はおしゃれじゃない」から。
髪形を気にするよりも、君に会いに行くことの方が大事なのです。
この部分は「じゃない」「行きたい」「じゃない」と韻を踏んでいるのもすばらしい。
韻を踏んで畳みかけてきて、最後に「愛はおしゃれじゃない」と来るのです。
この曲は一番言いたいこと、曲のテーマそのものがタイトルになっているのもいいと思いますね。