私はプリマ
純情少女と勘違いされて 全校男子に狙われた
あぁ 初体験 世にも恐ろし 大出血乗り越え 恥ずべきものはなし
朱いりぼん ヒラヒラさせて バイバイ プリマの放課後だ
あぁ 青春さん 汗と涙でベタベタになってなんか大変そうですね
ゆらりゆれるジャンパースカート ひっそり覗くスラックス
目と目を合わせて 戸惑うフリした 校内男女の関係
出典: バレリーコ/作詞:みきとP 作曲:みきとP
純情少女と「勘違い」。ということは、主人公の彼女は、ぱっと見では純情そうなんですが、本当はそうではないようです。
そう、彼女は大人の世界にも興味津々なんです。しかも全校男子に狙われるなんて、相当な美少女だったみたい。
そんなわけで初体験も済まてしまった彼女。「誰に捧げるか」なんて、もう考える必要がなくなりました。
下校時、廊下を歩くだけでも視線を集めたんでしょうね。「プリマ=バレエダンサーの最高位」ですから。
きっと純情な告白も受けたことでしょう。でも彼女はそんな青春らしいワンシーンも「汗と涙でベタベタになってなんか大変そうですね」。
まして「目と目を合わせて戸惑うフリ」。あくまで校内では純情なキャラを「演じているだけ」の彼女。
それでも、一見純情な美少女なら男子生徒は寄ってくるでしょうから…そんな男たちを滑稽だと思っていたかもしれませんね。
そもそも青春なんてあんまり興味ないわ、といった様子です。
ねぇ ディン・ディン・ダン♪ さあ 踊りましょう
じょうずに飛び跳ねて エッサホイサ
劣等感 ほら恥ずかしい それも人生だ
ねぇ ディン・ディン・ダン♪ さあ 踊りましょう
もっともっと激しく エッサホイサ
絶頂感 ほら最後まで 面倒みてあげる
うわばきで シャル・ウィ・ダンス
出典: バレリーコ/作詞:みきとP 作曲:みきとP
この楽曲はバレエ世界観を重ね合わせて描かれていますから、「踊る」「飛び跳ねる」というのも、何かのたとえとして捉えることができそうです。
主人公は校内・校外で二面性のあるプリマ。彼女にとって「踊る」というのは、校内で純情少女を「演じる」ことではないでしょうか。
学校生活を、躍動感をもって演じ切る姿…と解釈することもできそうです。
しかしプリマとはいえ、何らかのコンプレックスを抱きがちなのが人間。外見的なものから、内面的なものまで。
そんな「劣等感」も、10代にはつきものと言えますが、彼女は「恥ずかしい それも人生」と割り切った風。
むしろ周りからはそんな振る舞いが「堂々としている」と見えたかもしれません。
そうして注目を集めていることに対して、彼女は「絶頂感」。最後まで面倒みてあげる=演じ切ってあげる、と、まさにプリマの振る舞いですね。
先輩は王子様
先輩どうしてあの子がいんの 私の方がよい子でしょ
あぁ 奇々怪々 邪魔する猫は しっしっしっ 今すぐ踵(きびす)を返しなさい
ふわり香るリップクリーム じっとり濡れたセミロング
教師の言葉も ひぐらしの声も 聞こえない 男女の関係
出典: バレリーコ/作詞:みきとP 作曲:みきとP
彼女は先輩と付き合っているんでしょうね。
先輩のそばにいた女の子に対して「私の方がよい子でしょ」「踵を返しなさい」なんて自信満々。
「あなたじゃ先輩は落とせないわよ」とでも言いそうな感じすらします。
学生ですから、校則上「不純異性交遊は禁止」なんて言われている(教師の言葉)んでしょうが、そんなのまるで聞こえない。
鳴いているひぐらしの声すら聞こえないくらい、先輩に対しては夢中なんです。
MVでは朱いりぼんと青いりぼんがここで交差します。
リップクリームがふわりと香って、髪が濡れて感じるほど上気して。キスシーンの表現だとしたら、とても文学的ですね。
ねぇ ディン・ディン・ダン♪ さあ 踊りましょう
じょうずに飛び跳ねて エッサホイサ
劣等感 ほら恥ずかしい それも人生だ
