これから歌詞を見ていきますが、「君は薔薇より美しい」の歌詞を鑑賞するためのポイントを、先に2点挙げておきます。
一つは、2番の歌詞が素晴らしいので、2番もしっかり鑑賞すること。
もう一つは、このキーフレーズについてです。
薔薇より美しい
ああ 君は変った
出典: 君は薔薇より美しい/作詞:門谷憲二 作曲:ミッキー吉野
「変わった」とあるとおり、この歌詞のテーマは「変化」です。
変化の前後を対比した表現がたくさん出てきますので、その点に着目して鑑賞してみましょう。
久しぶりの君との出会い
とても親しい、おそらくは元恋人なのではないかと思うのですが、その女性に久しぶりに出会うシーンから始まります。
これが、とてもさわやかに描かれているんです。
息をきらし胸をおさえて
久しぶりねと君が笑う
ばかだね そんなに急ぐなんて
うっすら汗までかいて
出典: 君は薔薇より美しい/作詞:門谷憲二 作曲:ミッキー吉野
これは、久しぶりの出会いなので「今」の彼女の様子です。
偶然、街なかで私を見つけた彼女が走って追いかけてきたといったところでしょう。
「ばかだね」という言葉に親しさが見え隠れしていますが、「君」は息を切らしながらも笑っています。
とても朗らかな女性という印象を持つのではないでしょうか。
さて、「今」で始まったこの歌ですが、「過去」はどのようなものだったのでしょうか?
君のまとう「かげり」
明るい感じの「君」が登場しましたが、続くフレーズでは過去の「君」が見えてきます。
なぜか今日は君が欲しいよ
違う女と逢ったみたいだ
体にまとったかげりを脱ぎすて
かすかに色づく口唇
出典: 君は薔薇より美しい/作詞:門谷憲二 作曲:ミッキー吉野
ここで「君が欲しい」の前に「なぜか今日は」と付くのは、少し古い表現にも思えます。
しかし、今日の「君」は私が知っている過去の「君」とは別人のようだとのことです。
その違いは「体にまとったかげりを脱ぎすて」のところでわかります。
かつては「かげり」のある女性だったようです。
少し地味で大人しい感じだった女性が、明るく「息を切らして」笑いかけてくる。
私はそこに「変化」を感じています。
そして、唇は「かすかに色づ」いている。
「かすかに」なのです。この変化は私にしか分からない変化なのかもしれません。
なにしろ、歌詞は次のように続きます。
目にみえない翼ひろげて
確かに君は変った
出典: 君は薔薇より美しい/作詞:門谷憲二 作曲:ミッキー吉野
「目にみえない翼」と表現されていますが、私には見えているんです。
「確かに」、つまり、私は「君」の変化に確信を持っています。しかし、気づいているのは私だけ。
独占欲というと少し違うかもしれませんが、この変化について、いよいよ次のように締めます。
薔薇より美しい
歩くほどに踊るほどに
ふざけながら じらしながら
薔薇より美しい
ああ 君は変った
出典: 君は薔薇より美しい/作詞:門谷憲二 作曲:ミッキー吉野
ここのポイントは「ふざけながら じらしながら」でしょうか。
過去の「君」は大人しい感じの女性ですから、ふざけたり、じらしたりなどするはずはないでしょう。
そんな「君」を見ながら私はこう思うのです。
薔薇より美しい
感嘆というより、歌としては高らかに歌い上げますので、喜びの気持ちなのでしょう。
この「君は変わった」の部分こそ、この楽曲一番の聴かせどころです。
布施明の声量あるハイトーンを聴かせるための最高のフレーズですよね。