ねぇ 後悔はどこにあるの 九回転のピルエット
トゥシューズぬいだ素足の 歪(いびつ)な叫び
「…もう限界だ」
もう限界だ
出典: バレリーコ/作詞:みきとP 作曲:みきとP
サビをリピートしてから、歌詞が新しく展開します。
「ねぇ 後悔はどこにあるの」というフレーズは「できることなら後悔したい」という気持ちの表れのように感じられます。
ピルエットとは、片足のつま先で立ったまま回転するステップのこと。
筆者はバレエには詳しくないのですが、九回転よりももっとたくさん回ることもできるんだそう。
九回転なのはなぜでしょうね。急回転をかけた言葉遊びでしょうか?何か事件があったようです。
「トゥシューズぬいだ素足」とは、演じているんじゃない、素の自分を指す言葉でしょう。
「『…もう限界だ』」と、カギカッコ付きで書かれているのは先輩の言葉かもしれませんね。MVではこの直後に一瞬「暗転」と表示されます。
先輩に「もう限界」と振られてしまった彼女。きっと目の前が暗くなる思いだったでしょう。
何せ彼女はプリマ、全校男子が狙うほどの存在だったわけですから、振られるなんて思わなかった。
でも、振られてしまった。もう演じる余裕すらもなくて、彼女もまさに「もう限界だ」になってしまったのではないでしょうか。
ねぇ 先輩どうして泣いてるの?
一緒に アン・ドゥ・トロワして
マスカーレイド? どちらにするの?
オデット? オディール?
出典: バレリーコ/作詞:みきとP 作曲:みきとP
別れ話を切り出して、先輩は泣いてしまいました。
「一緒に アン・ドゥ・トロワして」つまり踊りましょう、と誘う彼女。
事件は起こってしまったけれど、その上でまだ、彼氏と彼女を演じればいいわ、と誘うんです。
マスカーレイドとは仮面舞踏会のこと。仮面を被って踊る、まさにこの状況を指しています。
オデットとは「白鳥の湖」の白鳥、オディールは黒鳥です。
ついでに言えば、「白鳥の湖」にはオデットとオディールが恋する王子が登場します。先輩は王子様なんです。
彼女が演じてきた人格と、素の人格、どちらがいい?私はどっちでもいいから、先輩、選んで?と言っているんでしょう。
「彼女ノピルエットハ黒鳥(オディール)サエモ止メラレナヰ。」
…意味深。
彼女は秘めてきた本音を、演じてきた仮面も脱ぎ捨てて爆発させてしまったんでしょうか。
プリマは完璧に踊る
ねぇ ディン・ディン・ダン♪ さあ 踊りましょう
じょうずに飛び跳ねて エッサホイサ
劣等感 ほら恥ずかしい それも人生だ
ねぇ グッバイ 最後に踊りましょう
もっともっと激しく エッサホイサ
絶頂感 今 この瞬間 すべて完璧だ
うわばきで シャル・ウィ・ダンス
出典: バレリーコ/作詞:みきとP 作曲:みきとP
「ねぇ グッバイ」のところで、MVでは再び歌詞にないフレーズ。
「イツカ夢見タ パ・ド・ドゥハ 放課後ノ目合ヒヘト摺リ替ッテシマッタ」
パ・ド・ドゥは男女二人で展開する踊りのこと。彼女と先輩は別れてしまうことを指していますね。
そして「最後に踊りましょう」。彼女は最後に再び演じることを決めました。
もしかすると、別れの間際で少しでもいい女を演じたのかもしれません。
心に大きな傷を負いながらも、自分で決めた役柄を演じ切った彼女にはプリマとして大きな達成感があったのでしょう。
「今 この瞬間 すべて完璧だ」というフレーズ、みきとPは映画「ブラック・スワン」からの引用と言っています。
この映画でも、バレエに憑りつかれた主人公はラストシーン、錯乱して自ら刺し傷を負うも、完璧にオデットを演じ切り万雷の拍手を浴びます。
冒頭では青春なんて、と冷めた風だった彼女でしたが、最後には先輩の前で精一杯のいい女を演じるなんて、それもひとつの青春の形なのかも知れませんね。
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